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Classiが「全然使えない」と悲鳴…多くの高校で授業停止、情報流出でも原因非公表

文=編集部、協力=三上洋/ITジャーナリスト
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接続トラブルをアナウンスするClassi公式ホームページ(11日)

 全国の高校で授業が受けられない異常事態が発生した。ベネッセホールディングスとソフトバンクの合弁会社「Classi」が提供する教育機関向けインターネットプラットフォーム「Classi」でゴールデンウィーク明けの7日から断続的にアクセス障害が発生している。ネット上では全国の高校生からは「試験を受けられない」「出席できない」など、悲鳴が相次いでいる。

「Classiがずっとcrashing」

 Classiは2500以上の高校で116万人が使っているとされる教育プラットフォームで、動画教材の配信や教師と生徒間の連絡、学習の記録付けなどができる。トラブルは今月7日、新型コロナウイルス感染症の影響で登校きない高校生らが、課題を提出したり、試験を受けたりしようと同スマホアプリを使おうとしたところ、接続できない事例が相次ぎ発覚した。11日、Twitter上では「#Classiを許すな」というハッシュタグが拡散を続けていた。タグがつけられた投稿には、接続ができないなど学生たちの悲痛な声で溢れていた。

「朝からずっと入れんくて笑うしかない」

「Classiがずっとcrashing」

「は???

理科の課題が出てるからやろうと思ったら開かないし、しかもトレンド入りしてんじゃんw

マジで使えんw」

「いやさテスト配信されるはずなのにClassi使えないんだけど……..」

「マジでいい加減にしてくれ

今日からオンライン授業だって時にさ?」

「授業プリントを確認しようとしたのにずっとこの状態だし!benesse、正直こんなアプリいらないんですけど。なんでこれにお金払うの?」

「18時までにメッセージ送んないと欠席扱いになるんすけど

小学校1年生のときから学校休んだこと1回も無いのに(ガチ)、こんなんで欠席になるとか堪ったもんじゃないっすわ」

 同社公式ホームページ上の「Classiのサービス稼働状況」によれば、11日午後5時ごろにはWEBに関しては通常の稼働状態に復旧していたものの、iOSアプリやandroidアプリでは「やや遅延」「大幅に遅延」の状況が続いていた。

 Classiでは4月、第三者による不正アクセスを受け、約122万人分のユーザーIDなどが流出した恐れがあると発表するトラブルが発生していた。

 いったい、同サービスで何が起こっているのか。ITジャーナリストの三上洋氏は一連のトラブルについて次のように解説する。

三上氏の解説

 今回問題になっているClassiは、高校や専門学校で導入されている学習支援システム(LMS)のひとつです。公式発表によると同社は私立を中心に、高校生の生徒数で全国の3分の1以上をカバーしていることになっています。

 4月の不正アクセスでは、約120万件の個人情報の流出があったということですが、同社のサービスを利用している生徒数は116万人なので、ほぼ全員のデータが流出してしまった可能性があります。暗号化されたパスワードを使用していたとのことですが、どのレベルの暗号化なのかは現在まで明らかにされていません。

 また、この流出トラブルが発生した際、どんな問題点があったのかについて同社からアナウンスはありませんでした。個人情報流出トラブルなどが発生した際、すべてのIT企業が公開しているわけではありませんが、ユーザーに安心感を与え、同様のトラブルが他者のサービスで発生することを防ぐ意味でも、原因を公表するべきだと思います。

 4月時点でこうしたトラブルが発生していたわけですが、ゴールデンウィーク明けの7日以降、接続ができない状況になりました。同社はこのトラブルのため、ホームページ上に接続に関するステータスページを開設し、パソコン、スマホの混雑状況をアナウンスしていますが7~8日はほぼ不通の状況が続き、11日も午前8時~10時には不通になりました。夕方になってウェブでの混雑は解消されているものの、スマホは依然として混雑しています。

