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兵庫県と神戸市、阪神大震災の復興住宅入居者に突然の退去命令、孤独死増加の恐れも

文=山口安平/ジャーナリスト
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神戸市は35億円の内訳を明らかにしないで35億円という数字だけを公表し、負担が大きいことを強調したんです。年間14億円だと神戸市が十分に賄える額です。もし、公営住宅をつくっていたら、どれだけの建設コストがかかっていたのかについては、なんら検討されていません。神戸市の総予算規模は年間約2兆円です。10年度の予算では、予算の組み替えで160億円程度生み出す試算も発表されています」(出口氏)

 借上住宅は、公営住宅法に基づいて神戸市などの自治体が採用した制度であり、他の公営住宅と変わりなく、税金が借上住宅に使われて当然のはずだ。

●20年の期間を設定されていない入居者も多数

「とにかく入居してほしい。20年先のことは悪いようにしない。誠実に対処していく」

 金芳外城雄神戸市生活再建本部長(当時)は、兵庫県被災者連絡会(河村宗治郎代表)との交渉でこのように話したという。

 この発言について、前出の出口氏は10年6月24日に北山富久住宅管理課長(当時)に確認したところ、「金芳元生活再建本部長から、そのことは聞いています」と、当時の担当部長の発言を認めた。とにかく仮設住宅の解消に躍起になっていた証しといえるだろう。だが、少なくとも住民たちは「一時的」「臨時的」な住宅であるとは理解していなかったようだ。

 神戸市中央区にある県の借上住宅に住む岡田一男さんは、入居時の説明会のことを明確に覚えていた。

「県の説明会で言われたことは、当時、神戸空港の建設中で、空港の騒音に対して“公害”と言わないこと。そしてもうひとつは灘浜にある神戸製鋼の火力発電の煙がこちらに向かってくるので“煙害”の可能性があるが、納得して入ってほしい。この2点だけの説明でした」

 その時に借上住宅という説明はなく、ましてや20年で出て行くという説明は一切なかったという。

 さらに、神戸市と入居者との間の契約書にあたる「神戸市営住宅入居許可書」は3種類存在することが明らかになった。入居許可書が3種類存在すること自体、にわかに信じられないが、そのうち最初の数年間の許可書には借り上げ期間が明示されていなかった。

 期限がないことについて、矢田前市長は11年3月8日の市議会予算特別委員会で、「震災のどさくさだったから仕方がない」と弁明した。

 前出の出口氏は、「神戸市は20年という契約を重んじているわけですから、少なくとも契約期限がない住戸は『住み替え』から除外する必要があるはずです。期限のない入居許可書は2000年まで存在します。要は5年間も市長の言う『どさくさ』が続いたのでしょうか。もうここまできたら、デタラメというほかないですよ」と批判する。

 借上住宅の居住者を支援している兵庫県被災者連絡会の河村代表は次のように話す。

「18年前を思い出してほしいのですが、家を失ってまず避難所に行った。避難所は一月もたたないくらいで『出て行ってくれ』と言われた。それで早くどこかに行かなければいけないということで仮設住宅に移った。でも、仮設住宅もなかなか当たらなかった。その中で借上住宅という選択を迫られたわけです。公営住宅は当選しない。そこで入ったのは幸か不幸か借上住宅だったわけやね。それで突然、『期限が20年たったから出て行ってくれ』と言われたわけです」

 借上住宅の住民たちは、複数の選択肢からではなく限られた中での選択をした結果が、借上住宅だった。借上住宅の住民の多くは、5~6回抽選から漏れて、「もうなんでもええわ」という心境で入居した人もいるのだ。

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