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ディズニーR、驚愕のキャスト使い捨ての実態 バイトに責任押し付け酷使、心身病む人続出

文=松井克明/CFP

ディズニーR、驚愕のキャスト使い捨ての実態 バイトに責任押し付け酷使、心身病む人続出の画像1東京ディズニーランドのシンデレラ城(「Wikipedia」より/Username9)
 実は、東京ディズニーリゾートに多くの人が押し寄せるのは、夏の終わりから秋にかけてだ。

 比較的すごしやすくなった気温に、ハロウィンなどの集客イベントも目白押しだからだ。しかし、キャスト(従業員)にとっては、この季節こそが「病んでしまう人が多い」魔の季節。これからが要注意の季節なのだ。

「まず、まだまだ暑いというそもそもの悪条件の上に、与えられた仕事にはNOとは言えないオリエンタルランドの職場風土があります。7月からフル稼働のために、夏の疲れが出ていても無理をしても仕事をしなくてはいけない。そのために、身体を壊し精神を病む人が出てくるのです」と語るのは、オリエンタルランド・ユニオン。現在、東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドの労働環境をめぐり、今年3~4月に解雇されたキャストが、オリエンタルランド・ユニオンを結成し、労働環境の改善を要望している。

「オリエンタルランドでは、キャストの9割が正社員ではなくアルバイトなどの臨時雇用者です。それにもかかわらずオペレーションがうまくいっているのは、キャストたちが教え合う素晴らしいシステムがあるからだ、というのですが、どうにも違和感がぬぐえません。現実には臨時雇用者の使い捨てで成り立っているシステム。多くのキャストが『もうディズニーリゾートとはかかわりたくない』といいながら辞めているのが現実です」(オリエンタルランド・ユニオン。以下同)

 2012年9月、『9割がバイトでも最高のスタッフに育つディズニーの教え方』(福島文二郎/中経出版)が発売されると、ディズニーのバイト教育にスポットを当てたビジネス書が注目を集め、シリーズ90万部を突破した。いわく、「オリエンタルランドの正社員数は約2000人だが、対してバイトの人数は約1万8000人。しかも、バイトは1年間で半分の約9000人が退職する」「1年に3回くらい3000人近くのアルバイトを採用しなくてはならないが、推定で5万人以上の応募者が集まる」「ディズニーではバイトがバイトを指導する、現場の責任者に代わって、バイトたちに仕事の手順やスキルを教えるトレーナーと呼ばれるキャストも主にバイトから採用」し、「“すべてのゲストにハピネスを提供する”というディズニーの“ミッション”を浸透させるべく、朝礼・終礼はもちろん、口癖のように正しいミッションを繰り返させる」などの従業員教育が成功の秘訣だというのだ。

 ただし、これらは、ディズニーという“夢の国”だからこそ成し得てしまう魔法の教育ではないかという疑問が、読者の間には当然のようにわいてきた。

キャストに責任転嫁する3つの“魔法の言葉”

 実は、こうしたビジネス書には書かれていないが、ディズニーリゾートの現場では、システムをうまく機能させるための3つの“魔法の言葉”があるという。その3つとは「体調管理もあなたの仕事」「あなたのレベルが低いから」「あなたの根性が足りない」。夢の国とは縁のなさそうな“魔法の言葉”だが、いったいどういう意味なのだろうか?

 ユニオンが、こう解説する。

「パレードを例にとってみましょう。前提として知っていただきたいのは、パレードの多くも臨時雇用者で成り立っているということです。まず、その日、キャラクターの中に入ることが割り当てられたキャストであれば、キャラクターの着ぐるみは猛暑対策用に改良されていないために、自分で瞬間冷却材を用意するなどしなくてはなりません。ただ、キャラクターの中に瞬間冷却材を用意しても、パレードが始まる前の段階で、その効果はなくなってしまい、余計に重たくなります。その結果、熱中症になっても、オリエンタルランドの社員からかけられる言葉は『体調管理もあなたの仕事』というわけです」

