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被災地復興、なぜ延々と進まないのか?発想なき自治体、他優先の政府、歪曲するメディア

構成=横山渉/ジャーナリスト
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――舞台を小学校にした理由は、なんでしょうか?

真山 震災報道を見ていると、避難所になった体育館などで、子どもが出てくるものが多かったのですが、みんな明るく振る舞っていました。それをメディアは「子どもはすごいですね」と伝えます。見ているほうは安心するかもしれないけど、大人が落ち込んでいるから、子どもは無理しているだけなんです。阪神・淡路大震災の時も発生後2年目から子どもたちにPTSD(心的外傷後ストレス障害)が出始めた。ですから、そういうメディアの状況はダメだと思っていたのが理由の1つです。

 みんなが打ちのめされている状況の中で、正論を一番通せるのは子どもだと思います。今回の作品は、子どもが大人を叱っているのです。登場する子どもたちを小学6年生にしたのは、大人の矛盾を指摘することができ、さらに大人が反論できない指摘ができる年代だからです。子どもだけど、他人を思いやることもできる歳でもあります。

 東日本大震災後、本書の内容と異なり、現実には神戸市は被災地へ教師を派遣しなかったのですが、小説では阪神・淡路大震災を体験した教師を通して、あえて被災地における腫れ物に触ることでタブーを壊したかった。

――子どもの葛藤やエピソードが数多く語られていますが、子どもたちにはかなり取材したのですか?

真山 みなさんからそう聞かれるんですけど、子どもにはまったく取材していません。私は以前から「よく取材している」と評価されることが多いのですが、褒められている部分は、だいたい想像で書いたところです。実際に取材しなくても、メディアに出てくる子どもたちを見ていれば、さまざまなことが見えてきます。

 実際の取材としては、11年12月にある小学校の授業風景を見せてもらいました。普通の授業をしているかどうかを見たかった。先生には何人か話を聞きましたが、子どもには聞いていません。でも、子どもたちは日常に戻ろうとしているのが見えてきました。

 一方、今回唯一取材したのはボランティアの人たちです。私ができないからなのかもしれませんが、彼らが何を求めてボランティアをしているのか、ずっと理解できなかったからです。みなさん「これだけ多くの人から『ありがとう』って言われたことはなかった」と口にしました。それは、彼らにとって大きな感動なんですよ。短期ボランティアのつもりで被災地に来て、その後、会社を辞めた人もいました。ボランティアは、ある種の“人間再生工場”かもしれません。阪神・淡路大震災でもたくさんのボランティアが活躍し、「ボランティア元年」と呼ばれましたが、まだ統制が取れていませんでした。その時の教訓を元にボランティアのあり方も整備され、今回はボランティア・センターが設置されました。意欲満々で都会から来るボランティアの善意を被災地はどうやって受け止めるのか、ということをどちらにも加担せずに書くために取材したつもりです。

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