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経済改革のリーダーとなるか、政商でとどまるか…?

楽天・三木谷、薬ネット販売解禁推進の一方、なぜ通信国有化賛成?政商化懸念の声も

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(撮影: Guillaume Paumier「Wikipedia」より)
「三木谷君は、もはや政商だな」

 経済界からは、そんな声が聞こえてくる。

 三木谷浩史・楽天会長兼社長が代表理事を務める新経済連盟(新経連)は7月4日に公示される参院選で、インターネットやIT活用の規制緩和を推進する候補者を応援する。新経連はインターネット関連企業がつくる経済団体である。

 医薬品のネット販売の全面解禁や、物品売買時の対面・書面交付原則の撤廃に賛同する候補を支援する。三木谷は自ら応援演説に立つつもりだ。

 一般用医薬品(市販薬)のインターネットでの販売解禁問題は、副作用のリスクが高いとされる一部を除き、原則解禁することで決着がついた。安倍晋三首相の「全面解禁」の方針を踏まえ「消費者の安全性を確保しつつ、適切なルールのもとで行う」と計画書に明記し、ネット販売に踏み出す。

 インターネットによる市販薬の販売と、参院選からのネット選挙を解禁すること。三木谷は政権発足直後から安倍に強く求めてきた。市販薬のネット販売の解禁問題は、参院選に向けての思惑がぶつかった。

 株価が乱高下し、アベノミクスの危うさが指摘される中、首相周辺は「市販薬の全面解禁を断念すれば、改革が後退したとの印象を与える」と判断。解禁を規制改革のシンボルと位置付けた。

 自民党内には「無理してネット販売解禁を行えば、医薬品関連業界の反発を招き、参院選に打撃になる」との懸念が出ていた。安全対策の議論を置き去りにしたまま、参院選にプラスかマイナスかで党内の調整が続いた。

 政府の産業競争力会議で民間議員を務める三木谷は、ネット販売解禁をめぐる議論が進まないことから揺さぶりをかけた。「市販薬の全面解禁が盛り込まれないなら、議員を辞める」と官邸に伝え、世耕弘成・官房副長官らが「辞めたら、経済人としての名がすたる」と説得に当たっていた。

 首相は「この程度の改革ができないようでは話にならない」として、「全面解禁」の方針を打ち出した。三木谷は「英断に感謝します」と首相にメールした。首相も「また一緒に仕事をしましょう」と返信したという。三木谷のブラフが効いたのだ。

 自民党が6月7日に開いた党内議論では、成長戦略の目玉である一般用医薬品のインターネット販売の原則解禁に、安全性の観点から反対意見が続出した。衆院議員の橋本岳は「衆院選の総合政策集で一般薬の安易な解禁を行わないと記述したのを覆すのか。自民党はいつから三木谷浩史楽天会長のポチになったのか」と痛烈に批判した。

 三木谷に振り回される安倍政権を「ポチ」と皮肉ったわけだ。それほど安倍政権誕生後の三木谷の行動は、政治色を濃くしている。

 三木谷の政商としての行動は極めてシンプルだ。

「市販薬のネット解禁に力を入れるのは、ネットショッピングの楽天市場で市販薬が買えるようになり、事業拡大につながるから。ネット選挙の解禁も同じこと。規制緩和論者のはずなのに、NTTを再々編し、通信インフラを国有化すべきと提唱して周囲を驚かせた。これだってインフラを国有化して安く使うほうが、楽天のメリットになるからだ。三木谷の判断基準は、楽天の収益につながるがどうか。とてもわかりやすい」(IT業界の若手経営者)

 半面、楽天の得にならないことには目を向けない。就職活動(就活)期間短縮の議論がそうだった。今の大学2年生(2016年卒業)から、就活の解禁が、現在の「3年生の12月」から、「4年生の4月」になる。面接などの選考開始も「4年生の4月」から8月に繰り下がる。

 4月解禁、8月選考開始となれば、大学3年生のときから会社説明会のスケジュールに追われることがなくなり、学業に専念できる。海外では夏まで授業のある大学が多いので、就活の出遅れを恐れて海外留学を見送る学生もかなりいたが、これで留学しやすくなる。グローバルな人材を求める企業にも就活の後倒しはプラスになる、というわけだ。

 大企業が会員となっている経団連などの経済3団体は、首相からの直接の要請を受けて、会員企業に周知した。ところが新経連の三木谷は「会員企業に要請することはない」と同調しなかった。「(こんなことをしたら)外資系に優秀な人材を採られてしまう」と周囲には言っていた。

 日本独自のルールを「ガラパゴス化」と呼ぶが、これを口を極めて非難してきたのが三木谷だった。ガラパゴス化とは、技術やサービスなど日本市場で独自な進化を遂げ世界標準からかけ離れてしまったものをいう。地球規模の競争から取り残されてしまう懸念が強い。

 就活の選考開始が8月になれば、海外の大手企業の新卒採用と重なる。優秀な学生は外資系に流れる。楽天にはメリットがないということらしい。一方ではガラパゴス化を非難しながら、自社に不利益をもたらしそうなグローバル化は認めない。こういった言行不一致は、三木谷が最も得意とするところである。

BusinessJournal編集部

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