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牧野知弘「ニッポンの不動産の難点」

平成バブル超え、マンション高騰…実需なき不動産投資、膨張の末の激烈な副作用

文=牧野知弘/オラガ総研代表取締役
平成バブル超え、マンション高騰…実需なき不動産投資、膨張の末の激烈な副作用の画像1日本銀行(撮影=編集部)

 金融機関による不動産業向け新規貸出額が急増している。日本銀行のデータによれば、2015年の国内銀行によるそれは総額で10兆6730億円と、平成バブルのあった1989年、ミニバブルともファンドバブルとも称された07年の水準を凌駕する状況になっている。リーマンショック後の09年には6兆9595億円と7兆円を切る水準であった。それがわずか6年の間に貸し出しは急回復。09年と比べて52%もの増加である。

 この背景にあるものは何か。平成バブルは、米国を中心とした諸外国から日本に対する内需拡大要求にこたえるための金融緩和による「過剰流動性」が原因だったといわれた。当時、日本経済は絶好調で、不動産は「買って売れば」儲かるもの。つまり、銀行はいくらでも資金を融通してくれるので「度胸のある」者が常に「勝者」となる単純なゲームであった。

 実際に地価は激しく高騰し、オフィスの賃料もマンションの分譲価格もうなぎ上りであった。日本社会はまだ若々しく、生産年齢人口と呼ばれる満15歳から64歳までの人口は8575万人、全人口に占める割合は69.6%、つまり人口の約7割が現役世代だ。当時の日本は、自国のマネーを自国内で貸し付けて成長を促すことができる「成長している」国であった。

 07年頃に生じたミニバブルは、平成バブルが一般事業法人に資金を貸し付けたのに対して、ファンドに対して不動産証券化の手法を使った資金が貸し付けられた。ファンドはノンリコースローンといって、投資対象の不動産のみに返済原資を限定するローンを金融機関から調達して、不動産投資を行った。

 このバブルは日本の不動産マーケットに「外資マネー」が流入することで引き起こされたものだ。それまで閉鎖的で、一部の大手不動産会社等によって独占されてきた不動産マーケットに投資という観点からメスが入ることで不動産の透明性が増し、REIT(不動産投資信託)などを通じて、個人などの素人でも投資用不動産を購入するチャンスが広がった。当時の日本はすでに人口の増加も止まり高齢化が進み始めていたが、国外からの投資マネーを利用して国内不動産の活性化を図ったものだったのだ。

不動産業向け貸出金増加の根拠

 そして今、不動産業向け貸出金は何を根拠に増加を続けているのだろうか。アベノミクスが掲げてきた円安・株高を促すことによる成長戦略は日本経済にとって一定のカンフル剤としての効果はあったようだ。大企業を中心とした企業収益は改善し、日本銀行や年金基金などの公的機関までをフル稼働した資金供給は株価を上昇させ、20年の東京五輪開催の決定も日本国民を「勇気づける」きっかけとなった。

牧野知弘/オラガ総研代表取締役

牧野知弘/オラガ総研代表取締役

オラガ総研代表取締役。金融・経営コンサルティング、不動産運用から証券化まで、幅広いキャリアを持つ。 また、三井ガーデンホテルにおいてホテルの企画・運営にも関わり、経営改善、リノベーション事業、コスト削減等を実践。ホテル事業を不動産運用の一環と位置付け、「不動産の中で最も運用の難しい事業のひとつ」であるホテル事業を、その根本から見直し、複眼的視点でクライアントの悩みに応える。
オラガ総研株式会社

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