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ヤクルト、堀長期政権が窮地に。前門のダノン、後門の販社

ヤクルト買収でお家騒動! 販売会社が仏ダノンと組む!?

文=編集部
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post_1027.jpgこのCM、ネットだと賛否両論ですがぼくは好きです。
(「ヤクルトHP」より)
 乳酸菌飲料最大手のヤクルト本社がフランスの世界的な食品会社ダノングループに呑み込まれようとしている。ひとまず、M&A(合併・買収)の強攻策は先送りされた。

 ダノンは現在、ヤクルト株の20.0%を保有している筆頭株主。出資比率の引き上げ交渉は11月15日が期限だったが、出資比率や業務提携の内容について折り合いがつかなかった。出資比率を引き上げたいダノンと、経営の独立性を主張するヤクルトとの隔たりは大きく、交渉は延長戦に突入している。

 2004年3月に合意した内容は、向こう5年間は出資比率を20%以上には引き上げない。そのさらに後の5年間も、実質的な経営権を握るほどには出資比率を引き上げない、というものだった。07年5月に提携を見直し、買い増し制限条項を12年5月まで延長した。36%を超える買い増しについては17年まで禁止することで合意した。「20%は超えない」との契約が今年5月15日に切れたため交渉のテーブルに就いていた。

 これでダノンは、ヤクルト株式を実質的な経営権を握らないくらいの数までは買い増せることになった。ダノンは出資比率を経営の重要議案を否決できる35%まで引き上げたい意向で、新たな出資・提携関係について協議してきた。

 契約によれば5月16日から6カ月以内に合意に至らなければ、契約を終了できることになっている。数カ月前にはタイムリミットを迎えたわけだが、とりあえず「協議を継続する」ことになった。ヤクルト本社の川端美博副社長は11月9日の決算会見で、「時間をかけた話し合いをすることで合意している」と言うにとどめ、新たな交渉の期限については明らかにしなかった。

 だが常識的に見て、いつまでも交渉を続けることはできないだろう。交渉が決裂すれば「ダノンはヤクルトの株式公開買い付け(TOB)に踏み切ることになる」との観測が証券市場で台頭している。

 そもそも、ダノンを株主に呼び込んだのは、ヤクルトの最高実力者の堀澄也現会長(77)だ。96年4月に社長に就任。初の本社入社組の経営トップとなった。以来、現在に至るまで17年間、社長・会長として長期政権を続けている。

 堀社長がピンチに立たされたのは就任2年後の98年。資金運用責任者の熊谷直樹副社長(当時、脱税などで有罪)が、90年代の財テクの失敗を埋め合わせようとして、投機的なデリバティブ(金融派生商品)に手を出し、98年3月期決算で1000億円以上の損失を出したからだ。

 堀社長らが株主代表訴訟を起こされたほか、詐欺商品である私募債「プリンストン債」を使った粉飾決算も発覚。会社自体が起訴され、株式も管理銘柄入りするなど不祥事が相次いだ。

 これらの事件で桑原潤会長(当時)と熊谷副社長は引責辞任したが、堀社長はこの危機を乗り切った。窮地に陥った堀社長が救済を求めたのがダノンだった。ダノンを後ろ盾にして社長の地位を保った。

 堀氏からの出資要請は、ダノンにとっては棚からボタモチだった。00年4月、ダノンは5%のヤクルト株式を取得。堀氏がさらなる買い増しを求めたため、ダノンは03年4月に20%まで株式を買い増した。そして、04年3月に「今後5年間、ダノンは20%以上の株式は買い増さない」とするスタンドスティル(現状維持)契約を結んだ。

 堀氏が怯えたのはもともと同社のオーナー的存在の松園家の影響力である。ヤクルトの「天皇」と呼ばれた元会長・松園直已氏(故人)の資産管理会社・松尚(神奈川県藤沢市、現在はヤクルト本社の第2位の株主)がヤクルト株の6.5%を保有する筆頭株主だった。松園氏はヤクルトレディによる宅配システムを確立、株式上場を果たし、21年間業界でトップの座にあった。94年12月に亡くなり、双子の兄、直已氏が松尚を引き継いだ。堀社長は、松園家の力を封じ込める狙いで、ダノンに20%の株式を保有してもらったのである。

 堀体制で、本社の発言力は強まった。松園時代には販売会社(以下、販社)のオーナーたちが取締役会を牛耳っていたが、堀時代になると販社出身の取締役はヤクルト本社からいなくなった。

 追い落としの口実を与えないために堀氏は、好調な業績を維持する必要に迫られた。そのために商品の販社への卸値を上げて、利益を本社が吸い上げる体制に変えた。必然的にヤクルトレディを擁する販社の利幅が薄くなり、経営が苦しくなった。これで販社の不満が一気に高まった。

 販社が問題にしたのが、果実加工品卸会社「サンヨーフーズ」と堀氏の癒着疑惑である。堀時代に入って、サンヨーフーズとの取引が拡大した。年商が100億円を超えるサンヨーフーズは「堀氏が大きくしたようなもの」との批判の声が挙がる。

 販社の窮状を理解した松尚の直已氏はダノンに接近。堀体制の変革を働きかけた。その一方で、直已氏は、販社にはヤクルト株式を持ち続けるよう説得した。だが、11年12月、直已氏が他界して、販社のタガが外れた。

 ダノンは、敵対的TOBが日本にはなじまないとして、あくまで交渉によって株式を買い増す方針のようだが、交渉が決裂したときはどうなるのか。堀長期政権を打倒するため、販社がダノンと組む、といった前代未聞のTOBが想定されているのである。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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