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「ダイヤモンド」vs「東洋経済」! 経済誌双璧比べ読み(7月第3週)

セブン、独り勝ちの秘密と懸念材料とは?カギはPB、銀行、カフェ…

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 「週刊東洋経済」(東洋経済新報社/7月13日号)の特集は「セブンの磁力」だ。

 「3兆5084億円──セブン-イレブン・ジャパン(セブン)のチェーン全店売上高(2012年度)は、小売業の中で群を抜く。イトーヨーカ堂やそごう・西武などを含めたセブン&アイグループ全体では、8兆5000億円(同)を超える。国内で約1万5000店という圧倒的な店舗網を誇るセブン」

 日常生活に必要な商品を増やし、他業界の領域を次々と侵食している。その、消費者もメーカーも引き寄せる力に迫った特集だ。キーワードは「PB(プライベートブランド、自主企画商品)」「セブン銀行」「セブンカフェ」だ。

 コンビニエンス・ストア(コンビニ)大手5社の13年度第1四半期(13年3-5月期)決算(単独)では、セブンだけが、既存店売上高が前期比増となった(0.9%増)。

 他の4社は、出店競争や他業態との競合などが響き、既存店の売上高が鈍化した。セブンのみが売上高を伸ばしたのは、PBの「セブンプレミアム」と「セブンゴールド」(高価格帯PB)の好調が要因だ。

●セブンPB商品の拡大

 セブンのPBについては、すでに、「週刊東洋経済」(12年12月22日号)の特集『PB(プライベートブランド)商品の裏側』が迫っている。当サイト記事でも「実は高くて不味い? セブンイレブンPB本当の価値とは?」で紹介した。

 また、「セブン、独り勝ちのカラクリ 加速する強気出店とPB拡大…飽和説覆すコンビニ3強」では、セブンの強気出店とその背景にあるPB拡大を解説している。セブンは3月1日に、香川県と徳島県で一気に14店を同時出店。来年3月までに両県で140店を出す予定。さらに今年度中に愛媛県、16年度中に高知県に進出。今年度から16年度までの4年間に、四国4県で570店のチェーン展開を計画している。これにより同社の出店エリアは44都道府県となり、「セブン空白県」は青森、鳥取、沖縄の3県を残すのみとなる。

 この強気の出店の背景は「PBと総菜の拡充で、主婦や高齢者の来店増に成功しているのが要因」(前出 東洋経済、以下同)と専門家は分析、セブン既存店の日販(1日当たり1店平均販売額)は約67万円で、他社と10万円以上の差をつけていると指摘。「このため他社が採算割れに陥っている立地でも、主婦や高齢者の取り込みで利益を出している」と解説している。

 次に「セブン銀行」だが、特集記事「日常をすべて取り込むアメーバ経営」では、グループの稼ぎ頭の一角に成長したセブン銀行にスポットを当てている。「セブンの店舗内を中心にATM 1万8123台(13年3月末)、提携金融機関は584社」、未提携地銀は7行だけだ。従来の銀行は、儲からない場所にはATMを置かない。しかし、セブンは「すべての店舗にあることが全体を支える」との発想で、ATMネットワークを築き上げた。セブン銀行は、ATM利用件数に応じて提携金融機関から支払われる受入手数料が収益になるというビジネスモデルだ。

 セブン銀行は便利だ、というサービスを徹底して追求した。当初はATMの紙幣処理速度に問題があったため、ATM導入費用の償却期間が残っているにもかかわらず、新機種の開発を決め、改良に改良を重ね、現在の3代目は当初ATMの約8倍もの速度になっているという。

●徹底した利便性の追求と顧客ニーズの開拓

 顧客ニーズと利便性の向上を徹底した結果は「セブンカフェ」にも表れている。

 今年1月から全国展開を始めたセブンカフェは、セルフ式のドリップコーヒーだ。「本格展開からわずか半年足らずで累計販売5000万杯を突破した。9月には国内全店舗に導入する予定で、初年度の販売数は日本マクドナルドの『マックカフェ』(年間約3億杯)を軽く超える、4~5億杯となる見込みだ」

 実は、セブンは30年も前から入れたてコーヒーの販売を手掛けてきた。

 「開発すること実に4度。それでも販売は伸び悩み、やがて店頭から姿を消した」。最近では「01~02年ごろのスターバックス・ブームに乗じて、2000店で展開した『バリスターズ・カフェ』ではエスプレッソ式のマシンを導入したが、風味が物足りなく、定着しなかった。その上マシンを欧州から輸入して、日本仕様に改造していたためコスト高になった」という。

 5度目の挑戦になる今回のセブンカフェは、多くのメーカーが関わっている。卓上型のドリップ式コーヒーマシンの製作を担当したのは、自動販売機で国内シェアトップの富士電機、コーヒー豆の調達は三井物産、焙煎はAGF(味の素ゼネラルフーヅ)とUCC上島珈琲、といった具合だ。ほぼ、コーヒーの日本代表というべきチームで作られたものなのだ。

 全国で1万5000店というネットワークは、メーカーにとっても、たまらなく魅力的に映るようだ。特集記事「セブンの“内なる”課題」では「近年のセブンの好調は、メーカーとの協業を通じた価値ある商品の開発、販促費を大胆に投じた拡販、加盟店オーナーの満足度向上、出店数拡大といった好循環に支えられてきた」。広告宣伝費も前期は約450億円でローソンの166億円を大きく引き離している。

 経営学で、スケールメリット、規模の経済(規模の利益)は、事業規模が拡大することにより販売する商品やサービスの限界費用が小さくなることを意味するが、規模が大きくなればなるほどメーカーを引きつける磁力も増すということだろうか。

 セブンの急務は、81歳となった総帥・鈴木敏文会長兼最高経営責任者(CEO)の後継者問題解消だ。特集記事ではインタビューはあるものの、こういったマイナス面には迫っていない。

 不振部門の1つ、ネット事業は鈴木会長の次男康弘氏がセブンネットショッピングの社長を務め、後継者と目されているが、「取扱高は現在1000億円超にとどまり、15年度に売上高5000億円という目標を掲げるものの、アマゾンの約7300億円(12年)と比べ、水準はなお低い」というレベルだ。また、セブンネットショッピングでは、この2月に新入社員の自殺が起きるなど、ブラック企業視されつつある。詳しくは、「セブン&アイ鈴木会長次男の会社で起こった飛び降り自殺の悲劇」を一読してほしい。
(文=松井克明/CFP)

BusinessJournal編集部

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