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沖有人「不動産の“常識”を疑え」

持ち家を買う人が気にする“3大ニーズ”をクリアする物件を見つける簡単な方法

文=沖有人/スタイルアクト(株)代表取締役、不動産コンサルタント
持ち家を買う人が気にする3大ニーズをクリアする物件を見つける簡単な方法の画像1
「gettyimages」より

 マイホームに求めるものは人それぞれ違う。しかし、戸建を購入する人のニーズはかなり明確に決まっている。子ども部屋が欲しくて、4LDK・100平米の戸建は希望条件に当てはまる。今住んでいるところの近く(同一市区町村内)で取得する確率は6割と高く、それゆえ、50~70平米の家賃並みで買える価格帯なので、購入に無理がない。

 この典型的な購買パターンは昔からあまり変わっていない。価格・面積・間取り・立地が決まっている中で、どんなニーズを持って家を購入しているのか? その答えは、日本人特有の歴史を反映したものになっている。

持ち家戸建に対するニーズランキング

 そこで、新築分譲戸建を内覧したことがある方500人にアンケートした。持ち家への希望は、以下の結果になった。

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 1位は87%で地震などに対する強さで、日本は地震大国であること、近年の大地震の記憶が新しいことなどから、トップとなることはうなずける。2位は柱や土台などの耐久性で86.8%の僅差、「長く住みたいニーズ」と言ってもいいだろう。3位は火災に対する安全性で83.8%、戸建のほとんどが木造なので火事のリスクには敏感だ。

 実は、この3つの項目はこれに対応する国の評価基準がある。1位は耐震等級、2位は劣化対策等級、3位は耐火等級であり、住宅性能表示制度と長期優良住宅において同じ基準で評価される項目のひとつである。

 住宅性能評価書を取った物件の95.8%は、耐震等級の最高等級である等級3を取得している。同様に、劣化対策等級は最高等級である等級3が97.8%、耐火等級は4段階のうち等級2(外壁などが火熱を遮る時間が20分相当以上)が90.5%と大半を占める。つまり、住宅性能評価書付き住宅であれば、この3大ニーズをクリアしている可能性が極めて高い。他に基準らしいものがないので、こうした第三者評価が唯一の安心材料ということになるのだ。

3大ニーズが押しのけたもの

 先ほどのニーズの4位以下は、分類ができる。まずは立地に関わる項目で、4位生活環境の良さ(スーパーなど)、5位周辺環境の良さ(公園・閑静さなど)、9位教育環境の良さ(公立小学校のレベルなど)、13位街並みのきれいさが挙げられる。立地よりも住宅性能という結果は、立地がすでに近隣と決まっているからというのもあるかもしれないが、明確な序列はすでについている。

 次に、住宅のスペックに関する項目で、7位日照時間の長さ、8位設備水準の高さ、10位デザインの良さ(外観・内装)、12位省エネルギー対策、14位庭の広さが該当する。

 住み心地と心地よさに関係する項目だが、住宅性能がないと困るのに対して、「あったらいい」という優先順位になっている。これは、近年の戸建の中でも分譲と注文の比率において、分譲が着実に伸びていることの背景と考えることができる。仕様にこだわるよりも、すでに備えている基本性能を重視する傾向ということだ。

リスク回避ニーズにどれだけ応えられるか?

 ニーズの中でも、地震・火災などの万が一のリスクを回避したいニーズは明らかに強かった。それでは、取得する物件のリスク回避としてどの程度したいかを聞いたところ、以下の順位となった。

 1位・2位は、欠陥住宅リスクとそのコスト負担だった。欠陥住宅になるリスクは、住宅のトラブル相談を受ける住宅リフォーム・紛争処理支援センターが統計的にまとめている。この団体は、住宅性能評価書を取得した物件が万が一欠陥住宅になった場合の紛争処理を推進する機関でもある。その実績は、評価書を取得した物件が年間約9万戸に対して毎年紛争になる件数は約30件と、発生確率は0.03%と低い。

 この結果、住宅性能評価付き住宅はトラブルの件数が少なく、発生コストも低い。つまり、住宅性能評価付き住宅は欠陥住宅リスクもおおむね回避してくれるということだ。

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 住宅性能評価は、その他の項目もリスク回避できる。リスク回避ニーズの3位が劣化対策等級、4位が耐震等級、7位が耐火等級に相当するので、いずれも住宅性能の問題である。また、6位の売主の倒産も新築から10年間は構造や雨漏りなどの問題は無償補修が義務付けられているので、これもほぼ回避できる。

 この結果、残すは5位の地盤の軟弱さをクリアすれば、全部のリスクを回避できることになる。地盤については、地盤ネットアプリなどの無料情報で自分で調査することができるし、地盤保証をしている分譲事業会社もあるほどだ。

 こうして、リスク回避ニーズの中でも「絶対+なるべく回避したい」項目を回避するには、住宅性能評価結果を確認することで実現できる。実際、住宅性能評価書付き住宅ならば、絶対避けたいリスクをひとつでも回避できる人が98.6%に及ぶ。今回のアンケートでは500サンプルなので、493人に及ぶわけだ。

 しかし、住宅性能評価書付き住宅は4分の1しか普及していない。これは良質なストックであるために、中古価格が値下がりしにくいこともわかっている。日本人としては、これが標準となる時代が望ましいと私は考えている。

(文=沖有人/スタイルアクト(株)代表取締役、不動産コンサルタント)

沖有人/スタイルアクト(株)代表取締役、不動産コンサルタント

沖有人/スタイルアクト(株)代表取締役、不動産コンサルタント

1988年、慶應義塾大学経済学部卒業後、2社を経て、1998年、現スタイルアクト株式会社を設立。マンション購入・売却者向けの「住まいサーフィン」は28万人以上の会員を擁する。「タワーマンション節税」などの不動産を使った節税の実践コンサルティングに定評があり、不動産分野でのベストセラー作家として講演・寄稿・取材・テレビ出演多数。主な著書に『マンションは10年で買い替えなさい』(朝日新書、2012年)、『マンションを今すぐ買いなさい』(ダイヤモンド社、2013年)、『タワーマンション節税! 相続対策は東京の不動産でやりなさい』(朝日新書、2014年)など。
住まいサーフィン研究所

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