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筈井利人「一刀両断エコノミクス」

タックス・ヘイヴン批判は間違っている…庶民に多大な恩恵、なくなれば生活が苦しくなる

文=筈井利人/経済ジャーナリスト

 世界のタックスヘイブン(租税回避地)の実態を明らかにした「パナマ文書」をきっかけに、課税逃れやタックス・ヘイヴンへの批判が国内外で高まっている。「税逃れはけしからん」という感情はわかる。しかし冷静に考えて、タックス・ヘイヴンの利用を許さず企業や株主への課税を強めることは、一般市民や日本経済にとって賢明だろうか。

 今月相次いで開催された先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議、主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)は、タックス・ヘイヴンを利用した課税逃れに結束して監視を強化することで一致した。

 憲法や安全保障など他の問題では対立する大手新聞も、この件に関しては一斉に税逃れを非難。インターネット上の世論も大半が同意見で、ツイッターや匿名掲示板は「タックス・ヘイヴン企業に対して逃れた分を追徴収しろ!」「タックス・ヘイヴンなければ教育の完全無償化が可能」などと憤慨する声であふれた。まさにタックスヘイブン憎し、税逃れ許すなの大合唱だ。

 しかし、こんなときこそ頭を冷やして考えてみたい。タックス・ヘイヴン叩きは、一般市民にとって本当に望ましい結果をもたらすだろうか。

 パナマ文書の報道で、かなりの人はタックス・ヘイヴンに対し、一部の欲深い人間が利用する怪しい場所というイメージを抱いたことだろう。しかし、そんなことはない。むしろビジネスの世界では欠かせない存在といってもいい。

 そもそも租税回避は、違法な行為ではない。合法である。それを踏まえ、たとえば金融の世界では、投資ファンドの組成などに広く使われている。投資ファンドといっても、超富裕層を顧客とするヘッジファンドなどだけではない。ごく一般的な投資信託も、ケイマン諸島や英領バミューダといったタックスヘイブンを登録地として多く利用する。投信の販売資料で目にしたことのある人も多いはずだ。

 事業会社でも、タックス・ヘイヴンに海外子会社やその統括会社を設立するなど、広く活用されている。大企業に限らず、中小企業も海外事業を営む機会が増えるにつれ、タックスヘイブンの利用は珍しくなくなっている。

一般市民は利益を享受

 たしかに多くの場合、これら企業や金融機関がタックスヘイブンを利用する目的を一言でいえば節税である。だが、それによって一般市民が迷惑を被るわけではない。むしろ利益を享受している。

筈井利人/経済ジャーナリスト

筈井利人/経済ジャーナリスト

経済ジャーナリスト

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