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碓井広義「ひとことでは言えない」

バカリズム脚本のドラマが超面白いワケ 鋭い人間観察と苦笑いが生む絶妙なエピソード

文=碓井広義/上智大学文学部新聞学科教授
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バカリズム脚本のドラマが超面白いワケ 鋭い人間観察と苦笑いが生む絶妙なエピソードの画像1『素敵な選TAXI』「関西テレビ 公式サイト」より

 昨年の連続ドラマ『素敵な選TAXI(センタクシー)』(フジテレビ系)の脚本で、「第3回市川森一脚本賞」の奨励賞を受賞したお笑いタレントのバカリズム

 6月23日には、バカリズムが脚本を手がけた単発ドラマ『かもしれない女優たち』(フジテレビ系)が放送された。

 今回は、この2本を振り返ることで「バカリズム・ドラマ」の魅力を探ってみたい。

よくできた連作短編集『素敵な選TAXI』

 昨年秋の放送時、いい意味で予想を裏切られた。「タイムスリップするタクシー? 脚本がバカリズム? 大丈夫なのか?」と思っていたが、ふたを開けてみると、いい具合に肩の力が抜けた癒やし系のSFドラマだった。

 なにかトラブルを抱えている人物が、偶然乗ったタクシー。それは、過去に戻れるタイムマシンだった。恋人へのプロポーズに失敗した売れない役者(安田顕)、駆け落ちする勇気がなかった過去を悔いる民宿の主人(仲村トオル)、不倫相手である社長と嫌な別れ方をした秘書(木村文乃)などが乗車する。

 映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』では、タイムマシンの役割を果たすのは、ガルウイングドアの「デロリアン」だったが、同ドラマでは40年以上前のトヨタ「クラウン」のタクシーというのがうれしい。

 運転手は“お久しぶり感”のある竹野内豊だ。制服にひげといういでたちで乗客の話をじっくりと聞き、彼らを「人生の分岐点」まで戻してくれる不思議なおじさんを飄々と演じており、ちょっとした新境地だった。

 乗客は過去に戻って新たな選択をするが、必ずしも事がうまく運ぶわけではなく、もうひと波乱ある。バカリズムの脚本は、そのあたりのひねりがきいており、よくできた連作短編集のような掘り出し物の1本だった。

後味のいいパラレルワールド『かもしれない女優たち』

『素敵な選TAXI』同様、この単発ドラマも「人生の岐路と選択」というテーマに挑んだ野心作だ。

 ヒロインは竹内結子、真木よう子、水川あさみの3人。女優として成功している彼女たちが、「あり得たかもしれない、もうひとつの人生」を競演で見せるところがミソである。

 例えば、現実の竹内は15歳で事務所にスカウトされたが、「もし、それを断っていたら」という設定でドラマが進む。大学を出て編集者になった竹内は、恋人との結婚を望みながら、なかなか実現できないでいる。

 また、女優志望の真木と水川は、アルバイトを続けながらオーディションを受けては落ちまくる日々だ。もうあきらめようかと思っていた頃、2人に思いがけない出来事が起きる。

碓井広義/上智大学文学部新聞学科教授

碓井広義/上智大学文学部新聞学科教授

1955(昭和30)年、長野県生まれ。メディア文化評論家。2020(令和2)年3月まで上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)。慶應義塾大学法学部政治学科卒。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。1981年、テレビマンユニオンに参加、以後20年間ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に『人間ドキュメント 夏目雅子物語』など。著書に『テレビの教科書』、『ドラマへの遺言』(倉本聰との共著)など、編著に『倉本聰の言葉――ドラマの中の名言』がある。

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