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事故多発に経営悪化のJR北海道、地域観光に貢献で好調JR九州〜明暗分けたものとは?

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事故多発に経営悪化のJR北海道、地域観光に貢献で好調JR九州〜明暗分けたものとは?の画像1北海道旅客鉄道(JR北海道)本社(「Wikipedia」より/欅)

 日本国有鉄道(国鉄)から分割民営化され、1987年に発足したJR北海道JR九州の明暗は、大きく分かれた。

 JR北海道は先月10月19日の列車事故をきっかけに、線路異常などの整備不良が発覚。あまりのずさんな経営体質に国土交通省からは2度の改善指示を受け、経営は悪化する一方。すでに存続そのものも問われている。一方でJR九州は、九州新幹線開通をはじめ、独自で進める高級列車が大きな話題となり、経営も軌道に乗りかけている。

 国鉄は1987年に民営化され、6つの地域別旅客鉄道と貨物鉄道会社に分割された。しかし独立法人、鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)の100%子会社であるJR北海道、JR四国、JR九州の3島会社は当初から大幅な赤字体質であったため、国は3島会社に経営安定化基金を設置、この運用益で赤字補てんが行われた。JR北海道の基金は6822億円、JR九州は3877億円、JR四国は2082億円、合計すると1兆2781億円に上る。ただ、これらのお金は流用することができなことになっており、あくまでもこれを運用し、赤字の穴埋めをするためだけに使われる。金利は当初7.3%。運用利回りは1年間でJR北海道は498億円、JR九州は283億円、JR四国が151億円に上り、かなり巨額の持参金といっていいだろう。

 3島会社はこの資金を鉄道整備基金(現鉄道・運輸機構)に貸し付け、この金で鉄道整備基金はJR東海やJR東日本、JR西日本の新幹線の設備投資を行う。整備した新幹線をこれら3社に貸し付け、その金利を3島会社に支払うという仕組みだ。

「簡単にいうと、JR東日本、JR東海、JR西日本の3社が金利というかたちで、赤字補てん部分を3島会社に支払っているわけです。だから税金を使っているわけではないのです」(国土交通省関係者)

 そして巨額の持参金付きで民営化しなければやっていけなかった3島会社のうち、JR九州とJR北海道の命運は分かれた。

 JR北海道は1615億円ある株主資本のうち、利益剰余金を8億円毀損、一方でJR九州は2923億円ある株主資本のうち、利益剰余金を1044億円まで増やしている。つまり、JR北海道は経営安定化基金で赤字の穴埋めを行っているにもかかわらず、自己資本を毀損し経営悪化に向かっているが、JR九州は民営化以降自己資本を厚くし、経営の安定化を進めているというわけだ。両社の命運を分けたものは、いったいなんなのか?

●経営悪化招いたJR北海道の体質

 JR北海道は赤字企業とはいえ、鉄道、バスなど北海道内ではほぼ独占的に交通網を握っていた。加えて北海道は日本で1、2を争う観光の名所。そうした地の利を最大限に利用できれば、収益を改善し、優良企業となる道も十分あったのではないだろうか。

 しかし、なぜJR北海道は経営が悪化しているのか?

 地元関係者などに聞くと、その“親方・日の丸”の体質に大きな問題があるという。

「社員は仕事をしようという意識が非常に低く、例えば線路に草が生えていてもきれいにしようなんて考える従業員はいないといいます。社内に複数存在する組合間でのセクショナリズムも激しく、全体の8割を占めるJR北労組は別の組合所属の社員の結婚式にすら参加することができないそうです。一方で経営陣は財界活動や派閥抗争にうつつを抜かし、道内輸送では航空会社にばかり対抗意識を持ち、安全対策をおろそかにしてきた」

 こうした体質は、不祥事を起こした際の同社の対応にも表れている。

 例えば、今年7月にJR北海道の運転士が覚せい剤使用事件を起こしたのち、国土交通省北海道運輸局が抜本的再発防止策として全運転士(約1100人)に薬物検査をするよう同社に提案したが、同社はこれを拒否した。組合の反発が怖いから、安全対策がそっちのけになったというわけだ。実は5年前にも運転士らへのアルコール検知器検査を義務付けようとしたが、JR北労組の反対で自主検査扱いになったということがあった。組合は問題だが、それを説得できない経営陣の無責任さは、コーポレートガバナンスの欠如を招いたといってもいいだろう。

 そのような中で業績は悪化。1991年3月期には1050億円あった売り上げが、2011年3月期には826億円まで減少。これに長びくデフレ不況の影響を受けて、経営安定化基金の金利も7.3%から3.73%(JR北海道の場合は利回り換算で約254億円)まで下落した。

 JR北海道は採用抑制や自然減による人件費の削減で抑えようとし、91年には1万2060人いた従業員を7267人まで減らした。しかし、その弊害で「慢性的な人手不足となり、熟練工からの技術継承などもできなくなった」(地元関係者)という。

 11年5月にはJR石勝線でトンネル事故が発生し列車が脱線炎上、40人近い乗客が病院に搬送された。死者こそ出なかったが、一歩間違えば戦後最大の死者を出した北陸トンネル事故に匹敵する大惨事となるような事故だった。

 こうした事態に当時の社長、中島尚俊氏が抜本的な改革を進めようとしたが、JR北労組が反発し、さらに経営陣からも中島氏に対する風当たりが強くなり、中島氏は自殺してしまう。そして、中島氏とはライバルといわれてきた小池明夫氏が会長を兼務する形で社長を務め、その後はJR北海道の重鎮で、中島氏に影響力を持っていたといわれる坂本真一・北海道観光振興機構会長と通じる野島誠氏が社長に就任。しかし、JR北海道の経営が抜本的に改革されることはなく、

・13年4月:函館線で停車中の特急「北斗」の床下から出火
・同年5月:函館線で走行中の特急「スーパーカムイ」の床から出火
・同年7月:函館線で走行中の特急「北斗」の床下から出火

など次々に事故を引き起こしている。「中島さんの思いは結局、無にされてしまった」。中島氏と親しかった友人は、こう無念の思いを語る。 

 JR北海道は今、会社再建をめぐり抜本的な経営の見直しを迫られているが、すでに自民党内部からはこんな声が上がっている。

BusinessJournal編集部

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