ビジネスジャーナル > マネーニュース > アベノミクス金利上昇で地銀が危機!
NEW
自民党の日本経済再生本部が金融再編の仕掛け人

地銀再編の舞台裏と行方…主導狙う自民党と反発する金融界の攻防

【この記事のキーワード】, ,

地銀再編の舞台裏と行方…主導狙う自民党と反発する金融界の攻防の画像1
仙台市にある地銀、七十七銀行本店
(撮影:Kuha455405「Wikipedia」より)
 自民党の日本経済再生本部(本部長・高市早苗政調会長)は政府の成長戦略などに反映させることを目指した中間提言を公表した。政府が6月中旬までにまとめる「骨太の方針」や7月の参院選の公約に反映させる方針だ。

 この提言は、50ページに及ぶ大作となっており、金融界は強烈に反応した。銀行の株式保有の禁止、地方銀行など地域金融機関の再編促進、独立社外取締役の確実な導入、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の設立のほか、公的・準公的資金の運用の見直しといった劇薬が盛り込まれていたからだ。

 政府の成長戦略は企業、なかんずく先端産業に偏りがちだ。そこで自民党の中間提言は地方重視の姿勢を強調した。中間提言の素案では、地域活性化の目玉として、ふくおかフィナンシャルグループ(FG)のような広域(福岡・熊本・長崎)をカバーする銀行グループの、複数の誕生を促した。地域企業を指導・育成するための専門性を持った“平成版長期信用銀行”を設立する、となっていた。

 コレを受け、有力地銀の幹部は激怒した。銀行を監督する立場の金融庁が自民党に働きかけて、金融再編のための外圧をかけてきたと受け止めた。金融庁に抗議の電話があったという。

 地銀の間に動揺が広がったため、金融庁は幹部を動員して事態収拾に動く。「再編の事例として、特定の金融機関の名前は挙げるのはいかがなものか」などと自民党議員を説得して回った。その結果、素案にあった「ふくおかFG」や「平成版長期信用銀行の設立」といった文言は削除され、「地域金融機関の広域での提携・再編等を通じ、県境も越える広域的な営業活動による企業・産業サポート力の向上」という表現に書き換えられた。

 だがこれでは、抽象的な表現になっただけだ。ふくおかFG(福岡銀行・熊本ファミリー銀行・親和銀行<=長崎県>を傘下に持つ)のようなかたちで、有力地銀の広域再編を促進し、“平成版長期信用銀行”を地域ごとに設けるという狙いは変わらない。

 自民党の日本経済再生本部は、なぜ、票につながりにくい地銀の再編を打ち出したのか? 安倍政権の成長戦略の柱となる経済再生には、銀行が企業再生や新規融資に積極的に取り組む土壌づくりが不可欠と考えているからだ。

 デフレ経済の下、企業の資金需要が停滞し続けるなか、地域金融機関は本業をテコ入れして需要を開拓するのではなく、余ったカネを国債などの有価証券の運用に回し、一定の収益を確保してきた。地銀全体の国債保有額はこの10年でほぼ倍増し、40兆円規模(12年3月段階)に上った。国債の保有比率が高いのが地銀の特徴だ。全国地方銀行協会の中西勝則協会長(当時、静岡銀行頭取)は12年5月の定例会見で「預金が増加し、貸出がなかなか伸びない状況で国債依存から大きく脱却することは難しい」と発言している。

 国債の運用で収益を上げることができる限り、企業への融資や再生を手助けするなどといった、手のかかる地道な仕事からどうしても腰が引ける。このことが経済再生の重石になっている、との思いが安倍政権には強い。

 ぬるま湯ともいえる環境を改めるべく打ち出したのが、地方銀行の再編だったのである。

 だが、自民党が尻を叩かなくともアベノミクスで地域金融機関の経営基盤は揺らいでいる。異次元のデフレ脱却策によって金利が上昇(国債価格は下落)し、国債を大量に保有する地銀、第2地銀、信用金庫、信用組合は打撃を受けることになるからだ。メガバンクに比べて地域金融機関は償還期間の長い国債を持っている。

 だから、銀行はリスクが高い国債の保有残高を減らしてきた。今年4月末段階の国内銀行の国債保有残高は156兆円と、11年6月の水準まで落ち込んだ。それでも地銀は35兆円の国債を抱える。長期金利が跳ね上がれば、保有する国債の評価損の処理を迫られる。地銀、第2地銀の中でも経営体力がない第2地銀は特にピンチだ。信金、信組はもっと厳しい。否応なしに再編に向かわざるを得なくなる。

●次の金融再編はこうなる

 再編の具体的な組み合わせが明らかになりつつある。

 まず、ターゲットになるのが、東日本大震災の被災地を対象にした改正金融機能強化法(震災特例)に基づき、公的資金の投入を受けた金融機関だ。震災特例は金融機関の財政基盤を強化する制度。地銀、第2地銀、信金、信組の10金融機関に投入されている。

 地銀は七十七銀行(宮城県)、筑波銀行(茨城県)、東北銀行(岩手県)。第2地銀では仙台銀行(宮城県)、仙台銀行と2012年10月に経営統合した、きらやか銀行(山形県、旧殖産銀行と旧山形しあわせ銀行が合併・仙台銀との統合で、持ち株会社、じもとホールディングスになった)が公的資金を受け入れている。七十七銀行を核として宮城、岩手、山形をカバーする広域地銀への再編が有力だ。この場合、茨城は対象から外れる。

BusinessJournal編集部

Business Journal

企業・業界・経済・IT・社会・政治・マネー・ヘルスライフ・キャリア・エンタメなど、さまざまな情報を独自の切り口で発信するニュースサイト

Twitter: @biz_journal

Facebook: @biz.journal.cyzo

Instagram: @businessjournal3

ニュースサイト「Business Journal」

地銀再編の舞台裏と行方…主導狙う自民党と反発する金融界の攻防のページです。ビジネスジャーナルは、マネー、, , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!