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南清貴「すぐにできる、正しい食、間違った食」

遺伝子「組み換えでない」にダマされるな!使用隠蔽が横行、食肉の飼料は100%

文=南清貴/フードプロデューサー、一般社団法人日本オーガニックレストラン協会代表理事
遺伝子「組み換えでない」にダマされるな!使用隠蔽が横行、食肉の飼料は100%の画像1「Thinkstock」より

 食肉生産の飼料には多くの場合、大豆トウモロコシが使われており、これらはほぼ全量、遺伝子組み換えです。しかし、食肉には飼料の表示義務がありません。飼料に遺伝子組み換え食品が使われた肉を食べるということは、間接的に遺伝子組み換え大豆やトウモロコシを食べることになりますが、表示義務がないため消費者にはわかりません。

「うちは大丈夫。ちゃんと原材料表示を確認して『遺伝子組み換えでない』と書いてある食品しか買わない」などと自信満々に言っている方は要注意です。それは、全重量中5%未満であれば、遺伝子組み換え作物が使われていても「遺伝子組み換えでない」と表示できる特例措置があるからです。この措置の意味は、まったく理解できません。

 EUなどでは、間違って混入することもあり得るということで、0.9%未満の原料については無視した表示が許されていますが、日本は不自然なまでに許容範囲が広いといえます。

遺伝子「組み換えでない」にダマされるな!使用隠蔽が横行、食肉の飼料は100%の画像2

 日本では、遺伝子組み換えでないという触れ込みで販売されている食品でも、EUでは遺伝子組み換え食品として販売されるケースがあるといわれています。たとえ5%でも、その安全性が確定しているわけではないのですから、表示したほうがいいのではないでしょうか。

 これは、遺伝子組み換え食品を使う企業の問題というより、むしろ監督官庁の問題が大きいのかもしれません。

 日本における遺伝子組み換え食品の表示が曖昧なのには、ちゃんと理由があります。実は、日本は世界でも最大級の遺伝子組み換え作物、あるいは遺伝子組み換え食品の輸入大国なのです。この由々しき現実を隠しておきたい、という意図がどこかにあるのでしょう。もし遺伝子組み換えに関して厳格な表示義務を課してしまうと、数多くの食品が遺伝子組み換え表示をすることとなり、消費者の猛反発を生むのが明らかだからです。

 現在、日本では遺伝子組み換え作物の商業栽培が禁止されています。しかし、現状のように消費者に気づかれないように使用しているということは、消費者の健康を損なっている可能性があるだけでなく、遺伝子組み換え作物の生産そのものを推し進め、やがてなし崩し的に国内で生産を承認することにつながっていくのかもしれません。

 実際に、商業栽培は禁止されていますが、遺伝子組み換え作物の実験農場は多数存在しています。さまざまな企業がそれに取り組み始めています。それが将来どのような結果をもたらすのかを考えるのは、政府でもなければ企業でもなく、私たち消費者自身ではないでしょうか。

大豆は栄養豊富な優良食材

 大豆をはじめとする豆類や穀物、ナッツを含む種子類の皮にはフィチン酸という物質があり、それが体内でミネラルと結合して吸収を妨げるからよくない、という意見があります。それは事実ですが、その短所を補って余りある効果効能があることもまた事実です。フィチン酸は5時間以上浸水させることで中和されますので、豆や玄米を食すときには最低5時間は水に浸けてから調理するというのを基本とすべきでしょう。

 一方、大豆から油を生産する場合に、浸水の工程があるというのは聞いたことがありません。ということは、フィチン酸が中和されないまま油に混じっている可能性がないとはいえません。油にフィチン酸が混入していたとしても、それがどれほど体に影響を与えるのかもわからないため良いとも悪いともいえないのですが、少なくとも筆者は大豆油を敬遠したいと考えています。

 大豆は昔から「畑の肉」「不老長寿の食材」などといわれてきましたが、それは大豆に含まれているレシチン、サポニン、イソフラボンなどの植物栄養素が、私たちの体に良い作用を及ぼすことがわかっていたからです。

 レシチンは、体内で消化吸収された後、肝臓で分解されてコリンという物質を生じます。このコリンは、大脳に送られアセチルコリンという物質をつくります。アセチルコリンは神経伝達物質といわれ、脳細胞のネットワークを強化して脳全体を活性化し、記憶力や創造力の減退を防いでくれます。

 サポニンは血管壁に付着している脂肪や余分なコレステロールを溶かし、血管そのものを丈夫にする働きがあります。血栓ができるのを防ぎ、心臓血管系や脳血管系の病気を予防する効果があるといわれています。

 イソフラボンは、女性ホルモン・エストロゲン様物質といわれ、さまざまな効果が期待されていますが、それらについては賛否両論あり、確定していません。男性の前立腺にも良い影響があるといわれていますが、個人差があるようです。

 大豆は確かに、私たちの健康に良い効果があるのですが、それにしても、これらの効果を期待するあまり、サプリメントで大量に摂取しようとするのは危険な行為だと忠告しておきます。どんなに良い物質であったとしても、過剰摂取は害があるということを承知しておいてください。自然な食べものの中から、体に必要な栄養素を適度に摂り込むのが最適(オプティマル)な食事のあり方だということを忘れてはなりません。

 私たちが日常的に食べる程度の量の豆(大豆を含む)で、体に害があるとは到底考えられませんが、豆を調理する時には5時間以上の浸水をお忘れなく。とはいえ、節分の豆まき用の豆まで浸水させる必要はないと思います。
(文=南清貴/フードプロデューサー、一般社団法人日本オーガニックレストラン協会代表理事)

南清貴

南清貴

フードプロデューサー、一般社団法人日本オーガニックレストラン協会
代表理事。舞台演出の勉強の一環として整体を学んだことをきっかけに、体と食の関係の重要さに気づき、栄養学を徹底的に学ぶ。1995年、渋谷区代々木上原にオーガニックレストランの草分け「キヨズキッチン」を開業。2005年より「ナチュラルエイジング」というキーワードを打ち立て、全国のレストラン、カフェ、デリカテッセンなどの業態開発、企業内社員食堂や、クリニック、ホテル、スパなどのフードメニュー開発、講演活動などに力を注ぐ。最新の栄養学を料理の中心に据え、自然食やマクロビオティックとは一線を画した新しいタイプの創作料理を考案・提供し、業界やマスコミからも注目を浴びる。親しみある人柄に、著名人やモデル、医師、経営者などのファンも多い。

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