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高橋篤史「経済禁忌録」

ソニー創業家の没落 創業者の長男に「特別背任疑惑」、事業の失敗連続で盛田家の資産枯渇

文=高橋篤史/ジャーナリスト
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 ソニー創業者、故・盛田昭夫氏の長男・英夫氏(63歳)がいよいよ絶体絶命の窮地に追い込まれた。愛知県・知多半島で江戸時代から続いてきた名家・盛田家は、世界企業「SONY」を生み育てた栄光から一転、半世紀足らずで没落の縁に立たされたようだ。

 英夫氏にまつわる不祥事が公表されたのは11月6日。同氏が2005年から会長を務める東証2部企業、ジャパン・フード&リカー・アライアンス(JFLA、旧マルキン忠勇)が決算発表延期とともに開示した会計監査人からの通知・報告や独立調査委員会の報告書においてだった。それは“特別背任疑惑”とも呼べるような深刻な内容だ。

刑事事件に発展の可能性も

 報告書などによれば、概要はこうだ。JFLAは「モリタフードサービス」(名古屋市)という飲食会社に貸し付けを行っており、12年9月末でその残高は約2億5000万円に上っていた。モリタフードサービスは10年9月までJFLAの子会社だったが、その後は英夫氏が全額出資する米国ハワイの不動産会社「モリタ&サンズ」の傘下に移っていた。

 問題の取引が行われたのは12年10月のことだ。モリタフードサービスは一部事業を第三者に売却して代金3億3000万円を得た。その6日後、同社は受け取った代金の大半に当たる2億6000万円を、英夫氏が代表取締役を務める資産管理会社「盛田アセットマネジメント」(名古屋市)に貸し付けたのである。当時、盛田アセットには見るべき資産も収入もなく、貸付金が返済される見込みはないに等しかった(実際その後に返済はされていない)。これら一連の資金移動は英夫氏の意向によるものだった。

 JFLAのモリタフードサービスに対する貸し付け条件は不明で、かつ盛田アセットへの貸し付け目的も未解明だが、本来なら事業売却代金はJFLAへの返済に充てられてしかるべきだった。直近でもモリタフードサービスに対する貸付金は約2億3000万円が未回収のままだ。

 英夫氏から見れば、JFLAを筆頭にモリタフードサービスも盛田アセットもすべて自分の財布みたいなものだったのかもしれないが、外部株主の負託を受けて経営を執行しているJFLAの会長という立場に照らせば忠実義務違反・善管注意義務違反の誹りは免れない重大な行為である。

 一連の経緯がJFLA社内で大きな問題となったのは会計監査人による指摘が発端だった。今年8月、JFLAは弁護士からなる独立調査委員会を設置、10月中旬には報告書がまとめられた。その過程ではほかにも英夫氏の親密先に対する不透明なレコードマネジメント契約や業務委託契約なども問題事案として発覚していた。それに伴い過年度決算訂正の必要性も浮上。事ここに至った11月6日になり、JFLAは15年9月期決算の発表延期とともに8月以降の経過を洗いざらいオープンにしたというわけだ。

高橋篤史/ジャーナリスト

高橋篤史/ジャーナリスト

1968年生まれ。日刊工業新聞社、東洋経済新報社を経て2009年からフリーランスのジャーナリスト。著書に、新潮ドキュメント賞候補となった『凋落 木村剛と大島健伸』(東洋経済新報社)や『創価学会秘史』(講談社)などがある。

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