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橋は20年後に約半数が老朽化、現在の予防点検は目視がメイン…

トンネルより深刻…急増する老朽インフラの実態と巨額コスト

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トンネルより深刻…急増する老朽インフラの実態と巨額コストの画像1イメージ画像(「Thinkstock」より)
 中央自動車道上り線・笹子トンネルの天井崩落事故は、9人の死亡者を出す大惨事となった。「天井板を支えるつり金具を固定していたボルトが、地下水により腐食した。古くなり振動で緩んだ等の原因で抜け落ちた可能性が高い」(トンネル設計の専門家)とみられており、国土交通省は高速道路6社に対し、つり天井式トンネルの緊急点検を指示した。しかし、同じような天井式のトンネルは全国の高速道路で40本、国道で9本もあり、一斉点検は容易なことではない。

 特に笹子トンネルは、今年9月の詳細点検で異常がないとされていたが、事故の原因とみられるトンネル最頂部は、目視のみで打音点検は行われていなかった。その一方、「4年前の関門トンネルの天井取り換え工事では、つり金具の変形や破損がいくつも発見されていた」ことも明らかになっており、点検に瑕疵がなかったかも問われる。いずれにしても、過去に例を見ない今回の事故は、「高度成長期に急ごしらえで建設された社会インフラの老朽化」をはからずも浮き彫りにした格好だ。

 笹子トンネルが開通したのは1977年、高度成長期の末期にあたる。問題となったつり天井も、「当時の自動車は排ガスがすごく、その換気のために必要な構造」(トンネル設計の専門家)であった。いわば高度成長期の遺産といっていい。日本では、社会財がことごとく廃塵ときした敗戦から、1960年代の高度成長期にかけて、高速道路やトンネル、橋などのインフラ、公共施設といった社会資本が一斉に整備された。その後もバブル期、バブル崩壊後の景気対策を通じて公共投資は膨らみ続けた。

 そして現在、それらが徐々に耐用年数を超えて老朽化し、更新時期を迎えようとしている。総務省の調査によると、老朽化の目安とされる建築後50年が経過した橋は、現在の8%から20年後には約53%に、同じくトンネルは18%から46%に達すると試算されている。さらに、法定耐用年数の40年を超える上下水道施設は、現在の13%から20年後には約60%に増えるという。これら老朽化した社会資本の維持・更新にかかる費用は膨大で、急カーブを描いて上昇する。その規模は2030年代初頭に10兆円を超え、50年代には20兆円に達すると予想される。

 笹子トンネルの崩落事故は、こうした老朽化インフラへの懸念が高まろうとしていた矢先に起こった象徴的な事故といえるが、実は、全国的に老朽化が進む社会インフラの中で、「最も危険性が高く、補修コストが嵩むのは橋梁」(建設アナリスト)といわれる。危機はトンネルにとどまらないのだ。

 そこで国土交通省では、07年度に「長寿命化修繕計画策定事業」を策定し、自治体による橋梁の点検・修繕作業を後押ししている。同事業は橋梁が壊れてから修繕するのではなく、予防的に保全することで長持ちさせるというもので、同省に対し、点検・修繕計画を提出すれば、修繕や架け替え費用が補助される。すでに多くの自治体が同事業による補助を受け、点検・修繕に乗り出している。

 だが、橋梁の点検は、橋の上を自動車が通行している状態で行わなければならないという難しさがある。一部では赤外線カメラで橋を側面から撮影し温度差から異常を検知するシステムや、光ファイバーを橋に這わせてその共振などのデータでひずみを検知するシステムなど先端技術も導入され始めているが、通常は双眼鏡による目視点検がほとんど。橋の劣化を完全に把握することは至難の業だ。

 東日本大震災では、津波の被害がなく、現在の耐震基準である震度7に満たなかった地域でも、数多くの公共財が被害を受けた。背景にあるのはいずれも老朽化にともなう施設の劣化に他ならない。建設後数十年を経過し、劣化したこれらの公共施設をどう修理し、維持管理していくかは国民の安全と直結する。

 だが、公共事業は過去10年間で4兆円削減され、10、11年度も前年度比で2ケタの減少となっている。

笹子トンネルの崩落事故は、経済効率ばかりが優先される公共事業の危うさに警鐘を鳴らしている。
(文=森岡英樹/金融ジャーナリスト)

BusinessJournal編集部

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