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高井尚之が読み解く“人気商品”の舞台裏(5月29日)

渋谷マルキューとセシル、20年目の試練を乗り越えられるか?商品力と販売力復活のカギ

文=高井尚之/経済ジャーナリスト

●外資系のファストファッションの台頭

 それが最近、様相が変わってきている。長く流行を牽引したマルキュー系ファッションが軒並み不振なのだ。セシルも例外ではなく、売り上げを落としている。ジャパンイマジネーションの年間売り上げ高も14年1月期は214億100万円と、前年に比べて約1割も落ち込んでしまった。

 ファッション業界では「ユニクロ」の好調さが大きな話題だが、女性向けでは外資系のファストファッションが好調だ。代表例としては、「H&M」(エイチ・アンド・エム/スウェーデン)、「ZARA」(ザラ/スペイン)、「FOREVER 21」(フォーエバー トゥエンティワン/米国)の3ブランドが挙げられる。特にH&Mは日本上陸6年目を迎え、店舗数は急拡大し、年間売り上げ高は500億円規模に上っている。

 ファストファッションとは、ファストフードから派生した言葉で、「流行を取り入れつつ、手頃な価格で、短いサイクルで展開する」ブランドや商品を指す。ユニクロやセシルマクビー、そして郊外に多い「しまむら」もこの分野に入っている。

 当初、外資系ファストファッションは、「価格は安いが、縫製などは日系ブランドより一歩劣るので、品質に厳しい日本の消費者には受け入れられないのではないか」「最初は人気を呼んでも、長続きしないだろう」と言われていた。それが予想を大きく上回る快進撃となった。結果分析はいろいろできるが、本国のやり方の押しつけではなく、日本の消費者ニーズをくみ取り、価格以外の価値である品揃えや色合いを提案したことも大きいだろう。

 一方のマルキュー系もテコ入れを進めている。SHIBUYA 109を運営する東急モールズデベロップメントは、この春に店内を大改装して、全館の約4分の1に当たるテナントを入れ替えた。狙いは「マルキューの原点に立ち返る」ことだという。

●2度目の正念場

 実はセシルマクビーも、SHIBUYA 109も、正念場を迎えたのは2度目だ。

 それを紹介する前に、ジャパンイマジネーションの概要を説明しておこう。

 ギャルに支持されてブレイクした会社――と紹介すると、「若い女性社長が同世代目線で会社を興した」などと思われるかもしれないが、そうではない。

 戦後まもない1946年11月に、東京・新宿で婦人服と子供服の洋品店として創業。創業者は、かつては大蔵省や税務署、農林中央金庫に勤めた故木村恭也氏(木村会長の父)だった。そんな新宿の洋品店が64年に開催された東京オリンピックの前後に、新宿の駅ビル「新宿ステーションビル」(現在の「ルミネエスト」)や「小田急エース」、渋谷の「東急プラザ」などに出店し、駅ビルの発展とともに成長した。79年開業のSHIBUYA 109にも開業時から出店していた。

 そんな成り立ちゆえ、87年にセシルマクビーを立ち上げて以来10年間は、「山の手お嬢様路線」で、業界では“重衣料”と呼ぶ、スーツなどが得意な保守的ブランドだった。当時のSHIBUYA 109も、現在とは店舗構成が大きく異なり、紳士服や宝石店もある全世代型だった。

 さて、最初の正念場は90年代半ばに訪れた。当時から若者に人気だった渋谷の街とは裏腹に、マルキュー店内は閑散としていた。そこで東急は「渋谷の街を歩いている若い女性を呼び込もう」と決断し、ヤングレディース専門店ビルに変えた。

 東急から要請を受けたセシルマクビーも、当時ブランドマネジャーだった小嶋社長を中心に商品アイテムを一新し、前述のようなセクシーカジュアル系のブランド構成へと変えていく。この戦略転換が大成功して、マルキュー系ファッションが一大勢力となったのだ。

高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、(株)日本実業出版社の編集者、花王(株)情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。出版社とメーカーでの組織人経験を生かし、大企業・中小企業の経営者や幹部の取材をし続ける。足で稼いだ企業事例の分析は、講演・セミナーでも好評を博す。近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。これ以外に『なぜ、コメダ珈琲店はいつも行列なのか?』(同)、『「解」は己の中にあり』(講談社)など、著書多数。

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