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桃田健史「クルマ“周辺”」

燃料電池車、普及の可能性見えず…広がる「期待外れ感」、販売目標達成のメド立たず

文=桃田健史/ジャーナリスト
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燃料電池車、普及の可能性見えず…広がる「期待外れ感」、販売目標達成のメド立たずの画像1ホンダ「クラリティ・フューエル・セル」。埼玉県和光市内のホンダ関連施設にて

ホンダの新型車は、PHVやEVにも化けるか

 ホンダが3月10日、新型燃料電池車(FCV)「クラリティ・フューエル・セル」を発売した。近未来の雰囲気がいっぱいの外観デザインと、高級車のように上質なインテリアで、FCVとして先行発売されたトヨタ自動車「MIRAI」との差別化を明確に打ち出した。

 ホンダとしての技術的な特徴は、前モデルまでは車体中央に搭載していた燃料電池スタックを車体前部に移動し、一般的な乗用車のようなパワートレインのレイアウトを実現したこと。燃料セル断面を従来比で20%薄膜化するなどして、燃料スタック全体を33%小型化することに成功したのだ。

 また、これはあくまでも「自動車業界内での噂」だが、クラリティはFCVのほかに、プラグインハイブリッド車(PHV)と電気自動車(EV)が登場する可能性があるという。クラリティは当面は官公庁向けなどに限定され、生産台数は年産数百台レベルに止まり、収益性はけっして良くない。それを、同じボディで一般市場向けのPHVとEVに応用するというのは、当然の流れだと考える。「フューエル・セル」が車名に後付けされていることも合点がいく。

燃料電池車、普及の可能性見えず…広がる「期待外れ感」、販売目標達成のメド立たずの画像2大幅に小型化した、ホンダの燃料電池パワーユニット

市場は、笛吹けども踊らず

 こうして、トヨタとホンダから商品が出揃ったFCV市場。これからドンドン盛り上がるかと思いきや、どうもそうした雰囲気が感じられない。これは一般ユーザーのみならず、自動車産業界全体として、いまだにFCVに対して懐疑的な見方が強い。実際、日本の自動車技術の総本山である自動車技術会の春季大会(5月25~27日:パシフィコ横浜)を取材しても、業界関係者の多くが「FCVの未来は、まだまだ先読みできない」と本音を漏らす。

 国はFCVの普及目標として、2020年までに4万台程度、25年までに20万台程度、そして30年までに80万台程度という具体的な数値を掲げている。16年現在では1000台レベルになんとか達しようかという状況で、あと3年程度で一気に4万台まで到達するかどうかの見通しは立たない。

 これに対して、「プリウスの事例でも市場投入の初期は少量だったが、その後に飛躍的に普及台数が伸びた」(経済産業省・資源エネルギー庁)との説明を繰り返すばかりだ。

桃田健史/ジャーナリスト

桃田健史/ジャーナリスト

桐蔭学園中学校・高等学校、東海大学工学部動力機械工学科卒業。専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。日本自動車ジャーナリスト協会会員。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、自動運転、EV等の車両電動化、情報通信のテレマティクス、そして高齢ドライバー問題や公共交通再編など。
ジャーナリスト 桃田健史 オフィシャルサイト

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