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ブラック企業アナリスト・新田龍「あの企業の裏側」(1月29日)

若者を食い物にする労働マルチ 甘い言葉で誘い、違法な低賃金・長時間労働

文=新田 龍/株式会社ヴィベアータ代表取締役、ブラック企業アナリスト
若者を食い物にする労働マルチ 甘い言葉で誘い、違法な低賃金・長時間労働の画像1「Thinkstock」より

 「労働マルチ」という言葉をご存じだろうか。最近はインターネット上などで目にすることも多くなったが、そもそも「マルチ」という言葉自体が法的に定義されていないため、いわゆるネットワークビジネスのような「マルチ商法」との違いがわからないという声も多い。そこで、今回はこの労働マルチの仕組みとその違法性について考察していきたい。

 そもそも、マルチ商法とはなんだろうか。警視庁のウェブサイトによると「商品を販売しながら会員を勧誘するとリベートが得られるとして、消費者を販売員にして、会員を増やしながら商品を販売していく商法」と説明されている。

 商品として扱われるのは、化粧品、健康食品、健康器具などさまざまだ。そして、自分が勧誘した会員が商品を購入すると、その金額の数%が還元される仕組みになっている。

 「あなたが多くの人に商品の良さを伝えて、その人たちが商品を購入すればするほど、あなたの元には不労所得が入ってきます」

 こんな甘言につられて入会し、多くの商品を仕入れたり、友人を勧誘したりするようになる。しかし、思ったほど商品販売も会員勧誘もできず、結果的に借金や人間関係の破綻に悩まされるケースが多い。そのため、この商法は「特定商取引に関する法律」により「連鎖販売取引」として厳しく規制されている。

●労働マルチとはなにか?

 以上がマルチ商法の定義だが、今回のテーマである「労働マルチ」とはどういったものだろうか? 
こちらも明確な定義はないのだが、被害者や関係者の声を総合すると、以下のようになる。

 「『がんばれば高収入・好待遇が得られる』と説明されて、果物や雑貨の訪問販売に従事させられ、低収入で長時間労働を強いられるが、結果的に上層者に搾取されてしまう労働」

 具体的には、どのような流れで労働マルチが発生するのだろうか。まず労働マルチ企業は、求人情報誌やウェブサイトを通じて、以下のような求人広告を出すケースが多い。

 「セールスマーケティング、商品プロモーションのお仕事です」(未経験者歓迎!)
 ■正社員:月給20万円(税別)+交通費
 ■アルバイト:日給1万円(税別)
 ■委託業務:完全出来高制(売上金額の20~40%支給)

 これを見た求職者は「未経験でもマーケティングやプロモーションに携わることができて、月給20万円なら魅力的」と考えて応募する。そして、あっさりと面接まで進み、そこで面接官にスケールの大きな話を展開される。

 「未経験でも、がんばれば月給50万円、100万円稼ぐのも夢じゃない」
 「海外研修もあって楽しいぞ」

 こんな話に興味を抱いた求職者は、次のステップである「職場見学会」に申し込む。実際に、職場で先輩たちの仕事ぶりを見学するのだ。そこで、笑顔満開のリーダーに迎えられた求職者は、このように畳み掛けられるだろう。

 「この仕事には夢があふれている」
 「がんばって独立すれば、自由が手に入る」
 「君もリッチになりたいだろう?」

 そして、進んだ最終面接の席では、面接官から次のような選択を迫られる。

 「地味な固定給の仕事と華やかな完全歩合の仕事、どちらがいいですか?」

 その場で即決を迫られた求職者は、より稼げる可能性のある「華やかな完全歩合」のほうを選んでしまうのだ。それが、過酷な労働マルチの入口とも知らずに。

●自覚のないまま続く労働マルチ

 労働マルチの主な仕事内容は、雑貨や食品、青果の訪問販売である。雑貨にもいろいろあり、菓子やカー用品をはじめ、飲食店のクーポンやウォーターサーバーを扱う業者まで存在する。一般的な1日の流れは、以下のようなものだ。

 朝7時くらいに出勤し、チームミーティングを行う。前日の活動報告やリーダーからの講話などがあった後、その日販売する商品を受け取って営業活動開始となる。

新田龍/働き方改革総合研究所株式会社代表取締役

新田龍/働き方改革総合研究所株式会社代表取締役

労働環境改善による企業価値向上支援、ビジネスと労務関連のこじれたトラブル解決支援、炎上予防とレピュテーション改善支援を手がける。労働問題・パワハラ・クビ・炎上トラブル解決の専門家。厚生労働省ハラスメント対策企画委員。著書25冊。

Twitter:@nittaryo

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