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「ダイヤモンド」vs「東洋経済」! 経済誌双璧比べ読み(4月第4週)

異次元金融緩和の下、トヨタ・ホンダは快調、日産・スズキは苦境…明暗の分かれ目とは?

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北米で人気のスバルが見せるのは
日本車魂?(「富士重工 HP」より)
毎日の仕事に忙殺されて雑誌を読む間もないビジネスマン必読! 2大週刊経済誌「週刊東洋経済」(東洋経済新報社)と「週刊ダイヤモンド」(ダイヤモンド社)の中から、今回は「東洋経済」の特集をピックアップし、最新の経済動向を紹介します。

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「週刊東洋経済 4/20号」の特集は『クルマは日本を救えるか』だ。「日銀『異次元緩和』の下、円相場は一気に1ドル=100円を試すところまできた。昨年秋まで超円高に苦しめられてきた日本の自動車メーカーの業績が、一段と上向くとの期待が強まっている。2013年3月期の業績は、盟主・トヨタ自動車が連結営業利益1兆円の大台を回復したほか、各社とも大幅な増益になった模様だ。円安がさらに進めば、14年3月期もさらに業績拡大が続きそうだ」。北米市場も回復、日本経済のけん引役としての期待がかかる自動車業界に迫った特集だ。

 特集は大きく3つに分かれている。1つ目は単独黒字化に北米市場復活のトヨタの『<トヨタ> 再拡大に向けた社内革命 新規投資3年凍結の真意』、2つ目は海外拠点を自立化し新興国への成長に向けた反転攻勢の第一歩に乗り出したホンダの『<ホンダ>埼玉・新工場から上がる 新興国攻略への狼煙』、3つ目は北米市場で販売が絶好調、7割が輸出という富士重工業の『<スバル> 車種も店舗も極限まで絞る オンリーワンの成長戦略』。そして、最後は国内市場の縮小で海外展開が止まらないなか、『専門家に聞く10年後の自動車業界 新王者は誰か』で特集はまとめられている。

 今回、知っておきたいのは、北米市場の回復でトヨタ、ホンダ、富士重工が好調だということだ。トヨタは世界販売1000万台に向けて、「リボーン(再生)」をテーマに北米市場で攻勢に打って出ようとしている。一方で、国内生産は「技術革新と技能伝承のために」300万台を確保している。ホンダは最新鋭の埼玉・寄居工場で小型車「フィット」を生産。寄居工場の生産能力は年間25万台で、ほぼ全量が国内市場向けに振り向けられる。月間2万台強のフィットを日本で売りさばく計画だ。

 また、14年春よりコストの安いメキシコにも新工場を建設し、北米市場に投入する計画だ。「新型フィットシリーズは、派生車種のSUV、セダンを含め全3モデルを全世界で一気に売り出す計画。最終的に全世界で180万台の生産を予定しており、ホンダでは、寄居に導入した生産技術をこれから立ち上がる世界の小型車工場・ラインへ、水平展開していく」(東洋経済オンライン『ホンダが次期「フィット」に込める自信 最新鋭の寄居工場で生産、採算性を大幅向上』)。

「これまでの富士重工の歴史の中で最も忙しいかもしれない」と社員がうれしい悲鳴をあげるのは、富士重工(ブランドは「スバル」)だ。12年には「世界販売台数は過去最高となる70.7万台(前年比6.1%増)を達成したほどだ。

 スバル車の特徴は「日系自動車メーカーで唯一のノウハウを持つ水平対向エンジンと、定評のある4輪駆動技術だ。通常のエンジンはシリンダーと呼ばれる機構が原則として縦や斜め方向に配置されているが、水平対向エンジンはその名のとおり横方向のシリンダーが配置されている。水平対向にするメリットは低重心化が可能になることだ。重心が低ければ車の走りが安定する。加えて、スバルの4輪駆動は雪道やダートなど悪路の走破性が高い」。12年2月には軽自動車の開発・生産から撤退したことで、絞る経営を行っている(東洋経済オンライン『スバルのHV、燃費以上に求めたもの 水平対向エンジンと4WDの独自性がキモ』)。

 これだけ業界が北米市場の回復で潤うとなれば日本経済にも効果が大きそうだ。

 しかし、気になるニュースもある。日産自動車、三菱自動車、スズキの惨憺たる現状だ。

 たとえば、日産自動車は経営不振の仏ルノー再建をめぐってフランス政府の圧力が強まり、ルノーが重荷となる日産社内からは長期政権となったカルロス・ゴーン社長への不満が漏れてくる。東洋経済オンラインでも『日産の誤算、裏目に出た強気計画 中国、日本、米国で精彩欠く』といった記事がある。

 また、国内販売で苦戦が続く三菱自動車も3月27日、1月に発売したプラグインハイブリッド車「アウトランダーPHEV」のリチウムイオン電池の一部が、熱で溶ける不具合が発生したことを発表した。電池の製造元はリチウムエナジージャパン。同社は電池大手のGSユアサの子会社で三菱商事、三菱自も出資する合弁会社である。GSユアサにとっては、B787に続くトラブルとなっている(東洋経済オンライン『三菱自のヒット車が不具合、復活また遠のく 久々のヒット車の電池が溶け、国内販売に痛撃』)、(東洋経済オンライン『三菱エコカーでも不具合、GSユアサの失墜 B787に続き、リチウムイオン電池でトラブル』)。

 軽自動車のシェアが30%を割り込んだスズキも頭が痛い(東洋経済オンライン『劣勢のスズキ、女性目線でダイハツ追撃 苦戦が続く軽ワゴンを刷新し、挽回を狙う』)。

 しかし、今回の特集『クルマは日本を救えるか』では日産自動車、三菱自動車、スズキという企業はほとんど紹介されていないのだ。冷静な検証記事はインターネットの東洋経済オンラインでは読むことができるのだが、本誌になると、ほとんどイケイケの記事ばかり。記事を読むとアベノミクス同様に日本経済はこれから順風満帆だという楽観論になってしまう。これでは業界特集にしては一面的すぎるのではないか。
(文=松井克明/CFP)

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