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住友化学、海外事業拡大で膨らむ負債…新中期経営計画に市場から冷ややかな視線

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住友化学、海外事業拡大で膨らむ負債…新中期経営計画に市場から冷ややかな視線の画像1住友化学東京本社が所在する
東京住友ツインビル東館
(「Wikipedia」より)
 住友化学がこの2月12日に発表した新中期経営計画(新中計/2013〜15年度)に、証券アナリストの間で「病人がフルマラソンをするよう」との見方が広がっている。

●事業拡大より借金返済が先

 同社が発表した新中計の目標設定は15年度(16年3月期)に売上高2兆4000億円(12年度見込み比2.1%増)、営業利益1400億円(同2.8倍)、経常利益1500億円(同3.3倍)という大変意欲的なもの。

 だが、有利子負債は1兆700億円(13年3月期見通し)まで膨らんでいるのに対し、12年3月期第3四半期の自己資本は4360億円。つまり、経営安全性を示すD/Eレシオ(自己資本に対する有利子負債の割合)は前期決算時点で2.5倍と、かなり厳しい数値。D/Eレシオは過去5年間の通期でも上昇し続けており、化学大手の中で特に財務体質が脆弱と指摘される理由にもなっている。

 したがって「新中計でまずなすべきは、病気の治療。事業拡大より借金返済のほうが先だろう」(経済ジャーナリスト)というわけだ。

●海外事業拡大で財務体質に傷

 同社は米倉弘昌経団連会長をトップにいただく、国内2位の総合化学メーカー。米倉会長がTPP参加をいち早く表明、今もその旗振りに注力していることからもうかがえるように、総合化学大手の中でのグローバル化の急先鋒でもある。そのグローバル化が同社の財務体質を脆弱化させる原因にもなっている。

 同社が総合化学大手のグローバル化の盟主になったのは、2000年以降のこと。石油化学、情報電子、医薬・農薬と主力事業の大半を海外で拡大、12年3月期の海外売上高比率は52%に達している。

 グローバル化が顕著になったのは、05年に参加した「ラービグ計画」以降。

 ラービグ計画とは、サウジアラビアの国営石油会社「サウジ・アラムコ」と同社が合弁で「ペトロラービグ社」を設立し、世界最大級の石油化学コンビナートを建設する計画(建設総額99億ドル:約1兆円)のこと。このため、住友化学は合弁会社へ37.5%を出資、第1期計画(06年建設着工)に1660億円を投資した。

 以降、07年に英国の有機ELメーカー買収、09年に米国の医薬品メーカー買収、10年にシンガポールで低燃費タイヤ用ゴム工場建設と、現在まで主なものだけでも10件以上の海外事業拡大を行っている。

 その結果、01年度頃は5000億円程度だった有利子負債は08年度(09年3月期)に約8000億円に膨らみ、D/Eレシオも1.0倍の危険水域に到達した。その後も積極的な海外投資により有利子負債は膨らみ続け、D/Eレシオも上昇の一途をたどり、前述の有利子負債1兆700億円、D/Eレシオ2.5倍の「ボロボロ財務体質」(証券アナリスト)になっている。

 今年2月1日、同社は12年度(13年3月期)通期連結業績予想を下方修正した。

 それによると、営業利益は当初予想(昨年5月)の800億円から500億円へと縮小、経常利益は同870億円から450億円へと縮小、当期純利益は500億円の黒字から500億円の赤字へ転落。この間、同社は何度も業績予想を下方修正している。

 売上高は過去10年間、積極的なグローバル展開で倍近くに拡大したが、収益はほとんど伸びていない。そして、従来の中期経営計画で掲げた12年度の経常利益目標2200億円ともかけ離れた着地となる。

 同社は、度重なる業績予想の下方修正の原因として「欧州経済の停滞、新興国の経済成長減速、石油化学の需要低迷」を挙げ、外部環境によるものだとしている。

 前出の証券アナリストは「この『こじつけ理由』自体が同社の見通しの甘さというか、グローバル市場に対する無知を示すもの。その最たるものがラービグ計画」と指摘している。

●新中計の論理矛盾

 ラービグ計画は同社のグローバル化の象徴であり、かつ社運を賭して取り組んでいる海外事業。

BusinessJournal編集部

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