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飯塚幸三被告、日本の原子力開発の“重要人物”か…人類初の核融合実験炉計画との関連性

文=編集部
飯塚幸三被告、日本の原子力開発の“重要人物”か…人類初の核融合実験炉計画との関連性の画像1
「Getty images」より

「車になんらかの異常が生じて暴走した。アクセルペダルを踏み続けたことはないと記憶している」

 注目の公判の罪状認否で旧通産省工業技術院の元院長、飯塚幸三被告(89)はそう否認した。

 東京・池袋で昨年4月、乗用車で母子を死亡させ9人に重軽傷を負わせたとして、自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死傷)の罪に問われた飯塚被告の初公判が8日午前、東京地裁で始まった。被告当人の否認に続き、弁護側は「運転と事故発生は争わない」とした上で、「車の制御システムになんらかの異常が生じた。過失運転は成立しない」などと無罪を主張した。

はっきりしない飯塚被告の経歴

 公判の成り行きが注目されているところだが、インターネット上でたびたび指摘されているのが、飯塚被告の「人となり」に関する情報の少なさだ。社会に衝撃を与えた事件事故であれば、躍起になって容疑者や被告の人となりを取材し報道するマスコミ各社は、いつになく大人しいように見える。一様に警察担当記者の歯切れも良くない。そんな飯塚被告の経歴の中で、事故以来、まったく触れられていないのが日本の原子力関連研究との関係だろう。

 飯塚被告は、測定器誤差と形状誤差を分離して真円度・円筒度測定ができるマルチステップ法を開発した日本有数の計量学の権威だ。工業や科学において、計測・計量はすべての技術の基礎でもある。ましてや真円度や円筒度の測定は、あらゆる技術に応用されているコア技術だ。事故後、削除と編集合戦が行われ続けているWikipediaの飯塚被告のページには、そうした輝かしい経歴が詳細に書き込まれている。

Wikipediaに記載されない原子力委員会でのキャリア

 だが、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(原研)関係者はいぶかしむ。

「飯塚先生は原子力委員会の核融合会議の専門委員を務められていました。オイルショック以来、旧通産省(現・経済産業省)の技官のトップとしても、ひとりの研究者としても、日本のエネルギー安全保障に真摯に向き合わられていらっしゃいました。現在の新エネルギー・産業技術総合開発機構の設立にも携わっていらっしゃったはずです。なぜ、その部分がWikipediaに記載されていないんだろうと……。どなたが編集されているのかわかりませんが、我々の研究が良からぬものとでもいうのでしょうか」

 当サイトは1989年7月7日まで飯塚被告が日本原子力委員会核融合会議の専門委員であったことを当時の資料で確認した。飯塚被告が務めていた多数の専門委員の中の1つにすぎないとしても、東京電力福島第1原発事故が起こった日本の国情を考えれば、原子力委員会でのキャリアは特筆すべきものではないだろうか。

人類初の核融合実験炉計画

 飯塚被告が原子力委員会に在籍していたころ、日本政府は核融合に関する研究開発を本格化させ始めた。現在も原研や量子科学技術研究開発機構などが「ITER(イーター)」(国際熱核融合実験炉)計画を進めている。このイーターの端緒になったのが、ちょうど飯塚被告が現役通産官僚だった1985年、ジュネーブでの米ソ首脳会談だ。原子力関連事業者界隈では当時の原子力委での議論が、後のイーターへの日本参画に先鞭をつけたと言われている。

 イーターは、人類初の核融合実験炉を実現しようとする超大型国際プロジェクトだ。2025年ごろの運転開始を目指し、日本・欧州・米国・ロシア・韓国・中国・インドの「世界7極」により進められている。日本は青森県六ケ所村の施設などで核融合炉の素材研究や遠隔操作、計測・計量技術分野を担当し、計画を進めている。

 一般的に原子炉といわれている「核分裂炉」(東京電力福島第1原発の沸騰水型軽水炉、関西電力美浜原発の加圧水型軽水炉など)が重い原子であるウランやプルトニウムの原子核分裂反応を利用するのに対し、「核融合炉」は軽い原子である水素やヘリウムによる核融合反応を利用してエネルギーを発生させる。

 そこで最も重要な技術課題の1つが、発生する超高温のプラズマをどのように閉じ込めるのかということだった。現時点でもっとも実現可能性が高いと言われているトカマク型核融合炉は、超高温のプラズマを閉じこめる磁気閉じ込め方式の1つで、「円筒」で輪を形作った巨大なドーナツのような形状で知られる。

 全国紙科学担当記者は話す。

「もう30年前のことで、一連の計画に日本がどのような経緯で参画することになったのか覚えている記者はいません。しかし、実際問題としてイーターで日本の担当分野は飯塚さんの得意とする分野が多いのが気になります。一連の計画は、極めて機密性が高く、容易に触れられる話ではありません。なぜなら米軍やロシア軍などの核心技術がかなり使われているからです。

 当然、日本側の担当者もそれに触れた人物は他の技術者とは違った位置づけになると思いますよ。仮に任期がほんのわずかな期間であったとしても、1980年代当時の原子力委員会の議論の内容は現在まで、ほとんど非公開です。1回しか会議に出席していなくても機密情報に触れることは少なくなかったでしょう。日本での軽水炉開発や使用済み核燃料再処理計画などを定めた日米原子力協定の経緯や背景は機密情報の塊ですしね。それ以上なのではないでしょうか。

 飯塚さんは単なる日本の科学分野での功労者や企業経営者というだけではなく、我々が思っている以上に日本政府や国際的に重要人物なのかもしれません」

 事故発生以来、飯塚被告には「国にとって特別な人間なのではないのか」「そのために捜査に手心が加わったり、政府が特別に擁護したりしているのではないか」との疑惑が浮かんでは消えてきた。果たして何が事実なのだろうか。

 いずれにせよ法の下では、どれほどの政府要人であっても、平等に裁かれるのが法治国家のはずだ。司法の判断が注目される。

(文=編集部)

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