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電気料金、自由化でさらに値上がりのおそれ…すでに英国では現実化

文=松崎隆司/経済ジャーナリスト
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電気料金、自由化でさらに値上がりのおそれ…すでに英国では現実化の画像1「Thinkstock」より

 電力の小売り自由化が今年4月から本格的にスタートする。すでに東京ガス、JXホールディングスなどガス会社や石油元売りをはじめ、ソフトバンク、KDDI(au)など通信会社なども名乗りを上げている。

 電力の自由化は1990年代から大口顧客を中心に進み、一般家庭もついに自由化の対象となった。新しい制度では発電と送電が分けられ、発電と小売りは自由に参入できるようになる。さらに送電は発電からは切り離される。

 発電事業には他業種から多くの会社が名乗りを上げ、火力をはじめ再生可能エネルギーなどさまざまな方法で発電が行なわれ、100以上の企業から電気を買うことができるようになる。すでにディスカウント合戦が始まり、毎日のように低価格を売りにしたサービスが名乗りを上げている。

「だいたい平均で5%程度、2年間の縛りなど一定の条件下で10%までの値引きが行われるとみられ、ポイント加算や電話料金の値引きサービスなども行われる。さらに環境問題に関心のある消費者は自然エネルギーを使った電気だけを使うなど、その人のライフスタイルにあった選択もできるようになる。まさにニーズの多様化した現代社会にとってはありがたいサービスだといえる」(エネルギー業界誌記者)

寡占化により料金値上がりも

 しかし、手放しに喜んでばかりはいられない。通信業界関係者は次のように語る。

「電力自由化で電気料金がどんどん安くなるように思われていますが、果たしてどうか。今は原油などの原料価格も大幅に下落しているので思い切った値下げができますが、今後は不透明。自由化で先行する英国などでは、逆に料金は高くなっています」

 電力自由化を世界に先駆けて行ったのは英国。サッチャー政権下で自由化を進め、1990年には中央電力公社が3つの発電会社と1つの送電会社に分割民営化、50社程度が新規参入して大口需要家から自由化が進み、99年には一般家庭向けも自由化された。

「最初は大手が幅を利かせていてなかなか価格が下がらなかったが、2002年からはより競争原理の働く制度に移行し、一時は自由化前より40%程度料金が下落しました。しかし、その後は熾烈な市場競争のなかで寡占化が進み、6グループに集約されました。これに燃料価格の暴騰などが加わり、04年からは再び小売価格が上昇しました」(電力業界関係者)

 04年と比べると、現在は2倍ぐらいになっているという。実は日本の電力自由化でも、似たようなことが起こり得る可能性を秘めている。

電気料金が下がっているのは、原油価格などが下落していることが大きい。これが再び上がれば、料金も上がらざるを得ない」(同)

 さらにこれまでの電力業界は地域独占だったことから、料金は国が認可する規制価格制度で決められていた。しかし、電力の自由化でこの規制が撤廃されることになっている。

「競争が激化すれば業界再編が過熱し、大手電力会社による寡占化が進む」(同)

 結果的には料金が高止まりしてしまうおそれがある。このようななかで、資源エネルギー庁関係者は次のように語る。

「英国の事情は十分に考慮しています。配電網は発電と切り離して、使用料は不公正がないよう国が管理します。法的な送配電の分離は20年までに行います。また、規制料金の撤廃も20年までに様子をみながら進めていきます」

 果たして電気料金は今後どうなっていくのか。注視していかなければならない。
(文=松崎隆司/経済ジャーナリスト)

松崎隆司/経済ジャーナリスト

松崎隆司/経済ジャーナリスト

1962年生まれ。中央大学法学部を卒業。経済出版社を退社後、パブリックリレーションのコンサルティング会社を経て、2000年1月、経済ジャーナリストとして独立。企業経営やM&A、雇用問題、事業継承、ビジネスモデルの研究、経済事件などを取材。エコノミスト、プレジデントなどの経済誌や総合雑誌、サンケイビジネスアイ、日刊ゲンダイなどで執筆している。主な著書には「ロッテを創った男 重光武雄論」(ダイヤモンド社)、「堤清二と昭和の大物」(光文社)、「東芝崩壊19万人の巨艦企業を沈めた真犯人」(宝島社)など多数。日本ペンクラブ会員。

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