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日本板硝子、グローバル化失敗の舞台裏と代償 相次ぐ事業撤退、社内混乱で人材流出も

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日本板硝子、グローバル化失敗の舞台裏と代償 相次ぐ事業撤退、社内混乱で人材流出もの画像1日本板硝子大阪本社が所在する住友ビル本館
「Wikipedia」より/Nkns)
 2006年、英ピルキントン社(以下、ピル社)を買収し、「小が大を呑む」と騒がれた日本板硝子の藤本勝司会長が、その失敗の責任を取り、3月31日付で退任した。

 同社は06年のピル社買収以来、外国人社長を2名起用したが、いずれも短期間で辞任し、経営が混乱していた。

 だが、その経緯を振り返ると、同社ではトップが自分の名声欲のために経営を弄び、会社を凋落させた姿が浮かび上がってくる。

 藤本氏は04年の社長就任以来、当時の出原洋三会長と共にグローバル化を推進、06年に売上規模が倍のピル社を6160億円で買収、子会社化した。それにより日本板硝子はいきなり世界29カ国に拠点を持つグローバルメーカーに変身。海外売上比率もそれまでの約20%から一挙に80%近くに拡大した。

 だがこの無謀なグローバル化が、同社凋落の引き金になった。

●「説得セールス」に乗せられた巨額買収

 1826年創業と、187年の社歴があるピル社は、日本板硝子に買収された06年当時、世界3位(シェア10%)のガラスメーカー。25カ国に拠点を持ち、約2万4000人の従業員を擁していた。売上高は約24億ポンド(当時の為替レートで約5000億円)だった。

 一方の日本板硝子は1918年の創業。06年当時の海外拠点は米、英、中国などわずか5カ国。従業員数は約1万2000人(連結)、売上高は2658億円(同)で世界6位(シェア4%)。両社の差は一目瞭然。「小が大を呑む買収」と騒がれたのも当然だった。

 ここで疑問が湧く。まず、なぜこんな不自然な買収ができたのか?

 業界関係者は「要するに国際M&Aに暗い日本板硝子が『説得セールス』に乗せられた」と、次のように説明する。

 当時のピル社を経営していたのは会長のナイジェル・ラッド氏。ラッド氏は不振企業を買収して業績を立て直し、高値で転売して利益を得るターンアラウンド型の投資家として有名。当時はピル社のほか、欧州ドラッグストア大手のブーツ社の会長も兼務していた。ラッド氏は95年からピル社会長を務めており、自動車向けガラスが好調で業績が急回復していた06年当時のピル社を「売り抜け時」と判断したようだった。

 買収交渉で日本板硝子はこのラッド氏に丸め込まれ、合意に達した時のピル社株の買収価格は1株165ペンス(当時のレートで約340円)、総額18億ポンド(約3585億円)。関係者の間では「約30パーセントものプレミアムが上乗せされた」と指摘されていた。結果、ピル社の有利子負債借り換え分を含めた買収額は30億ポンド(約6160億円)に膨れ上がった。

 同関係者は「日本板硝子は綿密に調査し、周到な備えで買収交渉をしたとはとても思えなかった。だからラッド氏の説得セールスに、やすやすと乗せられた」と言う。

●打倒・旭硝子の安易なシナリオ

 次に、日本板硝子は、なぜこんな不自然な買収にこだわったのか?
 
 別の業界関係者は「それは国内トップの旭硝子へのライバル心だった」と、次のように説明する。

 日本板硝子はIT業界が「ネットバブル」で沸いていた2000年、光通信向けのレンズ事業拡大を計画。「10年に『情報電子会社』になる」とのビジョンを出原洋三社長(当時)が掲げ、10年間で200〜300億円を投資し、相模原工場(神奈川県)、四日市工場(三重県)のほか、米国など海外でも生産拠点を拡充、同事業の売上高を約6倍の1200億円に拡大するとしていた。

 ところが、計画を打ち上げた直後にネットバブルがはじけ、北米などの光ファイバー通信向け投資が一気に冷え込み、光レンズの需要も急減。最終的に累計で100億円を超える損失を出し、5工場を閉鎖。02年3月期に22億円、03年3月期に31億円の最終赤字を計上した。

 トップの希望的観測による、市場見通しの甘さだったと言うほかない。

BusinessJournal編集部

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