ポスト五輪の東京~2020年以降も勝つまち、負けるまち~ポスト五輪を待ち受ける23区の勝ち目、弱り目

東京都、首都直下地震の地域別危険度マップ…中野区、杉並区は危険度「高」

日頃の“ご近所付き合い”が究極の震災対策に

 東日本大震災の直後、江戸川区、葛飾区、足立区の東部3区の人口が減った。この傾向がもっとも顕著だったのが、区の7割が海抜ゼロメートル地帯である江戸川区。津波の恐怖が生んだ、一種の「風評被害」であったことは想像に難くない。

 都のシミュレーションによると、東京湾北部を震源とする地震の際に想定される津波は1~1.8m程度、死者はゼロ。命を守る上で脅威となるのは、倒壊による圧死と火災による焼死にほぼ限られてくる。

 圧死は、最初の大きな揺れへの対応が勝負を分ける。建物の耐震診断、必要な補強、家具の転倒防止。火災も、火の元への注意や初期消火の徹底で被害を最小限に抑えることができる。これらは、いわば自己責任の範囲内だろう。だが、命も財産も無事だったとしても、被災後にはライフラインが寸断された中での厳しいサバイバル生活が待ち受けている。これを耐え抜いていくのは、自助努力では限界がある。そのとき、大きな力を発揮するのがご近所同士の助け合い、つまり「共助」だ。

 16年4月に発生した熊本地震では、直接死者数50人に対し、震災関連死が200人を超えた。その主要因のひとつに、避難所生活の煩わしさを敬遠し、車中泊を選ぶ人が多かったことが挙げられている。まちの共助パワーが発揮されれば、防げた悲劇があったのかもしれない。

 助けてほしいときだけ助けてくれ、では話にならない。日頃から、できる範囲で助けられたり助けたりし合う関係を築いていておくことこそ、究極の震災対策となる。それは、どこのまちに住もうと変わりない。

 こと震災に関する限り、おそらく日本中が「危険なまち」。「安全なまち」とは、小さな努力の積み重ねによって自らがつくり出していくものなのだ。そう考えると、図表1や図表2に示したデータが、また違った意味を持ってくると感じられるのではないだろうか。

(文=池田利道/東京23区研究所所長)

池田利道/東京23区研究所所長

東京大学都市工学科大学院修士修了。(財)東京都政調査会で東京の都市計画に携わった後、㈱マイカル総合研究所主席研究員として商業主導型まちづくりの企画・事業化に従事。その後、まちづくりコンサルタント会社の主宰を経て現職。
一般社団法人 東京23区研究所

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