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山口FG、アイフルとの新銀行構想が波紋…低所得者の死亡保険を返済に充てる

文=編集部
山口フィナンシャルグループ
山口銀行本店(「Wikipedia」より)

 山口フィナンシャルグループ(FG、山口県下関市、椋梨敬介社長兼グループCEO)は12月24日、臨時株主総会を開催し、吉村猛前会長兼グループCEOの取締役解任を求める。10月の臨時取締役会で、「吉村氏は取締役として資質を有していない」と判断。辞任を求める勧告を決議した。だが、吉村氏が辞任を拒否したため、臨時株主総会を開いて取締役解任を機関決定する。

 吉村氏に代わる取締役には曽我徳将専務執行役員を就ける方針で、曽我氏の選任議案も提出する。吉村氏が消費者金融大手アイフルと進めていた新銀行設立構想は「当社のビジネスモデルと整合しない」として、「検討を中止する」と発表している。山口FGは山口銀行(山口県下関市)、もみじ銀行(広島県広島市)、北九州銀行(福岡県北九州市)を傘下に持つ金融グループ。3行を合算した預金量(21年3月期)は10兆115億円で地銀上位である。

「守旧派の社内取締役が主導したクーデター」と吉村前会長

 新銀行設立の進め方をめぐって「社内の合意を得ないまま、独断専行した」と批判され、会長兼グループCEOを解任された吉村氏は11月29日、東京都内で記者会見を開き、「意見の聴取もなく、問答無用の闇討ち解任であり、違法なクーデターだ」と述べ、中立的な第三者委員会による再調査を求めた。6月25日の株主総会直後の取締役会で解任が決まって以降、吉村氏が公の場で説明するのは初めてだ。

 吉村氏はアイフルとの共同出資による新銀行構想を取締役会で議論せず独断で進めたとされる点について、「権限逸脱とされた新銀行構想は、まだ交渉の段階であり、執行権限の範囲内。検討が完了次第、取締役会で議論を行うのは当然。独断専行ではまったくない」と反論。新銀行構想を急いだ理由については、「個人ローンが主力の新銀行は、グループの稼ぐ力を上げるために必要だった」と強調した。

 同氏はさらに、「CEOの権限逸脱」と認定した社内調査本部の報告書について、「解任に賛同した取締役が本部長を務めた部署の報告書であり、結論ありきで中立性、公平性を欠いている」と批判。解任については「守旧派の社内取締役が主導したクーデターだ」と断言した。会見には、「社外に機密情報を漏らした」として10月に解任された渡部伸一元執行役員が同席。渡部氏は、「6月の吉村氏の解任に先立ち、一部の取締役が吉村氏の解任を働きかけるメールのやり取りをしていた」と暴露した。「この件を吉村氏や社外に伝えたことが、機密情報の漏洩とされた」と証言し、「公益通報者に準じて取り扱うべきで(解任は)不当だ」とした。吉村氏は「会長などの地位に戻ることが目的ではなく、株主らに正しい情報を伝えたい」とし、「第三者委員会で改めて独断専行と結論づけられた場合には、責任を取りたい」と語った。

 臨時株主総会を前に、「不利な情勢」(関係者)と見られている吉村氏が、あえて東京で記者会見を開いたことになる。「窮鼠猫を嚙むだ」(ライバルの地銀グループ首脳)といった冷ややかな見方もある。

アイフルとの新銀行構想では外資系経営コンサルタントをCEOに招く予定だった

 今年4月、取締役や幹部行員に届いた一通の内部告発が内紛に火をつけた。吉村氏の個人的なスキャンダルのほか、外資系金融コンサル会社オリバーワイマングループ(東京都千代田区)日本代表パートナーの富樫直記氏との癒着を指摘していた。

 富樫氏は日本銀行出身で、そのキャリアを生かし、多くの地銀を顧客にもつコンサルタントだ。かんぽ生命保険で不適切な保険販売が明るみに出た際、「金融商品の販売組織を郵便局という最小単位に切り分け、郵便局の運営管理を地域の金融のプロに任せては」と提言し、一部で関心を集めた。

「怪文書にしては内容が詳しすぎる。内部の支店長以上の人間が書いたものだ」と判断した社外取締役が調査チームを立ち上げた。吉村氏が“クーデター派”とみなした福田進取締役(監査等委員)が本部長を務めた社内調査委員会がまとめた調査報告書は、吉村氏に対する7つの告発事案を列挙し、「取締役辞任」を勧告した。富樫氏のコンサル会社への5億円の支出も確認された。

 吉村氏はアイフルとの共同出資で個人向けのリテール専門銀行の設立を計画。富樫氏をCEOに迎え、その親族を含むコンサル会社の社員数人を雇用する人事案が計画には盛り込まれていたという。さらに富樫氏の報酬は1億円以上と決められていたとされる。「この報酬は法外すぎる。ふざけた提案だ」と山口FGの取締役は激しく反発。これが吉村氏の会長解任の引き金となった。

 吉村氏が企画した「全国区の個人金融専門の銀行」は「格差社会におけるマスリテール層の生活改善のための金融を展開する」とうたっていた。顧客に毎月10万円を貸し出し、返済は貸出金が上限に達するまで利息のみにとどめ、顧客が死亡したら死亡保険を返済に充てるというもの。低所得者を対象に死亡保険で返済させるというビジネスモデルだ。

 死亡保険で貸し金を回収するのは、かつてのサラ金を思わせるような仕組みで、「金融庁が『銀行がやることではない』と不快感を示した」と山口FGの関係者は証言する。山口FGは銀行としての社会的責任が問われる事態となっている。

 第一生命保険の巨額詐取事件との関連はあったのか。怪文書が指摘した、数々の疑惑について、山口FGの経営陣は記者会見を開き、きちんと説明する責務がある。

(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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