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垣田達哉「もうダマされない」

中国産アサリ「農薬」基準値超え横行、冷凍食品・加工食品も…内臓に悪影響

文=垣田達哉/消費者問題研究所代表
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「gettyimages」より

 中国産アサリの偽装が大問題となっている。安い中国産を高い国産と偽って、不当な利益を得た偽装集団の行為は許されるものではない。

 では、中国産と表示をしてそれなりの安い価格で販売されれば何も問題はないかというと、そうではない。一般の消費者には、なんとなく中国産に対する不安を抱く人が多いが、実はその「なんとなく」が意外と当たっている。あまり報道されていない(特にテレビではほぼない)が、中国産アサリには偽装だけでなく安全上でも不安要素がある。

どうして中国産アサリからだけ農薬が検出されるのか

 中国産アサリからは、ときどきプロメトリンという農薬が基準値を超え検出されている。プロメトリンは除草剤なのに、どうしてアサリから検出されるのだろうか。厚労省は、輸入検疫での違反事例を毎年公表しているが、違反の原因が推測できるものについては内容を記載している。中国産アサリでは、10年以上前からプロメトリンが検出されているが、2012年以降を調べてみると、原因には次のような記載がある。

「上流の農地で使用されたプロメトリンが海水中に流れ込んだため」(12年・活きアサリ)

「近隣のナマコ養殖所で散布された除草剤による汚染」(14、16年・活きアサリ)

「隣接したナマコ養殖所からの汚染」(14年・活きアサリ)

「近隣農場において使用された除草剤による汚染」(14年・冷凍アサリ)

「近隣養殖場において使用された除草剤による汚染」(15年・活きアサリ)

「現地向け製品の混入」(16年・冷凍むき身アサリ)

「採捕海域の管理不徹底」(16年・活きアサリ)

「汚染された原料の混入」(17年・活きアサリ)

「隣接養殖場で除草剤使用」(17年・活きアサリ)

「雨による農薬の混入」(18年・活きアサリ)

「原因不明」(19年・アサリ酒蒸し)

「生育環境由来」(20年・蒸しアサリむき身)

 21年にもプロメトリンの違反が5件あるが、今のところ原因はわかっていない。プロメトリンは、イネ科の植物によく使われる除草剤で、水稲、麦、雑穀、野菜、豆類などに使用されるが、中国では池の藻の除草にも使われることがあるようだ。水に溶けやすいので、アサリの漁場に流れ込みアサリに蓄積されると考えられるが、韓国産アサリからは少なくとも最近10年間は検出されていない。もちろん、国産アサリから検出されることもない。

 中国産二枚貝では、アサリほど頻繁ではないがハマグリからも検出されることがある。いずれにしても中国固有の違反で、しかも毎年違反が繰り返されているということは、近隣でかなりの量の除草剤が継続的に使用されているのだろう。生鮮のアサリだけでなく、冷凍食品でも加工食品でも検出されるので、厚労省も毎年中国から輸入されるアサリについては、冷凍品も加工品も必ずプロメトリンの検査をしている。

 中国産アサリの多くは、飲食店や惣菜等で使用されることが多い。みそ汁、吸い物、酒蒸し、深川めし、ボンゴレ、ピザ、クラムチャウダー等、和・洋・中で非常に重宝される食材だ。しかし、中国産アサリは加熱しても農薬が残留していることがあるのだ。

 プロメトリンは、腎臓、肝臓、血液等への悪影響が懸念されている農薬だ。農薬が含まれたアサリを食べたいと思う消費者はいないだろう。

A型肝炎ウイルス感染の不安

 中国産アサリからはA型肝炎ウイルスが検出されることがある。17年、長野県で発生したA型肝炎の食中毒では、飲食店で提供されたアサリ炒めを食べていたため、食材である中国産の殻付きアサリ(患者らに提供されたものとは賞味期限は同じだが別日に納品されたもの)を検査したところ、患者らと相同性が高い配列のA型肝炎ウイルス遺伝子が検出されている。

 翌18年、宮崎県で発生したA型肝炎ウイルス食中毒でも、患者が喫食した同じロットの加熱調理用の中国産殻付きアサリから、A型肝炎ウイルスが検出されている。いずれも中国産アサリが原因とは断定されていないが、厚労省は「二枚貝は十分に加熱すること」「交差汚染を防ぐために、よく手洗いをすること」など、二枚貝の取扱いについて注意喚起をしている。

 A型肝炎ウイルス感染症は、戦後は全国規模で蔓延していたが、衛生管理が整備されていくに従い激減した。しかし、2000年頃から輸入食品が急増することにより、散発的な発生が見られるようになっている。A型肝炎ウイルスは潜伏期間も1カ月程度と長く、食中毒の主な原因は二枚貝とされている。

 実は昨年も、A型肝炎ウイルスを警戒しなければならない事案があった。「韓国でA型肝炎ウイルスが検出された中国産貝類加工品の回収が行われている」という情報があり、厚労省は6月に「回収対象企業の製品が輸入届出された場合には積み戻し等を行う措置を講じるように」という通知を出している。

 農薬のプロメトリンは加熱しても残留する可能性があるが、A型肝炎ウイルスも不十分な加熱では、食中毒予防の効果がない。幸いにも、ここ数年は中国産貝類によるA型肝炎ウイルス食中毒は発生していないが、中国産貝類については、生鮮食品だけでなく加工食品も心配の種は尽きない。

(文=垣田達哉/消費者問題研究所代表)

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

1953年岐阜市生まれ。77年慶應義塾大学商学部卒業。食品問題のプロフェッショナル。放射能汚染、中国食品、O157、鳥インフルエンザ問題などの食の安全や、食育、食品表示問題の第一人者として、テレビ、新聞、雑誌、講演などで活躍する。『ビートたけしのTVタックル』『世界一受けたい授業』『クローズアップ現代』など、テレビでもおなじみの食の安全の探求者。新刊『面白いほどよくわかる「食品表示」』(商業界)、『選ぶならこっち!』(WAVE出版)、『買ってはいけない4~7』(金曜日)など著書多数。

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