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織田直幸「テレビメディア、再考。」第4回

なぜテレビのデモ報道は“過小報道”になってしまうのか?(前編)

文=織田直幸
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なぜテレビのデモ報道は“過小報道”になってしまうのか?(前編)の画像1首相官邸前の反原発デモ
(撮影=野口恒)

 テレビが持つ意味や価値が大きく変わってきた。大衆への影響力はいまだ強く残るものの、ネット上では、その一面性や権威性、商業性などが批判の的となっている。「メディアの王様」の座が揺らぎつつあるテレビに求められる変革とは何なのか? キーマンたちへの取材を通して考える――。

 友人からこんな話を聞いた。

 今年6月中旬、首相官邸前デモが徐々に数万人規模へと膨らんでいっていた時、彼はとある民放地上波キー局の広報に電話をし、「あんなにたくさんの人が抗議活動をしている首相官邸前デモを、テレビはどうして取り上げないのか?」と尋ねた。

「デモは昔からある。新しい事象ではない。だからニュースにはなり得ない。テレビが報道として扱う事象は、新しくならなければならない」

 そう言われたそうだ。

「いくら相手が一般人だからといって、そんな嘘をつくのはどうなのか?」

 私は正直そう思った。それなら交通事故はどうなのか。交通事故はほとんど毎日のようにテレビで取り上げられているが、交通事故は昨日今日に始まった“新しい事象”なのか。この広報の方が言ったことは、子ども騙しの嘘だと思う。

 このテレビ局広報の人は、なぜこんなにどうしようもないロジックを使ってまで「テレビでデモは報じるに値しない」と言わなければいけなかったのだろうか。むしろ、私にはそちらの方に関心があった。

 もちろん、テレビが国内デモを一切取り上げてこなかったわけではない。特に今年7月の首相官邸前デモあたりから、テレビメディアもそれなりに取り上げるようにはなってきている。

 今年6~8月くらいまでの間に各局がこのデモをどう取り上げてきたのかは、以下のサイトに詳しいレポートが掲載されている。

『テレビは 反原発官邸前抗議行動をどう伝えてきたか/放送を語る会モニターグループ~「薔薇または陽だまりの猫」』

 たしかにこの首相官邸前デモ以降、各局それぞれがそれなりに報道し始めた。しかし、2011年原発事故以降のデモは、それこそ昨日今日に始まったことではない。3.11から半年後の昨年の9月11日『新宿デモ』では数万人規模の人が脱原発デモに参加、15名以上の逮捕者も出した。さらに翌週の9月19日には5万人以上の人が同じ趣旨のデモに参加した。しかしこのタイミングで、テレビはデモをほとんど報じなかったと思う。

 繰り返すが、テレビが昨年から今に至るまで、一切報じてこなかったわけではない。しかし、やはりその扱いはどう考えても軽すぎるように私は感じていたし、一言で言えば“過小報道”だとも感じていた。それは単に原発関連企業がテレビの大スポンサーだからといった単純な理由からだけではなく、もっとメディア側に内在するいろいろな問題に端を発しているように私には思えた。

『なぜテレビメディアのデモ報道は“過小報道”になってしまうのか』

 私はここにこだわってみることにした。まず、その手掛かりとして、最も国内デモがさかんだった1960~70年代、テレビメディアはデモをどう報じていたのかを見ておきたい。その時代から継続する普遍的問題をそこに見つけられるかもしれないと思ったからだ。

●60〜70年代、テレビはデモとどう向き合っていたか

 60~70年代のテレビメディアとデモ報道について、まずTBS諌山修さんにお話をお伺いすることにした。諌山さんは1961年にTBSに入社後、63年に“日本で最初のニュースショー”と言われた『ニュースコープ』を立ち上げた。その後『テレポート6』のデスク、85年にロンドン支局長を歴任後、89年に帰国し『ニュース23』プロデューサーになった。故・筑紫哲也さんの出演を口説いたのも彼だ。定年した今も『サンデーモーニング』ゲートキーパー(放送前の最終チェック)として、活躍されている。

織田直幸

織田直幸

株式会社ゼロ社・代表取締役。プロデューサー/編集者

2012年8月、㈱カンゼンから書き下ろし小説、テレビメディアの崩壊と再生を描いたアクション小説『メディア・ディアスポラ』が上梓された

メディア・ディアスポラ

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Twitter:@aikidouzuki

『メディア・ディアスポラ』 織田氏しか書けないテレビメディアのリアル amazon_associate_logo.jpg

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