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鳥貴族、280円→360円へ値上がり…プロが「価格に見合う価値なし」と評価する理由

文=Business Journal編集部、協力=重盛高雄/フードアナリスト
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鳥貴族の焼き鳥メニュー

 焼き鳥店チェーン「鳥貴族」は5月1日、現行の全品350円均一(税込、以下同)から全品360円均一に値上げする。鳥貴族といえば、かつては全品280円均一というリーズナブルな価格設定を武器に店舗数を一気に拡大させたが、たび重なる値上げを受け、SNS上では「貴族しか行けない」「それでも安い」などと議論を呼んでいるようだ。

 人気ジャニーズタレント・大倉忠義(関ジャニ∞)の父親としても知られる大倉忠司氏が1985年に創業した鳥貴族は、89年から280円均一を維持していたが、2017年に298円へ値上げを実施。実に28年ぶりの価格改定が話題となり、同年には店舗数が600店を超えたものの、18年頃から徐々に客数が減少し、19年7月期決算で上場来初の赤字(純損益)に陥った。その後も値上げが行われ昨年4月からは350円均一となっていたが、今回さらに10円の値上げによって360円均一となる。

 鳥貴族のメニューをみてみると、焼き鳥メニューは基本的には2本で一皿となっており、「もちもちチーズ焼」や「牛串焼」など鶏肉以外のものもラインナップ。このほか、「ふんわり山芋の鉄板焼」や「カマンベールコロッケ」「ポテトフライ」など焼き鳥以外のメニューも。なかでも「とり釜飯」やお替わり無料の「キャベツ盛」は人気の定番メニューとなっており、「チョコパフェ -チュロ添え-」「カタラーナアイス」といったスイーツもあり、これらがすべて350円均一で提供されている。

 価格ばかりが注目される鳥貴族だが、品質へのこだわりは強い。使用される鶏肉や野菜は国産品で、タレは本社工場で丸どりや野菜、果物をブレンドして一日かけて煮込み手づくりされている。

<鶏は、おおよそ50日前後飼育された「若鶏(プロイラー)」を使用しています。健康な若鶏を育てるために、良質な水(水質検査を実施)と、トウモロコシ・大豆を多く含んだ配合飼料を給餌して病気を予防し、安心安全の若鶏を調達しています>(同社HPより)

<鳥貴族では約30道府県の養鶏場産地と約40の鶏肉生産工場より鶏肉の供給を行い、安定供給を頂いています。お取引のある鶏肉生産工場より、産地証明書と細菌検査を定期的に実施して頂くことで鶏肉の品質確認を行っています。また、年間を通じて鶏肉生産工場の定期的な衛生検査を行い、鳥貴族で定めている50項目の品質チェックをします>(同)

希少部位も味付煮玉子も同じ価格

 そんな鳥貴族の業績は手探りの状態が続いている。19年~21年7月期の最終損益は3期連続の赤字となり、22年7月期は黒字に転換したものの、営業損益ベースでは依然として赤字が続いている。それでも今期中は店舗数をさらに増やす見込みだ。

「原材料価格やエネルギー価格が高騰している現状を踏まえると、鳥貴族の価格は『高くはない』とはいえ、相当な企業努力をしている様子がうかがえる。仕入れ業者との取引条件など複雑な要因がからむのに加え、原価が高いメニューを割安な価格で提供するために全体で相殺している面もあると考えられるので、一概にはいえないが、たとえば希少部位とされる『ちからこぶ』と、『塩だれキューリ』『味付煮玉子』や『ウーロン茶』などのソフトドリンクをすべて一律350円で提供するということに、無理が生じてきているのかもしれない。焼き鳥の定番メニューや前菜的なメニューはもう少し低めの価格を設定して客を呼び寄せるトリガーに据える一方、希少部位や『カマンベールコロッケ』のように少し高くても注文してくれるファンがついている商品は高めの価格設定にすることで、収益力と顧客の納得感を高められる可能性もあるのでは」(外食チェーン関係者)

 今回の値上げを受けて、SNS上では次のようにさまざまな反応が寄せられ、議論を呼んでいる。

<なんだか割高感>

<鳥貴族の料理に360円出せる人は貴族>

<貴族焼以外ちっちゃいからな、「これ一本180円弱なの」?ってなるよ>

<コーラを飲んでも缶で出てきて360円だから焼鳥4本とジュースで1080円、高いね>

<コンビニの焼き鳥でいい>

<一気に100円上げて、質と量増やしてくれ>

<それでも安い ¥390までは気にしない>

<そろそろ一律を止めるときだろう>

 鳥貴族の価格設定は妥当といえるのか。フードアナリストの重盛高雄氏に解説してもらう。

「お客様が笑顔になれる接客」が見当たらない

 3月某日の20時、東京都内のとある店舗の順番待ちシートの前に立っていたが、店員から声をかけられることはなかった。別の日の18時に訪問した別の店舗では、店内に入っても店員から声をかけられず、レジ付近に近づいてようやく客待ちシートの記入にこぎつけたが、店員から「レジ付近は場所がないので、1階で待っていてほしい」と案内された。ほとんどの客はエレベーターで一階に降りると、ほかの店へ足早に移動していった。私は一人だったため入り口で待っていると、30分ほど経過した頃に店員から「20時までならお席を用意できます」と案内された。

 19時に10名ほどのグループ客が来店し、空いている席に案内されていた。1時間以上前から予約客の座席を空席のまま確保する一方で、他の客には満席だと案内するオペレーションには疑問を感じた。客の多さにオペレーションが追い付いていないのか、もしくはコロナ感染予防の対策なのかはわからないが、店員たちは無口で仕事をしていた。

 今回訪問した2店舗では、「お客様が笑顔になれる接客」は影を潜めており、退店する時に感じた違和感は小さくはなかった。客が店を選ぶ際の基準は価格が大きな要素であることは間違いないが、価格が高くとも相応の料理とサービスが提供されるのであれば、その店舗を訪問する。

 鳥貴族の現状のサービスレベルを前提とすれば、価格相応の価値を見いだすことはできず、訪問する価値はないと評価せざるを得ない。

(文=Business Journal編集部、協力=重盛高雄/フードアナリスト)

重盛高雄/フードアナリスト

重盛高雄/フードアナリスト

ファストフード、外食産業に詳しいフードアナリストとしてニュース番組、雑誌等に出演多数。2017年はThe Economist誌(英国)に日本のファストフードに詳しいフードアナリストとしてインタビューを受ける。他にもBSスカパー「モノクラーベ」にて王将対決、牛丼チェーン対決にご意見番として出演。最近はファストフードを中心にwebニュース媒体において経営・ビジネスの観点からコラムの執筆を行っている。
フードアナリスト・プロモーション株式会社 重盛高雄プロフィール

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