 本来であれば、従業員厚生を促すような「体調管理もあなたの仕事」というフレーズも、オリエンタルランドでは責任転嫁の言い訳に使われているようだ。

「また、パレードなどのエンターテインメント系も、あらかじめのトレーニングはわずかしかなく、実践で覚えろというのが基本スタイルです。このために、本番でミスをしたり、ケガをした場合には『あなたのレベルが低いから』と罵られるのです。同様に、病気になった場合には『あなたの根性が足りない』といった言葉が投げかけられます。こうした職場では『なんでも悪いのは自分』という雰囲気が醸成され、その結果、精神的に追い込まれて『NO』が言えない雰囲気になっていくのです。かといって、よりレベルを上げるために練習をしようと施設でトレーニングをしていると、『仕事と関係ないことをするな』と注意を受けます。もちろん、個人的なトレーニングの時間は時給に入りません。しかし、施設でケガをされても困るというわけです」

 最も深刻な状況なのがダンサーだという。学校の教育現場でもダンスは必修化され、ディズニーリゾートも「エンターテイナー オーディション」という大々的なオーディションを行い、ダンサーには力を入れているはずだが……。

「ダンサーは特別なオーディションを受けなければならず、数カ月にわたり拘束されます。そのうえ、いざ合格しても、舞台に立てるまでには何回もレッスンを受け、仕事は1日3~4時間の時給労働(パレードのみ)なので、稼げても月に数万円で、生活が安定しないのです。また、アルバイトと同様の扱いで、出演予定の当日になって仕事がなくなることもあります。生活面の不安から他の仕事と掛け持ちするようになり、ダンスの練習にかける時間がどんどん減っていき、皮肉なことに本当に“(ダンスの)レベルが低い”とゲスト(客)から指摘されてしまうのです。それで転職しようにも、合格した時点ではダンサーの卵にすぎず、パレード用の最小限のダンスしか習得する機会を与えられていないので、なかなかつぶしが利きません。履歴書には『ディズニーリゾートで働いていた』と書くことは認められておらず、転職の際に自己アピールもしにくいのです」

「体調管理もあなたの仕事」「あなたのレベルが低いから」「あなたの根性が足りない」という3つの“魔法の言葉”とは、責任転嫁するための、まさにブラック企業のロジックではないか。

 こうした話を聞くと、感動とは別の意味で、パレードは涙なしに見られなくなる!?

キャスト同士による“落とし合い”

 さらに、オリエンタルランド側は、キャストの意欲を高める活動として“褒める”活動があると宣伝することが多い。持ち場や上下関係にかかわらず、キャスト同士が互いに褒めるカードを送り合うというシステムで参加意欲を高めようというのだが、そのウラではストレスのはけ口としての陰湿な“落とし合い”がある。

「あるキャストが気に食わないと、別のキャストが正社員にクレームをつけた場合、名指しされたキャストは、ベテランのユニバーシティリーダー(インストラクター)クラスでさえも簡単に降格やクビにされます。ちょっとしたトラブルがあるだけで、正社員は問題解決と称して、安易にクビを切ろうとするのです。ですからキャスト間の関係は常にピリピリしています。しかも、数年前にディズニーの人材教育礼賛本が続々と出版された頃から、ゲストからのクレームも激しくなっています。ゲストから名指しのクレームを受けると、問答無用で降格やクビになってしまいます。ゲストのみなさんにも知っていただきたいのですが、問題の本質はキャストの対応ではなく、オリエンタルランドのキャストを使い捨てにするシステムなのです」

 筆者は、学生の夏休み期間中で大いに賑わっているディズニーランドに行ってみた。数年前には目立たなかった乱立するポップコーンのワゴンに長い列をつくるゲストたち、応対するキャストたちは力のない笑顔。キャストの微笑みのなかに翳りが垣間見えるのは、猛暑の疲れのせいだけではなさそうだ。パレードでのミッキーの「ハピネスはここにあるよ」というセリフがむなしく響くばかりだ。
(文=松井克明/CFP)

松井克明/CFP

松井克明/CFP

青森明の星短期大学 子ども福祉未来学科コミュニティ福祉専攻 准教授、行政書士・1級FP技能士/CFP

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