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「ダイヤモンド」vs「東洋経済」! 経済誌双璧比べ読み(4月第5週)

パナは売りでソニーは買いに がけっぷち家電3社、1年前の特集と比較で見えた明暗

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復活なるか!?(「Wikipedia」より
撮影:Shuichi Aizawa from Tokyo, Japan)
毎日の仕事に忙殺されて雑誌を読む間もないビジネスマン必読!今回は「週刊東洋経済」の特集をピックアップし、最新の経済動向を紹介します。

 「週刊東洋経済 4/27・5/4合併号」の特集は『死んでたまるか! 日本の電機』だ。「工場再編、事業譲渡、資産売却……。電機業界の敗戦処理が続く。一方で、再生につながる芽もおぼろげながら見えてきた。2013年、電機の最終的な浮沈が懸かっている」という業界特集だ。

 電機業界の現状を知るためには、ちょうど一年前の特集から簡単に振り返りたい。「週刊東洋経済 2012年5/19号」の第一特集は『ソニー シャープ パナソニック ザ・ラストチャンス』だった。日本を代表する家電御三家ソニーシャープパナソニックが11年度の決算が3社とも過去最悪の最終赤字に転落し、ともに新社長に交代し、がけっぷちを迎えていたのだ。

 ソニーは前CEOのハワード・ストリンガー体制下で、ブラウン管テレビでは世界最大手だったために液晶パネル事業で出遅れ、テレビ事業での営業赤字は12年3月期までの8年間で計6000億円以上に達していた。このために、平井一夫新CEOが就任したが、音楽・エンタテインメント畑の出身で、80年代バブル時代のソニー黄金期をほうふつとさせるエピソードの数々を当記事では当惑気味に紹介した。

 パナソニックも00年代の流れを読み違えていた。00年代半ば、時代は液晶パネル事業が主流になっていくにもかかわらず、プラズマパネルに巨額の投資を続けた。プラズマ世界一を目指し、兵庫県尼崎市に巨大工場を次々と竣工させた。この巨額投資を決断した中村邦夫元社長、大坪文雄前社長に対し、「すぐに閉鎖すべきだ」と進言した津賀一宏専務が新社長に就任した。

 そして、シャープは液晶パネル事業の波には乗ったが、世界的な競争による低価格化と円高の影響で、採算のとりやすい大画面市場に打って出たが、顧客として当てにした北米市場で不況になり、その影響をモロにかぶってしまったのだ。台湾の世界最大のEMS(電子機器受託製造サービス)である鴻海(ホンハイ)グループがシャープへの資本参加に名乗りをあげ、交渉が始まった。鴻海は売上高9.6兆円、年商の4割がアップル社であり、事実上、シャープはアップル陣営のなかに組み込まれた。このため、技術畑出身の奥田隆司社長の力量が問われていた。

 では、1年後の現在はどうなっているか。

 まず、ソニーは、4月25日、12年度(13年3月期)の連結業績予想を上方修正し、2月に1300億円と予想していた営業利益が2300億円になる見通しだと発表した(前期は673億円の赤字)。円安などで売上高が増える上、米本社ビルなど資産の売却による利益が想定を大幅に上回ったためだ。

 パナソニックは、兵庫県尼崎市の工場の生産を停止したものの、リストラ関連費用も膨らみ、2年連続で7千億円を超える最終赤字を計上する見込みだ。シャープは、鴻海との出資条件をめぐり交渉が決裂、韓国サムスン電子との提携にこぎつけた。自社の液晶テレビ販売を縮小したほか、12年12月に2960人が希望退職した。営業損益は下期(12年10月~13年3月期)に限れば、黒字に転換した模様だ(産経新聞29日付「電機大手どうなる『通信簿』 脱デジタル家電で明暗」)。

 今号の特集『<シャープ> iPhone5Sも期待薄』にあるように、シャープはいまだ綱渡り状態だが、ソニーとパナソニックは円安とアベノミクスで回復しているかのように見える。ただし、今号の記事『御子柴史郎/野村証券アナリスト パナは売り、ソニーは買い』とあるように、明暗がくっきり分かれつつある。

 特集記事『<ソニー> テレビ10年ぶり黒字化 当面の食いぶちはスマホ』にあるように、スマホ中心の「携帯機器」、デジカメなどの「映像機器」、そして「ゲーム機」の3部門を重点分野に据えた平井社長は技術力にこだわり、スマートフォン(高機能携帯電話)「エクスペリアZ」を発表。部門連携で生まれた高性能なカメラ機能を持つ、エクスペリアZを通信会社のトップが「イチオシの商品だ」とコメントし、2月9日の発売以来、6週連続で国内の携帯電話販売台数でトップを記録した。復活ののろしをあげつつある。

 1年前の「週刊東洋経済 2012年5/19号」の特集のなかでも『ソニーを救うのはスマホしかない!』という提言記事が掲載されているが、その提言に乗った形の平井社長路線は意外に堅実かもしれない。

 一方で、バクチのような賭けの手に出たのが、パナソニックだ。特集記事『<パナソニック> 『自動車で2兆円』の実現性 B2B大強化宣言の本気度』によれば、「テレビで苦杯をなめたパナソニックが自動車分野で再起を図る。約1兆円の売上高を5年後には倍にしてみせる」という。

「パナソニックの強みは家電事業にあった。その技術をうまくB2Bに生かせばいい。たとえばオートモーティブ(車載関連)事業と白モノ家電は一見、まったく関係ないように見える。しかし、車載用エアコンはどの部品メーカーでも作れるわけではない。パナソニックが強みを持つ領域は広く、ユニークだ」

「B2Bでフォーカスを合わせている事業の一つが自動車関連。今、われわれがカーメーカーそのものになる気はない。将来なるかもしれないが。ティア1、ティア2という部品事業をやっており、長年培ってきたお客様との信頼関係があるので、安心して投資できる。同じく航空機産業も大きな成長が見込める」

 と、津賀社長は東洋経済記者に語っているほどだ(東洋経済オンライン『パナソニック、「脱家電メーカー」への決意 津賀社長が語る、目指すべき姿』2月4日付)。米GMとの共同開発に合意したほどで、中期的な重点施策としては、自動車産業や住宅産業向けなどの「BtoB事業」を強化するのだという。

 売上高を「5年後には倍にしてみせる」という津賀社長。5年後はパナソニックは創業100年を迎える。その頃にはパナソニックは電機メーカーではなく、自動車部品メーカーになっているのかもしれない。
(文=松井克明/CFP)

BusinessJournal編集部

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