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楽天の危機…停滞鮮明で成長「演出」に必死、ヤフーの猛攻でトップ陥落

文=編集部
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楽天の危機…停滞鮮明で成長「演出」に必死、ヤフーの猛攻でトップ陥落の画像1楽天本社(「Wikipedia」より/掬茶)

 楽天の中核事業、インターネット通販の楽天市場がヤフーに追撃されて停滞色を強めつつある。楽天市場の窮状が鮮明になったのが、楽天の2015年第3四半期(7~9月期)決算だった。証券関係者を驚かせたのは、公表された楽天市場の流通総額のデータ集計方法が従来より変更されたからだ。

 同期の国内グループ流通総額(商品取扱高)は1兆8743億円で、前年同期比20.9%増と高い伸びを示した。内訳は、Edy・楽天ポイントカード・クレジットカードの取扱高が同26.3%増の1兆1859億円。Edyは電子マネー楽天Edyによって決済された金額。国内EC(楽天トラベル含む)は同12.6%増の6884億円だった。

 証券関係者が首を傾げたのは、国内のEC総額にそれまで含まれていなかった宿泊予約サイト、楽天トラベルが追加されたことだ。市場では「国内のEC総額が伸びていると見せるため」と受け取られた。

 14年12月期の国内EC流通総額は前年同期比13.7%増の2兆100億円で、初めて2兆円の大台を超えた。11年に1兆円を超えてから3年での達成となった。楽天市場の1店舗当たりの流通総額は4810万円で、出店店舗数は4万1442店だった。

 15年から国内グループ流通総額と表示を変更。国内EC総額のほかに、Edy・楽天ポイントカード・クレジットカードの取扱高、楽天トラベルの予約流通総額が加わった。第1四半期(15年1~3月期)の国内グループ流通総額は1兆7379億円で前年同期比12.8%の増加。第2四半期(4~6月期)は同24.2%増の1兆8738億円。そして第3四半期(7~9月期)が同20.9%増の1兆8743億円だ。15年12月期の通期決算では国内グループ総額は7兆円の突破を高らかに謳うことになる。

横ばい続く

 しかし、楽天市場を中核とする国内EC流通総額は伸び悩んでいる。15年第1四半期は5079億円で前年同期比1.2%の減。14年まで2年間(平均16.7%)の高い成長がストップした。楽天市場の成長神話が崩壊した瞬間だ。

 第2四半期は同17.2%増の5341億円と持ち直したが、第3四半期が国内EC総額に楽天トラベルが加わり、流通総額は6884億円で前年同期比12.6%増という数字を公表した。

 では、楽天トラベルを除いた国内EC総額はいくらになるのか。楽天トラベルは15年に入り20%以上の高い伸びを見せており、第2四半期は同24.8%増の1978億円だった。第3四半期も同程度の取扱高だったと仮定すれば、楽天トラベル分を差し引いた正味の国内EC総額は5000億円程度になる。この2年間、横ばいの状態ということだ。

 楽天市場の停滞は出店店舗数に現われている。15年9月末時点のそれは4万2601店。14年12月末の4万1442店から1159店しか増えていない。

ヤフーの猛追

 ヤフーの第2四半期(15年7~9月)のeコマース国内流通総額は前年同期比18.5%増の3335億円。内訳は、主力のヤフオク!などオークション関連の取扱高が同5.8%増の2032億円、Yahoo!ショッピングなどショッピング関連が27.3%増の1139億円。買収したオフィス用品配達のアスクルのネット経由の取扱高が163億円だった。特にショッピング関連の取扱高が大きく伸びた。

 15年9月末時点のストア数(出店者数)は34万店。14年9月末の19万店から15万店、80%も増えた。商品数は1.2億点から1.8億点に49%増えた。上半期にカルチュア・コンビニエンス・クラブ、ソニー、大丸松坂屋百貨店が新規出店した。

 楽天市場とYahoo!ショッピングの出店者数に大きな違いが生じたのは、ビジネスモデルの違いによる。楽天市場は出店料で稼ぐ。出店料は月額1万9000円からとされ、さまざまなオプションなどを付けると年間出店料は実質58万2000円に上るという(15年5月29日付楽天出店サポートマガジン『楽天逆転プロジェクト』メール版『楽天出店で失敗しないために』より)。

 一方、Yahoo!ショッピングは売上手数料と出店料は無料で、広告収入で稼ぐことを基本にしている。有料か無料かで、出店数に大差がついた。

「無料」の衝撃

「きょうは革命的な内容をご説明する」

 ヤフーの親会社、ソフトバンク社長の孫正義氏は13年10月7日、Yahoo!ショッピングの出店者向けのイベントで講演し、Yahoo!ショッピングとヤフオク!の出店無料化を発表した。Yahoo!ショッピングのストア出店料(初期費用2万1000円、月額費用2万5000円)と売り上げロイヤルティ(売り上げの1.7~6.0%)を完全に無料化。ヤフオク!の出店料(月額1万8900円)も無料にした。

 出店のハードルを大きく下げ、出店者数、出品数を急拡大して19年までに楽天市場を抜き、国内ショッピングモール市場でナンバーワンになると宣言した。

 無料化にヤフーが払った代償は大きかった。14年9月中間決算(14年4~9月)の営業利益は1996年の創業以来、初めて減益となった。手数料収入がなくなる上にネット通販関連のプロモーション費用が生じ、半期で100億円の減益要因となった。

 半面、Yahoo!ショッピングの出店数は9月末で19万店と1年前の10倍に膨らんだ。楽天が運営する楽天市場の4.1万店を抜き、出店数で国内トップのショッピングモールになった。1年後の15年9月末、Yahoo!ショッピングの出店数は34万店。楽天市場は4.2万店。実に8倍の大差がついた。

 楽天の創業者で会長兼社長の三木谷浩史氏はここ数年、経営以外の活動が目立つ。主にIT企業などで構成される新経済連盟代表理事を務め、15年5月14日、自民党経済好循環実現委員会で150兆円の経済効果をもたらす政策提案「Japan Ahead」を説明した。

(1)インテリジェント・ハブ化構想(経済効果100兆円)、(2)最先端社会・スマートネイション(同20兆円)、(3)超観光立国(同30兆円)が3本柱である。(1)は日本をアジアのインテリジェント・ハブ(インターネットの中枢)にすることによってデータを制し、日本の経済発展につなげるという構想だ。

 日本発の次世代のトヨタ自動車のようなリーダー企業育成を提案した。具体的には、米国のグーグルやフェイスブック、中国のテンセントやアリババのような時価総額20兆円以上のリーダー企業をつくる必要があると説いた。

 次世代のリーダー企業に、楽天を想定していることはいうまでもないが、その同社の屋台骨事業の失速が鮮明になってきた。同社は正念場を迎えている。
(文=編集部)

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