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水野誠「マーケティングの進化学」

iPhoneとGalaxyは、なぜ「似て」くるのか?ポジショニング競争のパラドクス

文=水野誠/明治大学商学部教授
iPhoneとGalaxyは、なぜ「似て」くるのか?ポジショニング競争のパラドクスの画像1アップルのiPhone

 本連載前回記事では、「セグメンテーション」の意味はしばしば誤解されており、それは製品ではなく顧客を分割することであると書きました。実際そう理解したほうが、マーケティング戦略のもう1つの柱である「ポジショニング」との違いが明確になって好ましいといえます。ポジショニングとは、繰り返しになりますが「自分たちの製品やブランドが誰と競争するのか(競争しないのか)を考えること」です。

 顧客に対する戦略的な意思決定は、セグメンテーションとターゲティングの2段階に分かれています。しかし、製品・ブランドに対してはポジショニングの1段階しかありません。一見どうでもいいことのように思えるかもしれませんが、少なくとも筆者としてはアンバランスな感じがするので、以下のように整理してみます。

セグメンテーションとポジショニング

 顧客のセグメンテーションとは、潜在顧客をいくつかのグループ(セグメント)に分けることで、ターゲティングとはそこから優先するセグメントを選ぶことです。前者は全体としての構造を把握することで、後者はそこから狙うべき対象を選び取ることです。製品・ブランドに対する戦略的意思決定についても、このような2段階に分けることはできないのでしょうか。

 実は、ある市場の製品・ブランドを競争関係の強弱でサブマーケット(単にカテゴリなどと呼ばれることも多い)に分割する、市場構造分析とか市場の規定といわれる手法があります。これは、前回紹介したように製品セグメンテーションと呼ばれることもあるので、これを顧客に対する意思決定におけるセグメンテーションに相当するものと見なしても問題なさそうです。

 市場構造分析では、同じサブマーケット内では製品間の競争がより激しく、サブマーケットが異なると競争が弱くなるよう製品が分割されます。ただし、このような分割は、顧客のセグメンテーションほどうまくいかないことがよくあります。そうした場合、互いに大なり小なり競争し合う製品群を、1つの空間における位置の違いで表す方法がよく用いられます。お互いに競争しているほど近い位置になるよう、各製品の布置(マップ)を決めるのです。

 このようにして製品・ブランドの競争関係の構造を把握できたら、今度は顧客セグメントに対するターゲティングのように、攻めるべきサブマーケットなりポジションなりを選択します。これをポジショニングと呼ぶなら、以下の表のように、対顧客と対製品・ブランドの意思決定はいずれも2段階になります。

iPhoneとGalaxyは、なぜ「似て」くるのか?ポジショニング競争のパラドクスの画像2

 ただし、この表では市場構造分析とポジショニングの境界が破線で、しかも少し上にずれていることに注目してください。ふだんマーケターがポジショニングと呼ぶ行為は、製品・ブランドの競争構造の把握まで含むことがしばしばあります。つまり、ポジショニングという概念のあいまいさが、このようなズレを生んでいるということです。

水野誠/明治大学商学部教授

水野誠/明治大学商学部教授

明治大学商学部教授
、博士(経済学)東京大学。1980年筑波大学第一学群社会学類卒業。1985年筑波大学大学院経営・政策科学研究科修士課程修了。2000年東京大学大学院経済学研究科企業・市場専攻博士課程単位取得満期退学。株式会社博報堂(マーケティング局・研究開発局、1980~2003年)における勤務、筑波大学社会工学系専任講師、同大学大学院システム情報工学研究科専任講師、准教授(2003~2008年)、明治大学商学部准教授(2008~2014年)を経て現職

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