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相次ぐ車の自動ブレーキ機能起因事故で露呈した、普及へのハードル〜難しい運転手責任

文=blueprint
相次ぐ車の自動ブレーキ機能起因事故で露呈した、普及へのハードル〜難しい運転手責任の画像1「Thinkstock」より

 11月10日、埼玉県深谷市の自動車販売店で開催されたマツダ車の自動ブレーキ体験試乗会で、2人が重軽傷を負う事故があった。マツダは12日、事故原因が判明するまで同様の試乗会を自粛すると発表。埼玉県警は人為ミスと車の構造の両方から調べている。

 12日付日本経済新聞によると、車はマツダのスポーツタイプ多目的車(SUV)「CX-5」。自動車販売店の駐車場で、障害物を検知して自動ブレーキをかける機能の体験走行を実施していた。車は7メートル先のウレタンマットに向かって走行し、自動ブレーキで停止するはずだったがマットを突破すると、6.6メートル先の金網フェンスに衝突して前部が大破。試乗運転していた客の男性と、販売店従業員が捻挫や骨折の重軽傷を負った。

 マツダによると、自動ブレーキ機能は時速4~30キロで走行中、レーザーセンサーで前方の障害物を検知して、衝突の危険性が高い場合に作動する仕組みだという。ただし、時速30キロを超えると作動せず、県警は速度超過などの運転ミスと、機能トラブルのどちらの可能性もあるとみて調べている。

 自動ブレーキ機能など、自動運転技術は欧米メーカーを中心に開発・市場導入が進み、日本でも自動車メーカー各社が開発を加速。新型車を中心に搭載を進めている。9日には政府とトヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業(ホンダ)の大手3社が国会周辺で自動運転技術搭載車両の実証実験を実施。試乗した安倍晋三首相が、「さすがに日本の技術は世界一だなと体で感じた」とコメントしたばかりだった。

 しかし、この自動ブレーキ機能をめぐっては事故が相次いでいるようだ。12日付東京新聞によると、東京都葛飾区の首都高速で今年5月、走行中のトヨタ車に急ブレーキがかかり、後続車に追突される事故が発生している。検知用のレーザーが乱反射して、横からの「割り込み」があったと認識したのが原因だった。また、6月には三菱自動車の車がトンネルの壁を先行車と認識して自動ブレーキがかかる不具合が判明。両社は国土交通省にリコールを届け出ている。

●過信は禁物、難しい運転者の責任範囲

 もっとも、事故の原因は必ずしもシステムの誤認だとは限らないようだ。今回の事故について、F1ジャーナリストの山口正己氏は13日、自身のブログで「おいおい、自動停止装置が有効なのは、30km/hとかじゃないの?」とやはり速度超過などの運転ミスがあった可能性を指摘。もし、速度を守って運転していたのであれば、フェンスに衝突して骨折するのは「異常な状況」だという。

 また、山口氏は「クルマという道具が、レールがない道を走り、交差点もあるし対向車もいて、人が歩いているし自動車やバイクも走っている道路という名の“規制された部分”を走っているということを、みなさん忘れている」「“最後は運転者の責任”というなら、ポケ~ッと運転席に座っている人が、いざというときだけなにか反応しなければならない。器用なことができる人がいたらお目にかかりたい」と、自動ブレーキ機能が過信されていることも指摘している。

 北海道大学大学院法学研究科教授の町村泰貴氏も12日に自身のブログで、自動ブレーキ機能について「うっかりミスをカバーするというレベル」「そのシステムがあるからといって人間が手を抜いてよいこともなく、事故時の運行供用者責任には影響がないのが普通だろう」と、システムに頼りきることの危険性を述べている。

 自動運転技術を実用化させるためには、もしも事故が起こってしまった場合に、誰がどれだけ責任をとるのかという運転者の責任範囲を正しく設定することが、意外に高いハードルとなりそうだ。
(文=blueprint)

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総合カルチャーサイト「Real Sound(音楽・映画・テック・ブック)」の運営や、書籍や写真集の発行、オウンドメディアの制作支援など“編集”を起点に様々な事業を行っている。
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