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広木隆「僕にも言わせろ~真説 経済のミカタ」(9月17日)

欧州経済、独り負け&デフレ深刻で日本化 量的金融緩和へ舵切り、本格突入の観測高まる

文=広木隆/マネックス証券チーフ・ストラテジスト
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 しかし、市場というものは性急で、早くも追加緩和の催促が始まっている。すなわち、ABSを対象とした資産購入プログラムではなく、日米の金融当局が行ってきたような国債を買い入れ対象とする「ソブリンQE(量的緩和)」の実施である。

 量的緩和の定義は明確には定まっていないが、仮に「中央銀行がそのバランスシートを拡大すること」と定義すれば、これまでECBがとってきたスタンスは量的緩和の正反対であるバランスシートの縮小だった。

 これは、11年末から実施したTLTROの返済を受けてきたためである。今回のABSを対象とした資産購入プログラムの規模感は不明ながら、TLTROの実施と併せてECBのバランスシート拡大に寄与するだろう。マリオ・ドラギ総裁は会見で、ECBのバランスシートを12年初めの水準に戻すと述べた。そうすると現在2兆ユーロのバランスシートを2.7兆ユーロ程度まで膨らませることになる。7000億ユーロの量的緩和を示唆したともとれる。問題は方法論である。ABSだけでは足りないだろう。それが「ソブリンQE(量的緩和)」発動観測を生む要因になっている。

 トリシェ氏は、フランスの詩人ではマラルメが最も偉大だと述べている。マラルメの詩の一節に以下のようなものがある。

「誇らしい自負心は みな 夕暮れに
 風に消される松明の焔と煙り
 永劫不滅のその息吹も つひに
 遺忘に抵抗することができない」

 誇り高きドラギ総裁もQEを実施せざるを得ないか。いわずもがなだが、QEとは通貨価値を貶める政策である。通貨の番人の自負心も、「永劫不滅のその息吹」も、ついに「遺忘に抵抗することができない」のだろうか。注目の次回ECB理事会は10月2日に開催される。
(文=広木隆/マネックス証券チーフ・ストラテジスト)

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