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LCC元年、各社の明暗を分けたものとは?カギは関空、日本独特の市場環境への対応…

LCC元年、各社の明暗を分けたものとは?カギは関空、日本独特の市場環境への対応…の画像1ピーチ・アビエーションの旅客機(「Wikipedia」より/ken H)
 LCC(格安航空会社)就航元年といわれた2012年から1年が経過。LCC3社の明暗が分かれた。

 関西国際空港に拠点を置くANAホールディングス(以下、ANA)などが出資するピーチ・アビエーション(大阪府泉佐野市)が搭乗者数を順調に伸ばしているのに対して、成田国際空港を拠点とし、日本航空(JAL)などが出資するジェットスター・ジャパン(成田市)と、最後発のANA系のエアアジア・ジャパン(同)の2社が苦戦している。LCCの利用率は西高東低である。

 今年のゴールデンウィーク(4月26日~5月6日)の国内線搭乗率が3社の勝ち負けを鮮明にした。ピーチが91.3%を確保したのに対し、ジェットスターは78.8%、エアアジアに至っては67.6%と振るわなかった。ピーチについては「関西の居住者の利用が増えている」との分析もあるようだ。

 早くも失速したのがエアアジアである。8月1日、ANA出身の石井知祥氏が社長に就任した。就航1年で3人目の社長である。エアアジアは、ANAが51%、マレーシアのLCC・エアアジアが49%出資して12年8月1日に就航。機体数は5機で、路線数は国内5路線(成田-福岡など)、国際線4路線(成田-釜山など)である。

 ANA経営陣とマレーシアのエアアジア本体のトニー・フェルナンデスCEO(最高経営責任者)の、意見の対立があった。フェルナンデス氏は「初年度からの黒字化」という高い目標を設定し、世界共通の(チケットの)販売・運営システムの導入を日本市場でも求めた。

 一方、ANAから派遣されたエアアジアの経営陣は、フェルナンデス氏のやり方は日本の市場になじまないと反対した。インターネット上での航空券販売システムの画面が読みづらいことに加え、日本では主流の旅行代理店などを通じた団体向け販売で出遅れた。

 就航開始から今年3月までの8カ月間で、営業赤字35億円を計上。「初年度から黒字化」の目標を達成できなかった。今年4~6月期の国内線の平均搭乗率は55.5%と、採算ラインといわれる70%を大きく下回った。

 昨年12月、エアアジアの社長は岩片和行氏から小田切義憲氏に交代した。エアアジアのマレーシア本社が購入した機材をエアアジアに引き取らせようとしたが、岩片社長がそれを突っぱねたため更迭されたといわれている。これで対立は決定的となり、今年6月に合弁は解消された。ANAはエアアジア本社が保有するエアアジア株を全て引き取り、完全子会社とした。エアアジアは10月末で運航を停止し、11月1日から社名やブランド名をバニラ・エアに一新。石井社長は「リゾート客に特化して国際線に比重を置く、新しいLCCを目指す」と語った。一方、エアアジア本社は日本市場で新たなパートナーを探している。

●成田拠点のジェットスターとエアアジア

 ジェットスターも経営は苦しい。豪カンタスグループとJALが各33.3%、三菱商事と東京センチュリーリースが各16.7%を出資して12年7月3日に就航。機体数は13機。路線は国内14路線(成田-那覇など)のみだ。

 成田発だと搭乗率が上がらないのは、東京都心や横浜から成田はいかにも遠いため。成田エクスプレスを使うと片道で2400円以上かかる交通費がネックになっている。

 それでもジェットスターは、同じ成田を拠点とするエアアジアに、搭乗率で10ポイント以上も差をつけている。ジェットスターは日本市場の特性に合わせて、旅行代理店との提携に積極的で、現在は代理店経由の予約が2割を占めている。手数料を取られる旅行代理店との提携に消極的だったエアアジアとの差が出た。ジェットスターはローソンと販売契約を結び、7月からコンビニでも航空券を売っている。

 ジェットスターが想定以上に赤字が膨らんだのは、関空の拠点化が遅れたためだ。現在、成田空港は夜11時から朝6時まで発着できない。これでは機材を効率的に使えない。24時間運航可能で着陸料を大幅に割引している関空を第2の拠点とする予定だった。

 ところが昨年11月、経験が社内規定(3年以上)に満たない整備士を確認主任者としていたことが発覚し、国土交通省から厳重注意を受けた。そのため、12月に予定していた関空の第2拠点化を延期した。14年末までに機数を24機に増やす計画を立てていることも経営を圧迫した。リース料や駐機料は膨らむ。しかし、関空の拠点化の遅れで収入は伸びない。この結果、赤字幅が拡大した。赤字を穴埋めするため、増資が経営上の課題となっている。

●ピーチ圧勝の要因とは?

 圧勝したのがピーチだ。国内LCCの先陣を切って昨年3月1日に就航したピーチは、ANAが38.67%、香港の投資会社ファーストイースタン・アビエーションホールディングスが33.3%、産業革新機構が28.0%出資。機体数は9機。路線数は国内7路線(関空-新千歳など)、国際線3路線(関空-ソウルなど)。国内線の平均搭乗率は80%前後で、採算ラインの70%を大きく上回っている。

 関空は「アジアのLCCの拠点」とする方針を打ち出している。24時間使える上に、昨年10月にLCC専用ターミナルをつくった。着陸料も大幅に割引している。ピーチは10月から成田-関空線を就航させ、東京に進出する。成田路線で、これまでのように高い搭乗率を維持できるかどうかが今後を占う試金石となる。

 ANAが経営不振のエアアジアを100%子会社にしたことで、ピーチとエアアジアの経営統合が噂されている。2社が経営統合した場合、ピーチに出資している香港の投資会社ファーストイースタンの出資比率が下がるため、同社の出方が注目される。

●LCCに厳しい日本の環境

BusinessJournal編集部

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