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航空経営研究所「航空業界の“眺め”」

国産初ジェット旅客機MRJ90、米国内で「飛べない」可能性高まる…0.6トン重すぎる

橋本安男/航空経営研究所主席研究員、桜美林大学特任教授、運輸総合研究所客員研究員
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国産初ジェット旅客機MRJ90、米国内で「飛べない」可能性高まる…0.6トン重すぎるの画像1試験飛行中のMRJ90 1号機

 三菱航空機の小型旅客機「MRJ(三菱リージョナルジェット)」の試験飛行と開発が、いよいよ佳境に入ろうとしている。5月31日からは試験機2号機が加わり2機体制で飛行試験が行われ、日に複数回のフライトも実施しながら、開発が急ピッチで進められている。7月末には、米ワシントン州のモーゼスレイクへと旅立ち、米連邦航空局(FAA)とも連携を取りながら、夏以降4機体制で本格的な飛行試験が行われる運びである。MRJの納入予定時期は当初13年だったが、開発の遅れを理由に度重ねて納入は延期され、昨年12月には従来の17年春から18年半ばに先送りすると発表されていた。そんなMRJの開発も、今や順調な軌道に乗ったようにみえる。

 ところが、仮発注も含め300機以上も発注を得た主たる市場である肝心の米リージョナル航空会社(地域航空会社)で、MRJ90(88席)を現状では運航できそうにないのである。その理由は、大手航空がパイロット組合と結ぶ労使協定にある。

強いパイロット組合

 アメリカの大手航空会社は、破綻と破産法11条による再生を繰り返しながら、今やデルタ航空、アメリカン航空、ユナイテッド航空のビッグスリー3社に集約されている。各社は自社で国際線と国内線の基幹路線(ハブ)を運航し、小需要の路線(スポーク)についてはリージョナル航空会社に運航委託している。これが「ハブ・アンド・スポーク」と呼ばれる路線形態である。

 そして、実は大手航空はこのリージョナル航空への委託契約によって、最終利益の大部分を得ており生命線である。しかし、大手航空のパイロット組合から見れば、このリージョナル航空への委託が増えることは、自分たちの職域を侵すものにほかならない。ましてや、リージョナル航空が運航する機体(リージョナル・ジェット)が大型化してきたことは看過できない事態であった。そこで、労使交渉の末、スコープ・クローズと呼ばれる協定を結び、機材の席数、大きさを制限することになったのである。

 航空会社間で微妙な違いはあるが、代表的なスコープ・クローズによるリージョナル・ジェットへの制限は、「席数:最大76席」「最大離陸重量:39トン(8万6000ポンド)」である。このため、リージョナル航空会社は、90席クラスのリージョナル・ジェットを、大手航空の要求でもあるファーストクラス(ビジネスクラス)を設け全体席数を76席に抑えて、大手航空ブランドで運航している。規制緩和の流れのなかで、この制限値は早晩緩和されるものとみられていたが、つい最近まで労使交渉は暗礁に乗り上げている。

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