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異例の「極ZERO」騒動、なぜ起こった?歪んだビール税率に悩む業界、高まる増税観測

文=藤池周正/ジャーナリスト
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異例の「極ZERO」騒動、なぜ起こった?歪んだビール税率に悩む業界、高まる増税観測の画像1サッポロビール「極ZERO」
 サッポロビールは7月15日、低価格の「第3のビール」として販売していた「極ZERO」を「発泡酒」として再発売した。従来の商品が今年1月に国税庁からの指摘で第3のビールとして認められない可能性が浮上したためだ。第3のビールより税率が高い発泡酒に切り替えるという異例の対応で、5月の製造分を最後に販売を中止し、さらに酒税税率の適用区分の変更で累計販売量から試算した差額分116億円の追加納付も決めた。発泡酒である新商品の販売価格は税率の区分が変わることで、これまでより20円高くなる。なぜ、このような事態が起こったのだろうか。

「極ZERO」は、健康志向の消費者を意識し、「プリン体と糖質をゼロにした世界初の製法」というのが売り文句だった。昨年6月の発売から12月末までの半年間で約360万ケースを販売するなど、サッポロの主力商品に成長しつつあった。しかし、この「世界初の製法」に国税庁が待ったをかけた。実際のところは、国税庁は酒税の適用区分を確認する目的で、「極ZERO」の製造方法の情報提供を要請したにすぎないが、サッポロは自主的に発売中止を決めた格好となった。

 ビール各社はこれまで、税収増を狙う政府と税率をめぐって攻防を繰り広げてきた。ビールというカテゴリの規定は麦芽比率67%以上であることだが、サントリーが1994年に麦芽比率65%の発泡酒「ホップス」を発売したことで、低価格を売りする発泡酒市場が急成長を遂げた。すると政府は96年、麦芽50%以上の発泡酒にビールと同じ税率を適用。これを受けビール各社が麦芽比率25%の発泡酒を発売し、ピーク時の2002年には年間2億300万ケースを出荷したが、政府は03年、今度は発泡酒の税額を引き上げた。

 次に新カテゴリの商品開発に乗り出したのがサッポロだった。発泡酒に分類されない第3のビールである「ドラフトワン」を開発。発泡酒の税額引き上げでその市場は縮小したが、代わって第3のビールが台頭することになった。

●あいまいな第3のビールの定義

 今回の「極ZERO」発売中止は、第3のビールでない場合に発生する多額の滞納税をサッポロが恐れたというのが大方の見方だが、ある税金専門誌記者は、「酒税法の複雑さも原因として挙げられる」と話す。

 ビール類は原材料や製法の違いで税額が異なる。1缶・350ミリリットル当たりで、麦芽の割合3分の2以上のビールは77円、3分の2以下の発泡酒は46.98円(麦芽比率25%未満)、発泡酒に別のアルコールを加えたり、麦芽以外を原料にした第3のビールは28円となっている。税額の違いにより、量販店の販売価格は、第3のビールは1缶・350ミリリットルでビールより50~60円、発泡酒より20~30円安くなる。

 問題なのは第3のビールの定義だが、「定義が不明確で、捉え方次第で第3のビールとも発泡酒とも解釈できる」(同)と指摘する。現にサッポロの尾賀真城社長は6月4日の記者会見で、「第3のビールと認識しているが、よくわからない状況で続けるよりは発泡酒に変えたほうが明確。自主的に(発売中止を)判断した」と、決断に至った経緯について述べた。

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