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闇営業問題を取材してきた沖田臥竜が語る、反社とメディアの関係「金銭授受はありえない」

文=沖田臥竜/作家
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騒動の発端となった動画

 世間を賑わせた闇営業問題について、独自のものまで合わせると、筆者は約2カ月間取材していたことになる。そのため、この問題について、さまざまな角度からの情報を持っていた。そうした経緯でメディアからの出演依頼も多くあり、好む好まないは別として、多い時にはテレビのインタビューを1日3回も受けている。

 過熱する報道に対して、世論は反社会的勢力に対する闇営業を絶対悪と定義し、そうした場に参加していた芸人たちは次々と謹慎処分などを受けることになった。ただ、こうした問題は、過熱すればするほど異論も生まれてくるものである。そのなかの一部に、こうした声があった。

「今回、反社会的勢力が動画や写真などを使ってまずは芸能事務所を脅し、事務所側がそれに応じなかったため、次は週刊誌が買い取り、報じたのではないか。確かに、知らないとはいえ、闇営業に参加した芸人も悪いが、反社から持ち込まれた動画や写真を買い取るメディアも問題ではないか」

 だが、筆者にいわせれば、論じるまでもない争点だ。なぜならば、そういう指摘自体が事実無根、または杞憂だからである。考えてみてほしい。現在、国家権力は反社会的勢力に対する厳罰化をこれまでにないほど徹底的に強化させている。神戸山口組の井上邦雄組長など、他人名義の携帯電話を使っただけで、詐欺容疑で逮捕されてしまう時代だ。

 そうしたなかで、その筋の人間が、スキャンダルのネタになる闇営業の動画や写真を芸能事務所へ持ち込み、なんらかの交渉をしようと思えば、すぐに警察に通報され、恐喝などで逮捕された挙句、スキャンダルごと呆気なく潰されてしまうだろう。メディア側も金銭のやりとりについてはセンシティブだ。

「現役のヤクザや、ときには大事件を起こして逮捕されている組員などに取材するケースはあります。ですが、その際に金銭を支払うことはありません。それはもちろん取材対象者にも最初に伝えます。そんなのは当たり前ですよ」(週刊誌記者)

 例外がないとは断言できない。だが、実際、世間で考えているように、動画や写真などが簡単に金に変わることはない。メディア側にしても、例えスクープになる可能性があったにしろ、それが本物かどうかもわからないということもある。ましてや一度、反社会的勢力から持ち込まれものを買い取ってしまえば、今後はそれをネタに逆につけ込まれる可能性だってあるのだ。厳しいコンプライアンスが求められる時代、メディア側も自ら爆弾を背負い込むようなことはしないはずだ。

動画提供者と週刊誌との間に金銭のやり取りなどは存在しない

 特に今回、最初に世間を騒がせた、雨上がり決死隊の宮迫博之らの闇営業の動画について、筆者はその入手経路をすべて知っているが、動画提供者と週刊誌との間に金銭のやり取りは存在しない。そもそも、反社会的勢力側からのリークでもなかったのだ。

 結果論となるが、吉本興業サイドが週刊誌への対応をもう少し丁寧にしていれば、この問題は闇に封じ込められたままだった可能性もあった。週刊誌側も苦労して入手したネタというわけでもなく、また画像も粗く誌面映えしないという理由などから、当初はそれほど積極的に報じようとはしていなかったようだ。もちろん、吉本興業とメディア側との“裏交渉”で、本来は報じられるべきニュースがもみ消されることはあってはならない。だが、現実にはそうしたケースが珍しくないことは、この業界の足を突っ込んでいれば誰もが知っていることだ。

 ただ吉本興業サイドとしても、週刊誌側にしても、ここまで闇営業問題が過熱し、いわば社会現象にまで発展するとは想像していなかったのではないか。筆者自身の感想でいえば、宮迫らの謹慎までは、彼が報酬の受け取りを否定していた当初からあり得るだろうという考えがあった。金銭問題だけではなく、自身が出演する番組に招待するなどと公言したことが、公共の電波を預かるタレントの倫理として大きな問題があるという印象を与えたからだ。

 だからといって、この問題すべてが吉本興業にとって不利益になったかといえば、決してそうではないと思う。闇営業問題が世間を騒がせたことで、大きな教訓を得た。それは所属する芸人たちにとっても同様だろう。闇営業問題を受け、吉本興業は公式に反社会的勢力排除の決意表明を出している。自ら厳しい方針を打ち出したのだ。筆者もどこかでなんらかの区切りをつけなければ、芸能界と反社会的勢力の関係を完全に断つことはできないと思ってきた。

 吉本興業の決意表明を受けて、「過去にはこんな事例もある」と、吉本興業側やメディアに対する情報提供も増えていると聞く。他の芸人の反社会的勢力との交際歴が炙りだされることもあるだろう。吉本興業は返り血覚悟の諸刃の剣を振り下ろしたのだ。さらに、吉本興業関連に限らず、同様の問題で芸能界を揺るがすような大きな衝撃が走るという話もある。過熱する闇営業問題は、いつまで続くのであろうか。

(文=沖田臥竜/作家)

●沖田臥竜(おきた・がりょう)
2014年、アウトローだった自らの経験をもとに物書きとして活動を始め、『山口組分裂「六神抗」』365日の全内幕』(宝島社)などに寄稿。以降、テレビ、雑誌などで、山口組関連や反社会的勢力が関係したニュースなどのコメンテーターとして解説することも多い。著書に『生野が生んだスーパースター 文政』『2年目の再分裂 「任侠団体山口組」の野望』(共にサイゾー)など。最新刊は、元山口組顧問弁護士・山之内幸夫氏との共著『山口組の「光と影」』(サイゾー)。

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