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宇多川久美子「薬剤師が教える薬のリスク」

がん細胞を死滅させる超画期的新薬が続々誕生…根治切除不能な悪性も治療

文=宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士
がん細胞を死滅させる超画期的新薬が続々誕生…根治切除不能な悪性も治療の画像1「Thinkstock」より

 日本人の2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで命を落とします。日本人の死因トップであるがんの治療は、主に3大治療といわれる外科的手術、放射線治療、そして化学療法(抗ガン剤治療)によって行われています。

 しかし、今、このがん治療が大きく変わろうとしています。日本の医療体系を覆してしまうかもしれない薬の名前は「オプジーボ」(一般名:ニボルマブ)といいます。

 本連載前回記事『最も高い「がん消失」率のがん治療薬誕生!抗がん剤よりはるかに効く!根治切除不能でも治療』では、そのオプジーボが誕生するまでをみてきました。

オプジーボががんに効くメカニズム

 今回は、オプジーボがどのようにしてがん細胞を攻撃することができるのか、その作用機序(効果を及ぼす仕組み)について解説します。

 私たちの体の中では、正常な細胞だけでなく、毎日がん細胞もつくられています。その数は3000個とも1万個ともいわれています。しかし、それらのがん細胞が大きくならないのは、私たちの体に免疫機構が備わっているからです。

 細菌やウイルスなどの病原菌が体内に侵入したとき、私たちの免疫システムが作動してそれらを撃退してくれますが、がん細胞が発生したときにも免疫システムが作動して、がん細胞が大きくなる前に排除する働きもしてくれています。

 がん細胞やウイルスなどと戦う免疫細胞には、攻撃を仕掛ける「アクセル」の役目と、相手が敵か味方かを判断して攻撃を抑える「ブレーキ」の役目があります。がん細胞は、免疫細胞から攻撃を受けそうになると、逆に免疫細胞のブレーキを働かせて、自分を攻撃してこないようにしてしまうのです。

 免疫細胞ががん細胞を見つけると、免疫細胞はアクセルを踏んで、がん細胞を攻撃して死滅させようと働きます。ところが、がん細胞はとてもずる賢く、免疫細胞が自分を攻撃しないように策を練るのです。

 がん細胞は免疫細胞に攻撃されないように「自分は味方だよ」と手を差し出すのです。すると免疫細胞は、がん細胞を味方だと勘違いして差し出された手を握ってしまいます。握手してしまった免疫細胞は、がん細胞にがっちりつかまれて身動きすることができません。これが免疫細胞にブレーキがかかった状態です。

 本来なら自由に動き回ってがん細胞を攻撃できるのに、身動きが取れないためにがん細胞を攻撃できないのです。そこで、免疫細胞の手にあらかじめカバーをつけておけば、がん細胞が握手しようとしても手をつなぐことができなくなります。このカバーの役目を果たすのが、免疫チェックポイント阻害剤「オプジーボ」なのです。オプジーボは本来、人が持つ「がん免疫監視」システムを正常に戻すことで、がん細胞を消滅させる薬なのです。

宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士

宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士

薬剤師として20年間医療の現場に身を置く中で、薬漬けの治療法に疑問を感じ、「薬を使わない薬剤師」を目指す。現在は、自らの経験と栄養学・運動生理学などの豊富な知識を生かし、感じて食べる「感食」、楽しく歩く「ハッピーウォーク」を中心に、薬に頼らない健康法を多くの人々に伝えている。『薬剤師は薬を飲まない』(廣済堂出版)、『薬が病気をつくる』(あさ出版)、『日本人はなぜ、「薬」を飲み過ぎるのか?』(ベストセラーズ)、『薬剤師は抗がん剤を使わない』(廣済堂出版)など著書多数。最新刊は3月23日出版の『それでも「コレステロール薬」を飲みますか?』(河出書房新社)。

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