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南清貴「すぐにできる、正しい食、間違った食」

ひとり親世帯の貧困率、50%超え…安い加工食品三昧→病気の負のスパイラル

文=南清貴/フードプロデューサー、一般社団法人日本オーガニックレストラン協会代表理事
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「Getty Images」より

 年の瀬ともなりますってぇと、どうしても落語の「富久」だの「芝浜」が思い起こされ聴きたくなりますな。まぁ、この2つは名作といっていいでしょう。落語は1回聴けばそれでいいというわけではなく、話の筋はわかっていても、演者によって、また同じ演者でもその成長の度合いによって、それからその日の調子によっても、随分と違うものになります。

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 それぞれの落語家が、十八番という演目を持っており、例えば古今亭志ん生だったら「火焔太鼓(かえんだいこ)」、桂文楽なら「明烏(あけがらす)」ということになりますし、三遊亭圓生なら「文七元結(ぶんしちもっとい)」でしょうか。

「富久」も「芝浜」も多くの落語家が演じておりますが、筆者はやはり古今亭志ん朝がいいなあと思いますね。特に「芝浜」の最後のオチの「よそう。また、夢になるといけねえ」の場面は、何回聴いても泣けてきます。あまり詳しく書いてしまうと、これから聴いてみよう、と思っている方のお邪魔をしてしまうので、これくらいにしておきますが、「芝浜」は主人公・魚屋の熊さん(金さんとする噺家もいる)が一念発起してがんばれば、3年で貧乏から抜け出して、けっこうな仕事ができるまでになれる、いい時代の話だったのだなぁと感じます。

生産性が低下していく日本

 現代でも、もちろんチャンスはあるわけですが、日本全体を見渡してみると、相対的に貧しくなっているということが言えると思います。

 IMF(国際通貨基金)の調査によれば、日本の生産性は4.2万ドル(2017年)で、これは先進国39カ国中、なんと23位です。GDP総額ではアメリカ、中国に次いで3位(5兆4427億ドル)にとどまり、なんとか面目を保ってはいますが、これは単に他国より人口が多いためです。

 国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、日本は今後50年間で、人口が約3割減ることになっています。2017年に1億2653万人だった人口が、65年には8807万人にまで減少するのです。そうなると、国民の2.6人に1人は65歳以上の高齢者になるわけで、これが日本の直面する未来ということなのですが、問題は人口減少と高齢化の進行が、日本の経済にどのような影響を及ぼすのかということです。

 当然のことながら、生産性はさらに落ち、需要は減少し、市場は供給過剰になります。さまざまな業種で価格競争は苛烈を極め、利益を確保するために企業は人件費を抑制するでしょう。結果的に、労働者の所得は今よりもさらに減ります。需要はどんどん落ち込み、デフレは加速するという悪循環に陥るだろう、という予測は、おそらく当たるのでしょう。

 政府が掲げ続けてきたデフレ脱却の目標は、達成されることはないだろうというのが、今現在の大方の識者の見方です。即効性のある対策は、こうなってからでは無理なのかもしれませんが、長期的に生産性を向上させるには何が必要なのでしょうか。筆者が考えるには、まずは消費税の廃止と、最低賃金の引き上げ、それも継続的な長期的な引き上げが重要な鍵だと思います。その第一歩、第二歩を踏み出さない限り、生産性の向上は望めないと筆者は考えます。

相対的貧困が招く未来

 日本では今、「相対的貧困」という状況に陥る人が増えています。数年前に比べると貧困率は若干減ったとはいえ、15.7%と世界で14番目です。しかし、先進国のなかでは、中国、アメリカに次いで3番目という貧困率の高さなのです。そんななかで筆者が着目すべきと考えているのは、ひとり親世帯の貧困率です。15年の時点で50.8%、つまり、ひとり親世帯の半数は貧困状態なのです。

 それはいったい、どのような影響を全体に与えるのでしょうか。大変深刻な問題を孕んでいると考えざるを得ません。貧困に陥ると、真っ先に食事に困ることになります。最終的には加工食品だけの食事になっていきます。これは、アメリカのSNAP(Supplemental Nutrition Assistance Program)でも実証されています。SNAPは08年以降呼び名が変わりましたが、以前は「フードスタンプ」と呼ばれていました。アメリカ政府が低所得者や高齢者、障がい者や失業者などに提供する食糧支援プログラムのことです。現在約4000万人がこのプログラムの支援を受けていますが、これはアメリカの人口の約12%に当たります。

 筆者には、これが日本の未来図のように思えてしまうのです。そして加工食品ばかりになってしまった食生活によって、多くの人は健康からどんどん離れていきます。そして病気になっていくのですが、そうなっても貧困のため医療機関にかかることもできない。それは、恐ろしい未来ではないでしょうか。これを筆者の杞憂だと断言できる人がいますか。もし、これが現実になってしまったら、真っ先に犠牲になるのは子供たちです。ひとり親世帯の子供は、その確率がさらに高くなるでしょう。

 私たちは自分の手で、この未来図を書き換えることは不可能なのでしょうか。いいえ、そんなことは絶対にありません。自分たちの未来は選択できます。もう一度書きますが、選択というのは創造のプロセスです。その選択によって、どのような未来も創造できます。

 まず、私たちが取り組むべきは、今日の食事ではないでしょうか。お金をかける必要などありません。時間を費やす必要もないのです。家庭料理をシステム化することで、多くの食生活に関する問題は解決の道を歩み始めます。筆者はすでに、その道を歩き続けていますので、一緒に歩いていっていただきたいと思う次第です。

 そうそう、暮れといえば忘れてはいけない落語が、もうひとつありました。「二番煎じ」です。火事が多かった江戸で、年末に町内の旦那衆が火の用心のための夜回りをすることになり、番屋で風邪をひかないようにということで煎じ薬を飲むのですが、これが実は「お酒」で、薬の口直しと称して「しし鍋」まで食べてしまうという話です。この後の展開が面白いのですが、それはさておき、適量のお酒と鍋物なんてぇ、庶民のちょいとした贅沢さえままならねぇってな時代が来るんでしょうかねぇ。いやいや、そればかりは、御免蒙りてぇもんです。
(文=南清貴/フードプロデューサー、一般社団法人日本オーガニックレストラン協会代表理事)

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『大切な人に食べさせたくないもの、食べてほしくないもの』(ワニプラス)

南清貴

南清貴

フードプロデューサー、一般社団法人日本オーガニックレストラン協会
代表理事。舞台演出の勉強の一環として整体を学んだことをきっかけに、体と食の関係の重要さに気づき、栄養学を徹底的に学ぶ。1995年、渋谷区代々木上原にオーガニックレストランの草分け「キヨズキッチン」を開業。2005年より「ナチュラルエイジング」というキーワードを打ち立て、全国のレストラン、カフェ、デリカテッセンなどの業態開発、企業内社員食堂や、クリニック、ホテル、スパなどのフードメニュー開発、講演活動などに力を注ぐ。最新の栄養学を料理の中心に据え、自然食やマクロビオティックとは一線を画した新しいタイプの創作料理を考案・提供し、業界やマスコミからも注目を浴びる。親しみある人柄に、著名人やモデル、医師、経営者などのファンも多い。

『大切な人に食べさせたくないもの、食べてほしくないもの』 日本の危ない食事情に警鐘を鳴らし続けてきた著者が、日々の食生活から遠ざけたい食材、メニューを、その恐ろしい理由と共に指摘します。 amazon_associate_logo.jpg

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