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垣田達哉「もうダマされない」

コロナ禍、深刻な野菜不足の兆候…1~2月の輸入激減、じゃがいもは9割減

文=垣田達哉/消費者問題研究所代表
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「Getty Images」より

 食料不足は生鮮品にまで及ぶ可能性がある。4月15日付本連載記事で述べたように、1月~2月累計で、野菜は数量ベースで前年同期比20.8%減、魚介類は同17.7%減である。まず野菜を見てみよう。

 ばれいしょ(じゃがいも)の輸入が激減している。昨年1月~2月累計で数量ベースで3564トン、金額ベースで2億1295万円輸入されていたが、今年は122トン、786万円である。輸入先は米国アイダホ州のみで、日本国内ではポテトチップス用にしか使用されない。

 ポテトチップスも9割以上が国産じゃがいもを使用しているので、たとえ輸入がゼロになっても日本にはほとんど影響はない。ただ、この数字を見て推測できるのは、米国での新型コロナウイルスの影響がかなり深刻だということだ。アイダホ州は4月15日現在、新型コロナウイルス感染者が1464名、死亡者数が39名である。ニューヨーク州に比べれば、感染者も死亡者もかなり少ない。アイダホ州は、米国でもじゃがいもの生産量がトップの州だ。日本へのじゃがいもの輸出額は、昨年2カ月間で2億円以上になる。経済面でもかなり大きな数字のはずだ。

 それが、今年は輸出がほとんどできないということは、新型コロナウイルスの影響がかなり甚大で、サプライチェーン(生産から販売=輸出)がほとんど機能していないからではないだろうか。政府は、輸入は順調だと言っているが、この連載で筆者は何度も指摘しているが、本当に米国のサプライチェーンの実態を把握しているのだろうか。

 たまねぎも輸入量が数量ベースで30%ほど激減している。輸入先の約96%が中国である。昨年は1~2月の2カ月間で5万1767トン、24億5885万円相当を輸入している。スーパーマーケットなどの小売店では国産品しか販売しないので目立たないが、飲食や中食、弁当・惣菜などでは、ほとんど中国産たまねぎが使われている。食材のなかでも、たまねぎは非常に重宝される野菜だ。新型コロナウイルスの影響で飲食店需要は激減しているだろうが、中食や弁当・惣菜は売上が伸びているはずだ。

 中国の農業生産や輸出産業は元通りになっているのだろうか。中国からの輸入が今後も増えなければ、国産たまねぎの争奪戦が起きるだろう。

日本、輸入で中国依存のリスク鮮明

 その他の野菜では、結球キャベツ、ごぼう、乾燥しいたけ(干し椎茸)、冷凍ほうれん草、たけのこ調整品は、輸入の大半を中国が占めている。キャベツ、ごぼうは、ほとんどが産地表示義務のない飲食、中食、弁当・惣菜用、冷凍ほうれん草は冷凍食品に多用されている。干し椎茸はスーパーなどの小売店でも多く販売されている。たけのこ調整品は、たけのこの水煮やメンマ等である。ラーメンに欠かせないメンマは、ほとんどが中国産だ。このまま輸入が減少し続ければ、ラーメンからメンマが消えることもあるかもしれない。

 結球レタスの大半は台湾からの輸入で、スーパーなどの小売店以外で使われる。新型コロナウイルスの感染拡大を最小限に防いだことで話題となったが、サプライチェーンは通常の状態に戻っているのだろうか。

 中国は他国に比べ、新型コロナウイルス問題が終息に近づいているようだが、サプライチェーンの回復はいつになるのだろう。日本は、食料品もそうだが輸入全体で第1位の国が中国である。米国の2倍以上の輸入金額になっている。中国の産業経済が正常に戻らなければ、日本全体の産業経済にも大きな影響を与えるだろう。

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肉類は大きな減少はないが…

 輸入量に大きな変動がない畜産品も見てみよう。

 畜産品で減少しているのは、鶏肉調整品が数量ベースで▲8.3%、金額ベースで▲7.8%。輸入先の第1位がタイ、順に中国、ベトナムである。2桁減少の天然はちみつは、ほとんどが中国である。シェアは数量ベースで約68%ある。

 牛肉(くず肉含む)は1~2月累計で全体で8万9479トン、567億7451万円と巨大な輸入量である。輸入先は第1位から順に、米国(3万9961トン、253億2403万円)、豪州(3万6427トン、237億4091万円)、カナダ(6545トン、33億3057万円)。豚肉(くず肉含む)は全体で13万9365トン、741億4202万円。輸入先は第1位から順に、米国(4万2480トン、223億1969万円)、カナダ(3万6337トン、191億8195万円)、スペイン(1万6840トン、90億2659万円)。

 鶏肉は全体で8万5539トン、211億8710万円。輸入先は第1位から順に、ブラジル(6万2606トン、140億8076万円)、タイ(2万784万トン、66億3538万円)、米国(1684トン、3億2988万円)。

 牛肉、豚肉、鶏肉については、2月時点では大きな減少はない。数字でわかるように、肉類は取引額が膨大な金額になる。米国は3種の肉類合わせて2カ月間で約480億円である。その他の国も数十億円から数百億円の規模だ。各国とも日本への畜産品の輸出が大幅に減少すれば、畜産産業に大きなダメージとなる。どの国も、畜産品だけは輸出は守りたいはずだ。逆に、肉類の日本への輸入が激減するようなことがあれば、新型コロナウイルスの影響が計り知れないものだという証になる。

 次回は、これも大きな影響を受けている水産物について考察する。

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(文=垣田達哉/消費者問題研究所代表)

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

1953年岐阜市生まれ。77年慶應義塾大学商学部卒業。食品問題のプロフェッショナル。放射能汚染、中国食品、O157、鳥インフルエンザ問題などの食の安全や、食育、食品表示問題の第一人者として、テレビ、新聞、雑誌、講演などで活躍する。『ビートたけしのTVタックル』『世界一受けたい授業』『クローズアップ現代』など、テレビでもおなじみの食の安全の探求者。新刊『面白いほどよくわかる「食品表示」』(商業界)、『選ぶならこっち!』(WAVE出版)、『買ってはいけない4~7』(金曜日)など著書多数。

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