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石堂徹生「危ない食品の時代、何を食べればよいのか」

遺伝子組換え食品、非表示で流通の恐れ 秘密裏で米国から圧力、支離滅裂な政府の説明

文=石堂徹生/農業・食品ジャーナリスト
遺伝子組換え食品、非表示で流通の恐れ 秘密裏で米国から圧力、支離滅裂な政府の説明の画像1TPP政府対策本部のHPより

 最終局面といわれるTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉で、食の安全・安心をめぐる重要なテーマの一つ、遺伝子組換え食品表示問題はどうなっているのか。米国が遺伝子組換え食品の表示は貿易の障害になるから廃止せよと、日本に圧力をかけているのではないかといわれる中、国民は不安をかき立てられている。この問題の背景には何があるのか――。
 

隔靴掻痒の思い募るTPP交渉説明会

 5月半ば、東京都内で内閣官房TPP政府対策本部による「TPP交渉に関する説明会」が開かれた。この説明会は、これまで関係団体(各種業界団体や消費者団体など)向けには公開されていたが、一般向けに公開されるのは今回が初めてだ。日本がTPP交渉に参加してからほぼ2年。この間、安倍政権は秘密保持契約【編注1】に基づく異例の「秘密交渉」の原則を盾に、情報公開には極めて消極的だ。そのため国民の多くはメディア情報の真偽のほどを確かめようもなかった。

 同説明会で担当の内閣審議官は「交渉は最終局面だと実感しているが、残された課題は結構あり、しかも難しい」としながら、物品市場アクセス(物品貿易の関税撤廃・削減)など交渉の21分野【編注2】について、一つずつ説明した。その中で、直接、食の安全・安心に関係するのが、SPS(衛生植物検疫)協定【編註3】と、TBT(貿易の技術的障害)協定の2つだ。いずれもWTO(世界貿易機関)協定に含まれている。

 もともと貿易交渉は、WTOでの多国間交渉で進められてきたが、先進国と途上国との対立激化などで、全会一致が原則のWTOでは交渉が難しくなってきた。そこで、世界的に2国間以上の地域で結ばれるFTA(関税などをなくす自由貿易協定)やEPA(FTAに加え、投資など幅広い経済連携協定)が主流となってきた。TPPはEPAの一つだ。

 FTAやEPAはたとえ2国間でも、互いに実質的にすべての貿易自由化を進めればWTOが目指す世界的な貿易自由化に近づくため、WTOの例外として認められている。つまり、TPP もWTO の枠内にあり、そのためにSPS協定とTBT協定もTPPの交渉分野とされたようだ。

 SPS協定【編注4】は、人や動植物の生命・健康を守るための措置(事態の対処に必要な手続き)が、貿易の不当な障害になることを防ぐためのルールだ。その対象は、(1)病原菌そのもの、(2)病原菌が入り込んだ動植物、(3)食品・飲料水・飼料に含まれる添加物や汚染物質(農薬・動物用医薬品の残留物、異物を含む)などだ。

 一方、TBT協定【編注5】は安全や環境保全を目的とする産品ラベル表示などを含む規格と、その認証手続きが貿易の不必要な障害にならないようにするためのルールだ。TBT協定の対象は工業品と農産品を含むすべての産品だが、SPS協定の対象は除くとなっている。遺伝子組換え食品はSPS協定の対象になっていないことから、TBT協定の対象になっていると考えられる。

石堂徹生/農業・食品ジャーナリスト

石堂徹生/農業・食品ジャーナリスト

1945年、宮城県生まれ。東北大学農学部卒。養鶏業界紙記者、市場調査会社などを経て、フリーに。現在、農業・食品ジャーナリスト

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