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就職氷河期世代に光明→再びどん底に…企業の9割が採用予定なし、国の支援策が無意味化

文=編集部
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「gettyimages」より

 “春の到来”が期待されていた就職氷河期世代が、再びどん底に突き落とされそうだ。東京新聞インターネット版は18日、共同通信の配信記事『氷河期採用 9割弱予定なし 「キャリア重ねた人優先」政府要請広がらず』を公開した。同記事によるとアンケートの結果は次の通りだった。

「主要111社を対象とした共同通信社のアンケートで、バブル崩壊後に就職難だった就職氷河期世代を採用する予定がないとした企業は、回答を寄せた102社の約88%に当たる90社に上ったことが分かった。政府はこの世代の正規雇用を三年間で30万人増やす目標を掲げ、積極的な採用を企業に要請しているが、新型コロナウイルス感染拡大で先行きの不透明感が増す中、協力に広がりが見えない実態が浮き彫りとなった。

 採用予定がないとした理由(複数回答可)については、42社が『正社員経験などキャリアを重ねた人の中途採用を優先』を挙げ、『その世代の中途採用枠を設けていない』が8社、『既存社員との処遇バランスが難しい』が2社と続いた」

「10年遅いわ」など怨嗟の声相次ぐ

 安倍晋三首相は昨年12月、30~40代の就職氷河期世代の雇用支援に2019年度補正予算を含め、22年度までの3年間で約650億円の予算を確保する方針を示した。約30万人の雇用増を目指し、同事業に取り組む自治体向けの交付金制度なども創設。地方創生などを掲げる就職説明会や奨学金の返済支援などを促す計画だ。

 また計画では相談窓口の充実や、民間のノウハウを活用した職業訓練、採用企業側の環境整備が図られる予定だった。特に発表当時、注目されていたのは氷河期世代を採用しようとする企業に対し「助成金などのインセンティブを強化する」ことだった。

 だが、まさに政策が実行に移されるタイミングで新型コロナウイルス感染症が国内で蔓延。それに伴う営業自粛などの影響により3月の段階で、いわゆる雇用契約を更新しない「派遣切り」などの兆候が続出した。そして今回、ダメ押しをする形で就職氷河期世代にとって改めて厳しい見通しが示された。Twitterでは18日、「#氷河期採用」トレンド入りした。氷河期世代と思われるユーザーからは以下のような怨嗟の声が溢れている。

「普通に考えて要らんよな…。10年遅いわ」(原文ママ、以下同)

「かつて与党も野党も支援業界から睨まれたくなくて政財界から見てみぬフリをされて放置された世代の人たちだろう

順調な昇給も出世もなく、

満足な賃金が得られないので結婚や子作り子育てを諦め、

なのに20年間をひたすら自己責任と言われて過ごした世代」

「政治家って低脳アホの集まりだよな… 強制力ないのに民間が職歴ほぼゼロのアラフォー雇うわけねーだろ。

 ロスジェネ問題から目を逸らし続けた政治家の大失策と甘い汁を吸い続け会社にしがみ付いた団塊の世代の老害のせい。生活保護より安いハロワのブラック求人でさえ40歳以上はお断り」

「氷河期世代ではないが社内のバブリー世代が”若い頃は遊べよ”って言ってて殺意を覚えた。遊ぶ金はどこから来るのでしょうか?」

「当時、害虫駆除の訪問販売の会社説明会に200人以上集まっていたな

結局、70万以上する教材を売り付けるテレアポ営業の会社に就職したよ

有名国立大卒とか早稲田卒とかの人もいたよ

そのぐらいひどい時代」

無理に雇えば労組から突き上げ?

 実際、企業側の人事担当者はどう考えているのだろうか。大手オフィス機器メーカーの20代の人事担当者は次のように語る。

「従業員の年齢構成の不均衡の是正は社の至上命題なのですが、今回のコロナ騒動でかなり経営が苦しい状況です。少なくとも夏季ボーナスが出せるかどうかの瀬戸際です。ボーナス払いでマンション購入ローンを払っている子育て世代も多いですし、政府のインセンティブがあるからといって人件費を増やすのはちょっと……。

 それに戦力になるかどうかわからない人たちを無理に雇って現場に負担をかけ、しかも採用コスト分を補填するために、既存社員のボーナスとか昇給が減ったら今度は労働組合から突き上げをくらいます。労組にしても正社員の生活安定を図るのが仕事で、社会の弱者救済が目的じゃありませんからね」

自治体採用でも「土木」などの専門職目立つ

 政府は、氷河期世代の雇用を全国の自治体に採用を呼びかけるとともに、国家公務員でも今年中に省庁横断の統一試験を実施する予定だが、これも採用倍率の急騰が予測され狭き門になる可能性が高い。

 さらに総務省公式ホームページ上で公開されている「地方公共団体における就職氷河期世代支援を目的とした職員採用試験の実施状況」によると、5月7日現在、17自治体が職員を募集している。だが、キャリアがなくても就職しやすい「行政職」と合わせて、資格が必要な「土木」「保健師」「給食調理員」などの職種も目立つ。

 経済産業省の関係者は次のように話す。

「政府の方針でうちでも相当数雇入れることになりましたが、いったいどこに配属させるのかちょっと話題になっています。『本省ですこしトレーニングした後に、あまり異動希望が出されない地方の出先機関に配属かも』『コピー専属担当とかにするのかな』など良い話は聞きません。そもそも人手不足なのは、専門職です。一方で、事務方はこれまでもいろんな形で採用してきているので、それなりに人はいます。いったいどのようにバランスをとるのか。採用後に職場でハレーションが起きなければいいのですが」

 早稲田大学人間科学学術院文化・社会環境科学研究領域の橋本健二教授は昨年12月、当サイトの取材に対し以下のように見解を述べている。

「そもそも(政府の定義する)就職氷河期とはいつからいつまでの世代を指すのでしょうか。仮に、1996年から200506年までに社会に出た人と想定してみます。国の学校基本調査の統計をもとに、高卒と大卒のフリーター・無業者数を見てみると、その合計は273万人に上ります。しかし、新卒のフリーター・無業者が増え始めたのはもっと以前からですから、これを前後数年伸ばして93年から08年の期間で区切って見ると382万人になります。そして、バブル崩壊後の91年から2017年までで見ると550万人です。30万人の雇用増では、とても足りません」

 何もしなければ生活保護費の急増は不可避だろう。問題を先送りしても、いつかはそのツケを払わなくてはならない。政府も企業も、腹をくくる時がきているのかもしれない。

BusinessJournal編集部

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