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安部徹也「MBA的ビジネス実践塾」第9回

苦境マック、好調スタバ、何が明暗分けた?復活策を探る 価格を買う顧客を集めた副作用

文=安部徹也/MBA Solution代表取締役CEO
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 マクドナルドのビジネスの一つの特徴として、「週替わりのクーポンを発行して集客を図る」ということが挙げられます。スマートフォン(スマホ)や携帯電話を利用するクーポン会員は13年までに3500万人を超え、実に日本人の4人に1人はマクドナルドのクーポン会員という驚異的な統計もあります。それゆえ、マクドナルドの店頭で顧客の注文を眺めていると、実に多くの顧客がスマホや携帯電話の画面に映し出されたクーポンを提示して購入しているシーンに出くわします。この意味では、マクドナルドのクーポンを活用した集客は成功を収めているともいえるでしょう。

 ただ、これは裏を返せば、顧客はクーポンがなければマクドナルドには行かないということの表れでもあります。クーポンには期間限定の割引価格を提供することで来店を促すというメリットもありますが、クーポンによる集客は、頻繁に変わる価格に「割引がなければ来店を控えよう」という気を顧客に起こさせるデメリットもあるのです。つまり、クーポンを頻繁に利用する顧客にとっては、割引価格が定価であり、通常の価格で購入する際には、「通常よりも多く支払わなければいけない」と、ある意味「損をする」気分になるのです。

 マクドナルドにとっては、利幅を削ったクーポンを呼び水に、他の利幅の大きな商品を追加で購入してもらい収益を調整する「マージン・ミックス」を実現したいところでしょうが、多くの顧客はクーポンで割引された商品だけを購入したり、追加しても低価格の100円マックだけだったり、おいしいところのみをつまむ「チェリーピッカー」と化しているのです。

 このような顧客の特徴は、「価格を買う」ところにあります。購入の判断基準は「価格が安いか?」や「コストパフォーマンスが高いか?」にあるのです。ですから、価格を買う顧客には、価格が重要なのであって、どこの会社が提供する商品かというブランドにはこだわらない傾向が強く表れます。もし、ほかに安いもの、コストパフォーマンスの高いものがあればすぐに目移りして、購入先を躊躇なく変更してしまうのです。

 マクドナルドの苦戦の原因は、自ら価格を売り、価格に敏感な顧客を集めてしまったところにあるのではないでしょうか。

 それが顕著に表れているのが13年5月の大幅な価格改定です。

 マクドナルドは、デフレ時代に価格を武器にして快進撃を続けてきましたが、デフレの終焉が見えてくると、13年5月にはそれまで100円で販売していたハンバーガーを一気に20%も値上げするなど大幅に価格体系を見直します。この主力商品の値上げが原因で、価格だけに魅力を感じていた顧客が一斉に離れていったのです。

 これらの顧客の多くは、例えばよりコストパフォーマンスの高いコーヒーを提供するコンビニなどに流れて、その後、マクドナルドは顧客数の大幅な減少に悩まされることになるのです。

●「価値を売る」スターバックス

 価格を売るマクドナルドに対して、スターバックスは価値をそのビジネスの中心に据えています。

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