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理央周「マーケティングアイズ」

「数字の海」に溺れ、ビジネスで失敗する人々

文=理央周/マーケティングアイズ代表取締役、売れる仕組み研究所所長
「数字の海」に溺れ、ビジネスで失敗する人々の画像1「Thinkstock」より

 売り上げ、利益、コスト、リサーチデータ……仕事には数字がついて回る。数字の海の中から、自分に必要な情報だけを取り出すのは簡単ではない。

 私自身、マーケティングマネージャー時代にリサーチデータを眺めていると、細かい数字にとらわれがちになっていた。しかし、数字の大海原の中から、実際のビジネスに使えるヒントを見つけ出すのは、「見ている」だけでは始まらない。

 数字の羅列だけを見ていると、「木を見て森を見ず」になってしまうのである。意外と重要なのは、毎日同じ条件の数字を見ること、すなわち定点観測だ。そうすると、異常値が出た時にすぐに気づくことができる。

 例えば、110、117、108、130、107、111という数字が並んだ時に、「130だけ大きい」と気づく、といった具合だ。毎日の数字を計算式に入れて「平均より12上がった」「3下がった」という見方は不要で、「なんとなく上がったな」とわかれば、この時点ではOKである。

 重要なのは、その「上がった理由」を考えてみることだ。これを「仮説」と呼ぶ。仮説が見つかればしめたもので、次はその異常値がどんな条件で起きているのか、なんとなく見えてくるようになる。

「毎週木曜の午後に数字が上がる」「晴天の日だけ下がる」といった具合である。そこからどんどん仮説を立て、検証していくことで、自社や自分の「勝ちパターン」を作れるようになるのだ。

 数字を見るときは、まず

1.定点観測
2.異常値の発見
3.根拠を探る
4.仮説を立てる
5.検証する
6.アクションを起こす

 というステップを踏む。

 数字を続けて見ていると、急に売り上げや認知度が「上がった」「下がった」とわかるようになる。そうしたら、スピーディーに仮説・検証・行動を繰り返すのだ。

SNSを駆使したマーケティング

 私自身、起業家で個人事業主ということもあって、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を多用している。フェイスブック、ブログ、インスタグラム、ツイッターなどだ。基本的に費用がかからないという点において、中小企業の強い味方である。

 ここのところ、個人的にはツイッターが面白い。以前は、ブログを書くたびにツイッターでリンクをツイートしていただけだったが、140文字の制限の中で面白い投稿をしていたり、有益な情報を書いている人もいるため、ツイッターというメディアそのものを見直している。

 そのツイッターに、「ツイートアクティビティ」という機能がある。自分の各投稿の「インプレッション=表示された回数」と、「エンゲージメント=リツイートやリンクのクリックの有無など」がわかるというものだ。

 私の場合、インプレッションが多いのは深夜か早朝だ。その時間帯に見ているのは、やはりビジネス・パーソンだろうという仮説が立てられる。

 一方、エンゲージメントになるとまったく違っている。やはり、セミナー告知など「自分目線」のものより、ユーザーにとって「有益な情報」のほうがリンクのクリック率も写真の閲覧回数も多い。

 そうなると、「ビジネス・パーソンが見ている時間帯に、彼らの興味を惹きそうな画像とともに投稿すれば、エンゲージメントは高くなる」という仮説を立てることができる。

 そして、それ以降はまた定点観測を行い、この仮説が正しいかどうかを検証していけばいい。

 マーケティング活動の基本は「小さく生んで大きく育てる」というものだ。大企業が新製品を発売する際も、いきなり全国展開をするわけではなく、まずは地域限定でテストマーケティングを行う。

 その結果を踏まえ、良いところはそのままに、改善が必要な点は修正して、全国の市場に導入する、というステップを踏む。一点突破、全面展開なのだ。

 そのためには、日ごろから数値を見ておく必要がある。中小企業は本格的なリサーチをする時間も資金もないことが多い。しかし、お金も時間もあまりかけずに、毎日数値を見ているだけで発見できることがある。ホームページであれば、アクセス解析の「グーグル アナリティクス」を見ることが大事だ。

 マーケティング、というか経営やビジネスに王道はない。小さなことの積み重ねが大きな結果につながる。神は細部に宿るのだ。
(文=理央周/マーケティングアイズ代表取締役、売れる仕組み研究所所長)

理央周/マーケティングアイズ代表取締役、売れる仕組み研究所所長

理央周/マーケティングアイズ代表取締役、売れる仕組み研究所所長

●理央 周(りおう めぐる、本名:児玉 洋典)

マーケティング・コンサルタント、企業研修講師。1962年生まれ。静岡大学人文学部卒。フィリップモリスなどを経て、インディアナ大学経営大学院にてMBAを取得。アマゾンジャパン株式会社、マスターカードなどで、マーケティング・マネージャーを歴任。2010年に起業。収益を好転させる中堅企業向けコンサルティングと、従業員をお客様目線に変える社員研修、経営講座を提供。2013年より関西学院大学経営戦略研究科教授として教鞭をとる。著書は『「なぜか売れる」の公式』(日本経済新聞出版社)、『仕事の速い人が絶対やらない時間の使い方』(日本実業出版社)など。商工会議所や経営者会での講演、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌への出演、寄稿も多数。


マーケティングアイズ株式会社

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