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大詰めの次期経団連会長人事、迷走の舞台裏〜相次ぐ「若返り発言」、非製造業出身も

文=編集部
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大詰めの次期経団連会長人事、迷走の舞台裏〜相次ぐ「若返り発言」、非製造業出身もの画像1経団連会館(左/「Wikipedia」より/Jo)
 2014年5月に任期を迎える経団連の米倉弘昌会長(76、住友化学会長)の後任人事をめぐり、有力財界人から「若返り」を求める発言が相次いでいる。

 元経団連会長の奥田碩・国際協力銀行総裁(80)は、7月26日の記者会見で「財界の老化はだいぶん進んでいる」と指摘。「若い世代が率いていくかたちになれば一番いい。70歳とかの人が会長になるのはよくない」と若返り論の口火を切った。

 元経済同友会代表幹事で日本生産性本部の牛尾治朗会長(82、ウシオ電機会長)も同日の記者会見で、「海外に行く回数が多いから体力的なものもある。70歳までというのが大事な年齢の線だ」と述べ、奥田氏の発言に「同感だ」と足並みを揃えた。

 牛尾氏は経団連会長の出身業種についても言及。「これからの日本を動かすのは技術とシステム全体を動かす力だ。そういうところに影響力を持つことが望ましい」として、従来の製造業の範疇ではなく、国内外に販売網やサービス網を構築して競争力がある企業から選出したらよいとの考えを示した。IT化とグローバル化が急速に進展する国内外の経済情勢に対応するには、迅速な意思決定ができる頭脳と体力が必要であり、財界トップには「60代がいい」との考え方を示したわけだ。

 奥田氏はトヨタ自動車の社長、会長を歴任した財界の重鎮。牛尾氏は安倍晋三首相の義姉の父という縁戚関係にあり、首相の“ご意見番”と見なされている。ともに小泉純一郎政権のもとで、小泉構造改革のエンジン役となった経済財政諮問会議の民間議員を務めた。

 牛尾氏が1995年に経済同友会の代表幹事に就いた時は64歳。奥田氏も99年に、のちに旧経団連と統合する旧日経連の会長に就任した時は66歳。2つが統合し現在の経団連の初代会長に就任した2002年には、69歳だった。

 06年5月、奥田氏の後任としてキヤノン会長の御手洗冨士夫氏が会長に就任したが、この時は70歳。米倉氏が09年5月に経団連会長に就任した時は73歳だった。これで財界の老化が一気に進んだ。

 経団連会長の任期は2期4年。米倉会長の後任は早ければ年内にも内定し、来年5月の定時総会で正式に決定する。歴代会長は、副会長の中から選ばれるのが暗黙のルールだ。来年5月時点で60代に該当するのは、1945年生まれ以降の戦後派世代となる。経団連の副会長は年功序列。18人の副会長のうち、戦後派は6人しかいない。

出身業界も大きく影響

 米倉会長は次期会長について「ものづくりは日本の強みで、関連企業とのすり合わせが原点。そのトップは皆さん(他の企業)と協力関係を打ち立てている」として、製造業出身者を選ぶことを示唆した。経団連の副会長など要職を現在進行形で務めている、製造業の現役の社長あるいは会長の中から選ぶということらしい。

「筆頭副会長になった川村隆・日立製作所会長(73)を事実上、指名したもの」(元経団連副会長)との見方が浮上したが、これは、いわゆる財界主流派の読みだ。2期目の副会長で重厚長大製造業の出身者は日立の川村会長と三菱重工業の大宮英明会長(66)の2人しかいない。川村氏は12月29日には満73歳で、年齢がネックになる。本人はメディアの取材に対して、「高齢の私が出る幕ではない」と否定している。大宮氏は、年齢はクリアするが「軍需産業出身者でいいのか」(財界関係者)との声が上がる。旧三菱財閥の総本山に対するアレルギーは依然として強い。

 製造業ではなくグローバルに展開している非製造業からとなると、三菱商事の小島順彦会長(71)が有力だ。三菱商事は“ポスト米倉”の座に強い意欲を見せている。だが小島氏も今年10月15日に満72歳になる。川村氏と同じで年齢がネックとなる。

 今年、副会長に就任した新日鐵住金の友野宏社長(68)、トヨタ自動車の内山田竹志会長(67)、東芝の佐々木則夫副会長(64)の3人は「若返り」論の関門をパスしている。いずれも経団連会長を輩出した財界本流の名門企業の出身だ。

 しかし、新日鐵住金の三村明夫相談役(72)が日本商工会議所の次期会頭に就くことが内定。同一企業の出身者が経済3団体のトップに、同時期に就くことは好ましくないとするルールがあるため、友野氏が経団連会長になる目はない。今のトヨタは経営者の世代交代期で経団連会長の適任者がいない。内山田氏自体、財界活動の経験がまったくない。

“ポスト米倉”選び、どのように決着?

 新しい副会長の中で、一時、有力候補に浮上したのが東芝の佐々木氏だ。東芝は過去、経団連会長に石坂泰三氏と土光敏夫氏という大物2人を送り出してきた。石坂氏は文字通り「財界総理」だった。東芝にとって、経団連会長の座は長年の悲願だ。

 安倍晋三内閣が誕生し、東芝に出番が回ってきた。経済再生の司令塔を担う経済財政諮問会議の民間議員に、現役社長の佐々木氏を抜擢した。佐々木氏が今年、経団連副会長に就けば、ポスト米倉の最有力候補に浮上すると取り沙汰された。ところが、自社の西田厚聰会長(69)との確執が表面化。今春の人事で副会長に棚上げされてしまった。お家騒動の醜態をさらし、佐々木氏の経団連会長の可能性は消えた、といわれている。東芝は「当面は財界活動を自粛するのではないか」と見る財界人が多い。

 では、誰が次期経団連会長になるのか?

 経団連には、経団連と日経連の会長を務めた名誉会長が複数いる。豊田章一郎・トヨタ自動車名誉会長(88)、今井敬・新日鐵住金名誉会長(83)、根本二郎・日本郵船最高顧問(84)、奥田碩・国際協力銀行総裁、御手洗冨士夫・キヤノン会長兼社長の5人だ。76歳の現役会長である米倉氏を加えた長老6人の話し合いで“ポスト米倉”が決まることになる。
(文=編集部)

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