 現在は新型コロナウイルスの影響で、全国の高校の多くがオンライン授業を余儀なくされています。その際、同システムを使わないと授業に参加できません。そもそも時間割すら開けない深刻な状況です。

 今回のトラブルの原因として考えられるのは2つです。1つは同時接続数の問題です。同社のネットワークが100万人規模のユーザーをさばき切れていない可能性が高いです。

 2つ目はサーバーの処理能力の問題です。同社は一部報道の取材に対し、システムの効率化と処理を見直す方針を示しています。つまり、もともと処理能力が貧弱である可能性が高いと思われます。

 今回は新型コロナウイルスによる緊急事態であるため、仕方のない面もあるでしょう。全国の高校が休校になり、すべての授業をClassi上で行うことは想定していなかったのではないでしょうか。

 とはいえ、ゴールデンウィーク明けの月曜日(事実上の新学期スタート)の1限目に接続が集中することは容易に想像できます。コロナがあろうとなかろうと、学校の年間スケジュールの中で集中する日時は自明ともいえます。あまり使われないことが前提の準備しかできていなかったのではないでしょうか。やはり見通しの甘さは否定できないと思います。

 Classiがどこで動いているのか明らかになっていませんが、グーグルクラウドプラットフォーム(GCP)やAmazon Web Services(AWS)のようなクラウドを利用しているのであれば、サーバーの増強などは比較的柔軟に対応できるはずです。しかし、仮にソフトバンクなどの自社サーバーで稼働しているとなれば、一朝一夕には増設はできません。また、またもともとのシステム設計がクラウド活用を想定していなかった場合、問題解決までに時間を要する可能性があります。

政府のギガスクール構想に影響も

 大学ではだいぶ前からLMSは普及していました。現在までにmanaba(朝日ネット)、course power (富士通)、海外製のblackboard、google classroomなどが活用されています。やはり新学期の4月には講義を受ける大学生も多く、接続が集中して混雑することがありますが、まったく動かないということはありません。

 また各大学が様々なLMSを採用し、場合によっては複数を運用しているため、1つのLMSが問題を起こしても、日本の大学教育全体がストップすることはありません。

 それに対して、高校ではベネッセとソフトバンクの合弁会社であるClassiが日本の高校の半数をカバーするガリバー状態です。Classiがアクセス集中で止まることで、高校教育全体が危機的状態になっています。

 Classiは昨年1月、EDUCOMを買収し子会社化しました。EDUCOMは約30年にわたり校務支援をしてきた企業です。全国の小中学校や教育委員会向けに、教職員の校務を効率化するシステム「EDUCOM マネージャーC4th」をクラウド・オンプレミスの双方で提供していました。このシステムでは、成績処理や出席確認や健康診断票、保健室管理、指導要領や学校事務などの機能を統合的に利用できるもので、校務支援システムを導入する学校のうちの約5割を占める業界トップシェアを持っていました。それに加えてClassi独自の授業のオンラインシステムを含め、全国の学校のシェアを独占する形になりました。

 そもそも日本の小中高の教育現場では米国や欧州、中国と比較してICT化の遅れが指摘されていました。そこで登場したのが、今年4月から実施されている政府のギガスクール構想です。同構想では次の4つが大きな柱として据えられています。

・生徒1人に1台端末を配布すること

・学校内のネットワーク化

・ICTの全面活用

・学習ツール、校務のクラウド化

 つまり、ベネッセはClassiとEDUCOMを統合することで、この4つ目の柱を実現させようとしていたのです。しかし、今回のトラブルでその柱の一つが大きく揺らいでいます。実際に多くの高校で授業ができずに機能停止していることを考えれば、これはもはや1企業のトラブルではなく、日本の学校教育全体を揺るがす大きな問題だと思います。文部科学省が動かなければいけない事態だと考えます。

(文=編集部、協力=三上洋/ITジャーナリスト)

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