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新型コロナ検査、韓国は1日4万件、日本は3千件台…検査拡大を阻む政府内の利益代表者

文=編集部
新型コロナ検査、韓国は1日4万件、日本は3千台…検査拡大を阻む政府内の利益代弁者の画像1
厚生労働省(新華社/アフロ)

 日本は新型コロナウイルス感染症の爆発的な増加を防ぐことができるのか。重要な分水嶺に差し掛かりつつある。政府は25日、新型ウイルス対策本部(本部長・安倍晋三首相)の会議を首相官邸で開き、対策の基本方針を取りまとめた。「水際対策」から「感染者集団が次の集団を生み出すことの防止」に対策の重点を移すというのだが、その検査体制に関して医療関係者から疑問の声が上がっている。クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の対応から今日まで、一連の政府決定の不可解さの原因はなんなのかについて探る。

なぜ検査は拡大できないのか

 25日の政府方針では、患者が大幅に増えた場合は、一般医療機関で患者を受け入れ、軽症の人は自宅療養とすることも決めた。だが、そもそも感染したかどうかがわからなければ、患者は働き続けるだろうし、家の外にも出るだろう。ビジネスパーソンが特定の病気で休暇を申請するには、医師の診断や検査結果が必要だからだ。昨年の消費税増税以降、生活は苦しくなるばかりなのに欠勤したり、明確な理由なしに貴重な有給休暇を使ったりしたくはないだろう。

 だが、感染を確認するための「PCR検査」は、国立感染症研究所(感染研)と大学付属病院などの大病院に限られ、軽々に受診はできそうにない。

 医療ガバナンス研究所上昌広理事長は次のように現状の問題点を指摘する。

「疑問なのは、なぜ政府は検査体制を拡大しないのかということです。

 対策本部の専門家会議では、小さな病院では設備の状況などからPCR検査の実施が難しいとしています。しかし、小さな診療所でも患者さんから検体をとって民間の検査会社に送れば、次の日には結果が出ます。日本国内の民間検査機関は100社あって、900のラボがあります。1日10万件単位で検査ができるはずです。本来であればこの一連の流れを保険適用にすればよいだけなのです。

 なぜ韓国で1日4万件、中国でも数万件の検査を実施しているのに、日本では最大3800件なのでしょう。答えは簡単です。一部の利益代表が政府の専門家会議にいて、自らの組織に一連の検査事業を囲い込もうとしているからです。感染研と大学病院で検査すれば補助金がもらえます。つまり、これは公共事業なのです」

不可解な政策決定は誰が行っているのか

 与党や複数の政府関係者の話を総合すると、加藤勝信厚労相は政府のスポークスマンで、良い意味でも悪い意味でも方針の策定などにはほとんど関与できていないようだ。

 具体的な対策に関しては、感染研と新型コロナウイルス感染症対策専門家会議に丸投げの状態で、「首相官邸側では首相補佐官の和泉洋人氏、木原稔氏、そして『週刊文春』などで取り上げられている大坪寛子厚労省大臣官房審議官(危機管理、科学技術イノベーションなど担当)らが動いています。大坪審議官はダイヤモンド・プリンセスにも乗船していました」(政府関係者)

 ここで政府の対策本部の専門家会議のメンバーを見てみよう。座長は脇田隆宇感染研所長、副座長は独立行政法人地域医療機能推進機構理事長の尾身茂氏、構成員に川崎市健康安全研究所所長の岡部信彦氏、日本医師会常任理事の釜萢敏氏、東京慈恵医科大学感染症制御科教授の吉田正樹氏ら10人が名を連ねる。

 より詳細に各人の経歴を説明すると、座長の感染研所長の脇田氏は名古屋大医学部卒、副座長の尾身氏は厚労省を経て名誉世界保健機構(WHO)西太平洋地域事務局長、内閣府の「新型インフルエンザ等対策有識者会議」会長を務めた。岡部氏は元感染研感染症情報センター長で東京慈恵医大卒、吉田氏は同大教授だ。そして、大坪氏も東京慈恵医大卒で感染研血液・安全性研究部の研究員だった。釜萢氏のバックボーンの日本医師会は自民党の後援組織である日本医師連盟の母体だ。

 東京慈恵医大は公衆衛生分野の研究でリードしているし、感染研の関係者が今回の問題で全面に出てくるのは道理ではある。とはいえ、人員構成が偏っているようにも見える。

「37.5度以上の発熱で4日何もしなければお年寄りは死ぬ」

 前出の上氏は次のように語る。

「これまで、国内のワクチンは感染研の指揮のもと国内4団体でつくられていて、先進的な技術や知見を持つメガファーマーは関与できませんでした。また輸入品を入れないよう厳しく統制しています。2009年の新型インフルエンザ問題の際も国内でワクチンを作れなかったのも、感染研のガバナンスによるところが大きいです。一部の団体の思惑が排除できない中、合理的に政策決定が下されているのか疑問です。

 政府が打ち出した『37.5度以上の発熱が4日以上続いた場合』という検査対象者の方針も、医療従事者から疑問が噴出しています。思い付きではないでしょうか。疫学的な根拠はまったくありません。そもそもインフルエンザかどうかもわからない状態で、お年寄りが発熱して、解熱剤もタミフルも投与せず4日も経過観察をしたら亡くなってしまいます」

 政府の感染症対策の杜撰さが発覚する起点になったクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」での状況について、自衛隊関係者は次のように話す。

「船内はいろいろな機関が入り乱れていたそうです。そんな中、どこの所属かは言えませんが、とにかく自衛官ではない方が『エボラ(出血熱)じゃないし、風邪みたいなものだし大騒ぎしなくても大丈夫だよ』などと軽口を言っていたようです。どんな文脈で言ったのかはわかりません。

 現場は文字通り懸命に働いています。患者さんも懸命に病気と闘っています。言いたいのはそれだけです」

 不必要に恐怖を煽る必要はない。だが今の政府上層部には自然の猛威に対する謙虚さと誠実さ、真摯さが欠けてはいないだろうか。

(文=編集部)

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