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淡路島がパソナの建物だらけ…本社移転&社員千人移住、“パソナ”ランド化に地元で不安も

文=編集部
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ハローキティスマイル (@hellokittysmile.awaji) • Instagram写真と動画より

 人材派遣大手のパソナグループ(東京都千代田区)は8月31日、本社機能を兵庫県淡路島に移転することを明らかにした。

 すでにパソナは昨年12月、就職氷河期対策の一環として同社が兵庫県の淡路島で実施する事業に携わる社員200人、全国で地方創生に携わる100人を正規雇用すると発表するなど、淡路島の拠点化をほのめかしてきた。

 兵庫県立淡路島公園内にテーマパーク「ニジゲンノモリ」を建設。さらに「ゴジラミュージアム」も8月8~31日までの期間限定で先行オープンしていたほか、和洋食レストランを備えた「青海波」と人気キャラクター「ハローキティ」のショースペースが付随するレストラン「ハローキティスマイル」などを相次いで開設した。そんな急速に進む島の“パソナランド化”の影には、地元出身のホープ、西村康稔経済再生担当大臣(自民党衆議院議員、小選挙区兵庫9区)の影が見え隠れする。

人口13万人の島にパソナ社員1000人

 産経新聞インターネット版は31日、記事『パソナ、本社機能を淡路島に移転 社員1000人を異動』を配信。同記事では「営業、人事部門などの社員約千人を来年春までに淡路島に異動させる。新型コロナウイルスの感染拡大で在宅勤務が普及したことを受け、『どこでも仕事ができる』ことを実証する。パソナは淡路島の西岸にテーマパークや劇場、レストランなどを開設しており、こうした観光事業との相乗効果も狙う」(原文ママ)と報じた。

 また、今回の移転に合わせて「デジタル技術を活用して社内を変革する『デジタル・トランスフォーメーション(DX)センター』を設置する。異動してくる社員が入居する新たなオフィス(約5300平方メートル)について既に賃貸契約を進めており、大浴場、バーを備えた社宅(140室)や寮も完備する」という。移住する社員のみならず、関連施設の従業員や取引先もふくめれば、一つの町が引っ越してくるといっても過言ではないだろう。

 ちなみに淡路島には淡路市、洲本市、南あわじ市の3つの自治体があり、今年6月末までの島の総人口は約13万2000人だ。ここに1000人のパソナ社員が加わるのだから、地域の経済界やコミュニティーへのインパクトは計り知れない。

 地元紙記者は次のように話す。

「ここ数年ですっかりパソナの施設だらけになってしまいました。地元の経済関係者は降って湧いた国とパソナから注がれる恵みの雨に沸き立っていましたよ。なにしろ淡路島と明石市でつくられる兵庫9区は、あの西村康稔経済再生担当大臣のお膝元です。西村さんは安倍晋三首相、昭恵夫人とも大変親しく、同じ兵庫県人としてパソナの南部靖之会長CEO(神戸市出身)とも懇意にしています。『西村さんがパソナと国の地方創生加速化交付金を引っ張ってきてくれた』と話題になっています。

 その典型的な事例でいえば地方創生加速化交付金を使い、廃校を改装してオープンした複合商業施設『のじまスコーラ』。パソナの関連会社パソナふるさとインキュベーションが運営しています。

 淡路島は大都市神戸市と大阪市に近接する好立地にあります。おしゃれな施設群が揃い、地元の誰もが今年の夏は神戸や大阪から大量の観光客が来るのを期待していました。ところが新型コロナウイルス感染症が蔓延し、急激な落ち込みを見せています。地域の住民たちはそんなにパソナのレストランやテーマパークに頻繁にいくわけではありませんからね。西村大臣が強力に推進した『Go To Travelキャンペーン』で何とか息を吹き返したようですが……」

拭えない「パソナが島を損切する日」の不安

 パソナの南部会長は、かつて同社取締役会長だった竹中平蔵氏の“新自由主義的な経営手腕”を受け継いだ。南あわじ市の漁業関係者は話す。

「地方創生を謳うレストランや商業施設が増えれば当然我々の販路も安定します。とにかく地元のあらゆる企業がパソナさんにぶら下がっていれば儲かりますよね。ただ、一つの大企業に地域の生業が全部依存してしまって大丈夫かなという不安感があります。

 特にパソナさんは利益に目ざとく、フットワークの軽い企業との話をよく聞きます。それは裏を返せば、落ち目になったらすぐに損切りして、足取り軽く東京に舞い戻る可能性も否定できないということです。パソナの施設で働く地元の若者はパソナに派遣登録した上で、各施設で勤務する派遣社員が大半です。一連の事業が、地元住民の永続的な雇用を約束していないことに疑問を感じます。

 パソナさんは人材派遣会社で、コンサルタントや地方創生事業を専業でしている会社ではありません。ある日、突然、島が見捨てられ、後には無人のお洒落な建物だけ残るなんてことがなければ良いのですが。地方創生を謳うのなら国にはパソナさん以外の企業の多角的な参入や、地元出身の従業員への各施設の経営権の委譲などを考えてほしいですね」

 政府はこれまで地方振興の方策として、日本各地に工場を中心とする企業城下町を整備したり、電力会社を中核に据えた“原発ムラ”を作ったりするなどしてきた。果たしてそうした手法は地方のためになったのだろうか。東京への一極集中の是正は喫緊の課題だが、もう一度、地方創生のあり方を検証したほうがよいのではないか。

(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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