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大江英樹「おとなのマネー学・ライフ学」

経営者、なぜヒラ社員より平均寿命長い?下級公務員の心臓病死亡者数は上級者の3倍?

文=大江英樹/オフィス・リベルタス代表
経営者、なぜヒラ社員より平均寿命長い?下級公務員の心臓病死亡者数は上級者の3倍?の画像1「Thinkstock」より

社長は社員よりも長生きするってホント?

 一説によると、社長、会長といった経営者は、社員よりも平均寿命が長いそうです。それもサラリーマン社長よりオーナー社長のほうが、ずっと長生きするというのです。

 これは、なんとなく不思議だと思いませんか? どう考えても、責任の重い社長のほうがストレスは大きいはずです。それもサラリーマン社長よりはオーナー社長のほうがずっと責任も重く、多くのプレッシャーを負っているはずです。

 おおげさに言えばオーナー企業の社長というのは、社員全員の人生を背負っているともいえます。社員の雇用を守り、毎月の資金繰りに苦労し、常に競争の中に身を置きながら、命を削るように仕事をしているのが社長という存在なのです。

 であるにもかかわらず、なぜ社長のほうが社員よりも長生きするのでしょうか?

 そしてこれは民間企業に限らず、公務員でも同じ現象があるそうです。あまり地位の高くない公務員の心臓病等による死亡率は、上級公務員の3倍も高いというのです。さらにいえば、階層が上に上がっていくほど平均寿命が延びるという実に不思議な現象が起きているというから、ますますわからなくなります。

理由は、選択の自由にあった

 この不思議な現象は、なぜ起きるのか?

 少し前に日本でも発売され話題になった書籍『選択の科学(原題:The Art of Choosing)』(シーナ・アイエンガー著/文藝春秋刊)に、その理由が書いてあります。

「ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジのマイケル・マーモット教授が、数十年にわたって指揮している研究プロジェクト、ホワイトホール研究は、選択の自由度に対する認識が健康に大きな影響を及ぼすことを、強力に実証する」(同書より)

 つまり、自分で物事を判断できる割合が高いほど、健康に良い影響を与えるということです。経営者は収入が高く責任も重いのですが、なんといっても自分自身や部下の仕事に采配を振るう、すなわち経営判断を求められるということは、選択の連続でもあるわけです。経営者にとって会社の利益に対する責任を負うことは大きなストレスになるのは間違いないのですが、それ以上に自分で考えて判断することができる、つまり選択の自由が与えられている快感のほうが、はるかに大きいということなのです。

 では、一般社員の場合はどうでしょう? サラリーマンというのは縦社会ですから、いくら自分で考えてアイデアを発案しても、上が認めてくれなければ、それは採用されません。サラリーマンのみなさんであれば、多かれ少なかれこういう経験があると思いますが、自分の考えが実行に移せないということ、これが実は非常に大きなストレスなのです。社長とまではいかなくても、会社の中で昇格して地位が上がると、それに伴う責任も増える代わりに権限も増大します。確かに責任が重くなるとストレスは増える一方で、権限が増大して、自分で判断できる部分が増えるほど、仕事も面白くなります。

 こう考えていくと、サラリーマン社長よりはオーナー社長のほうが長生きするというのもうなずけます。サラリーマン社長は結局、サラリーマンだった期間が長いわけですから、それだけ「自分の自由にならない」というストレスを負ってきたからです。会社を設立した時からずっと経営者としてやってきたオーナー社長とは、まったく違います。仕事に対する自己決定権の違いが健康に影響を与えるというのは、驚くべき事実です。

サラリーマンを辞めたらどうするか?

 サラリーマンでいる限りは、仕事における自己決定権を完全に持つことはできません。いうまでもなく組織においては、個人の意思よりも組織の意思のほうが優先されますから、これは当然のことです。

 では、サラリーマンを辞めたら、宮仕えのストレスから解放されるのでしょうか?

 私の経験からいえば、答えはイエスです。私自身、サラリーマンとして定年の60歳まで勤めた後、半年だけ会社の再雇用で働き、その後独立しました。会社を辞めて自分一人で仕事をするようになると、すべての世界観が変わってきました。

 もちろんリタイア後の生活の仕方には色々なパターンがありますが、仕事を続けるにせよ、完全にリタイアするにせよ、漫然と生きるのではなく、何か目的を持って暮らすのがよいと思います。そしてその目的達成のための戦略を自分自身で考えて、自分一人の責任で実行していく、こういう選択権を持つことが、健康を保つ上で大いに有効だと思います。

 もし会社を辞めて仕事を続けるのであれば、理想をいうと自営業が一番いいでしょう。仮に会社勤務を続ける場合でも、できるだけ自分の自由裁量の多い仕事を考えるべきだと思います。最近は定年した後にシニア起業をという人が増えてきているようですが、これは良いことだと思います。起業といっても大げさに考える必要はなく、少しお小遣いが稼げる程度でいいのです。

 それほど無理をせず、のんびりと自分のやりたいことを自分のできる範囲内でやるということが、きっと健康には良い影響を与えるでしょう。
(文=大江英樹/オフィス・リベルタス代表)

大江英樹/経済コラムニスト

大江英樹/経済コラムニスト

1952年、大阪府生まれ。野村證券で個人資産運用業務や企業年金制度のコンサルティングなどに従事した後、2012年にオフィス・リベルタス設立。日本証券アナリスト協会検定会員、行動経済学会会員。資産運用やライフプラニング、行動経済学に関する講演・研修・執筆活動を行っている。『定年楽園』(きんざい)『その損の9割は避けられる』(三笠書房)『投資賢者の心理学』(日本経済新聞出版社)など著書多数。
株式会社オフィス・リベルタス

Twitter:@officelibertas

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