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近畿日本ツーリスト、経営危機…自己資本比率1%台、債務超過寸前、社員3割削減

文=編集部
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近畿ツーリスト HP」より

 KNT-CTホールディングスは傘下の近畿日本ツーリストの個人旅行店舗(全国で138店)を2022年3月末までに3分の1に減らす。団体向け旅行を担う店舗(同95店)も約70に集約する。全国にある近ツー地域各社は22年4月をメドに合併する。

 約7000人いる従業員は24年度末までに希望退職を募るなどして、約3分の2にする。希望退職は21年1月4~22日に募集。原則35歳以上の同社および近ツー地域各社の従業員が対象だ。22年度入社の新卒採用も取りやめる。役員報酬や従業員給与の減額、事務所面積の縮小、海外現地法人削減に取り組む。23年3月期に構造改革前に比べ200億円の経費のカットを見込む。

 大規模なリストラの背景にあるのは想定以上の旅行需要の落ち込みだ。新型コロナウイルス感染拡大の影響が直撃したのが20年1~3月期決算。渡航制限や外出自粛が世界各地に広がり、ツアーの中止が相次いだ。3月の旅行取扱額は前年同月比69%減と大幅に減少した。

 1~3月期は旅行業界は閑散期で赤字になりやすい。売上高は前年同期比32%減の615億円、営業損益は57億円の赤字(前年同期は4億円の赤字)、最終損益は100億円の赤字(同13億円の赤字)と急激に悪化した。4~6月期はより厳しかった。5月末まで国内のツアーをすべて取りやめた。売上高は33億円と前年同期比で97%減った。営業損益は142億円の赤字(同27億円の黒字)。社員の一時帰休を実施し、雇用調整助成金44億円を営業外収益に計上したことで、最終損益は98億円の赤字(同16億円の黒字)。

 6月から営業を再開したが旅行客は戻らなかった。7~9月期の売上高は125億円と前年同期比88%減。営業損益は89億円の赤字(同6億円の黒字)、最終損益は70億円の赤字(同3億円の黒字)と低空飛行が続いた。

 21年3月上半期(4~9月期)の売上高は前年同期比93%減の158億円に激減。営業損益は231億円の赤字(同33億円の黒字)、最終損益は168億円の赤字(同20億円の黒字)と惨憺たる結果となった。4~9月の取扱額は、国内旅行が前年同期の1534億円から137億円へ91%減、海外旅行も849億円から14億円へ98%減。131億円あった外国人旅行(インバウント)はゼロだった。

 これまで未定としていた21年3月期の通期予想を公表した。売上高は前期比64%減の1400億円、最終損益は170億円の赤字(前期は74億円の赤字)を見込む。配当はゼロ(無配)とした。希望退職や店舗の削減などの構造改革に伴う特別損失は予想に含まれていない。赤字額は、さらに拡大する懸念が強い。

東京五輪に照準を合わせた

 KNT-CTは13年1月、近畿日本ツーリストとクラブツーリズムが経営統合して発足した。両社はもともと近畿日本鉄道グループの同根会社。近ツーは国内旅行「メイト」、海外旅行「ホリデイ」など個人向け旅行商品に加え、企業や学校などの団体旅行も扱う総合旅行会社だ。一方、クラブツーリズムは04年、近ツーから分離独立した。シニア世代にターゲットを絞った会員組織型の旅行会社で会員向け雑誌「旅の友」で集客する。

 近ツーは01年1月、2年後をメドに日本旅行と合併すると発表したが、米国同時多発テロなどから業績が悪化し、1年後に撤回した。04年、クラブツーリズムをファンド出資の受け皿会社に250億円で売却して、当時抱えていた繰越損失118億円を一掃した。しかし、リーマンショック後の旅行需要の落ち込みもあり、07年度から3期連続で最終赤字を記録した。

 12年に入り海外旅行は円高を受けて順調に推移。国内旅行も11年の東日本大震災後のレジャー自粛といった悪影響が払拭され、回復した。これを機に、近ツーはクラブツーリズムを取り込むことにした。近ツーは12年1~9月期まで決算短信に「継続企業の前提に関する重要事象等」を記載していた。業績不振が続き企業の継続性に不確実さがある場合に、決算短信に記載されるリスク情報である。

 クラブツーリズムとの統合によって営業利益が上乗せされ、「重要事象」の記載は消えた。近ツーの個人旅行部門は赤字が続いていたが、クラブツーリズムのノウハウを活用したテーマ性の高い旅行を増やすことで採算は改善した。その後、インバウンドブームの追い風に乗り、旅行需要は回復。団体旅行ではスポーツツーリズムに力を入れ、東京五輪に照準を定めた。

 KNT-CT、JTB、東武トップツアーズの3社は東京五輪観戦ツアーを催行できる指定旅行会社となった。海外からの大会参加者や観戦者のツアーで弾みをつけようと、団体旅行の受託に力を入れてきた。東京五輪を起爆剤として、06年度以来の悲願としてきた復配の達成を狙った。だが、コロナ禍で20年の東京五輪の開催は吹き飛び、復配は一瞬にして無と帰した。

親会社の近鉄グループHDが救済するしか手はない?

 旅行界は米国同時多発テロ、リーマンショックなど世界経済の激変に翻弄されてきたが、今年の新型コロナの衝撃は想定をはるかに超え、壊滅的打撃をもたらした。KNT-CTの9月末の自己資本は12億円に減少。自己資本比率は20年3月期の20.3%から、1ケタの1.4%に低下した。21年3月期に債務超過に転落するのは避けられないとみられている。

 米田昭正社長は債務超過の可能性や資本増強が必要なことは「十分に認識し、手を打っている。ただ相手先がある話なので」と慎重な言い回しをしている。株式市場では発行済み株式の53.54%(20年9月末時点)を保有する親会社・近鉄グループホールディングスが救済するしかないと見ている。

 NTTはNTTドコモをTOB(株式公開買い付け)により完全子会社にした。伊藤忠商事もTOBを実施してファミリーマートを完全子会社にした。「近鉄グループHDもKNT-CTをTOBで完全子会社にするしかない」というのが、市場の一致した見方だ。

(文=編集部)

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